選び続けたその先へ
光が、爆発した。
世界が、ほどける。
運命が、砕ける。
繰り返されてきたすべてが──崩壊する。
『構造維持不能』
世界の意思が、揺らぐ。
『修正不可能』
初めて。
完全に、否定された。
「──今だ!」
クリストフの声。
振り返る。
白銀の髪が、光の中で揺れる。
蒼い瞳が、真っ直ぐにこちらを見ていた。
「マルール」
その声は、これまでと違った。
「国家は個人より優先される──」
一度、言い切る。
ずっと彼を縛っていた言葉。
そして。
「……だが、違う」
氷が砕ける。
「私は、お前を選ぶ」
息が止まる。
「世界がどうなろうと構わない」
一歩、踏み出す。
「お前を切り捨てる王にはならない」
それは──
彼が初めて下した、感情の決断。
「はっ、やっとかよ」
炎が爆ぜる。
アルベルト。
金髪が揺れ、琥珀の瞳が笑う。
「世界なんざ最初からどうでもいい」
肩を回す。
「選べよ」
ニヤリと笑う。
「奪われる側か、奪う側か」
その視線が、こちらを貫く。
「太陽はな」
一歩、前へ。
「全部、奪うんだよ」
圧倒的な覇気。
それでも。
「お前は奪われる側じゃねえ」
はっきりと言う。
「選ぶ側だ」
「お嬢様」
静かな声。
ノエル。
翡翠の瞳が、優しく揺れる。
「どのような未来でも」
そっと、剣を構える。
「私は、あなたの隣におります」
迷いはない。
「お嬢様が望む道を」
一歩、寄り添う。
「私は支えます」
その存在だけで。
心が、折れない。
すると、ゆっくりと、やってくる人物がひとり。
「貴女の前に立つ者は、すべて斬りふせます」
重い音。
「ベルナール!!」
ベルナールが、大剣を地に打ちつける。
炎が揺らぐ。
「俺がいる限り」
低く、強く。
「貴女に傷はつけさせません」
その背中は。
絶対に、崩れない。
「非合理の極致ですね」
静かな声のジョルジュ。
紫の瞳が、世界を観測している。
「理論上、成功確率は限りなくゼロ」
淡々と告げる。
だが。
「──しかし」
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
声が、揺れる。
「彼女は実験対象ではない」
その言葉は。
かつて救えなかった誰かへの──
贖罪。
「これは、検証ではなく」
こちらを見る。
「選択です」
「……本当に」
最後に。ダニエル。
月白の髪が、静かに揺れる。
「変えるんだね」
その瞳には、長い時間が宿っていた。
「何度も見てきた」
ゆっくりと、目を閉じる。
「同じ結末を」
そして。
開く。
「でも」
一歩、前へ。
「今回は違う」
初めて。
観測者ではない存在として。
「今回こそ」
はっきりと、言う。
「君を死なせない」
──全員が、並ぶ。
秩序。
情熱。
献身。
守護。
知性。
永遠。
すべてが、ここにある。
「……うん」
涙が滲む。
でも。
笑う。
「じゃあ」
手を伸ばす。
“世界”へ。
「全部、変える」
光が、収束する。
世界が、再構築される。
観測も。
運命も。
犠牲も。
すべてを──
書き換える。
──そして。
目を開ける。
朝。
柔らかな光。
見慣れた天井。
「……戻った」
違う。
“新しい世界”。
「お嬢様」
ベルナール。
その瞬間、駆け寄る。
「……よかった」
抱きつく。
扉が開く。
「体調はどうだ」
クリストフ。
もう、迷っていない目。
「無事かよ」
アルベルト。
変わらず、自由な笑み。
「お帰りなさいませ」
ノエル。
変わらない優しさ。
「成立しましたね」
ジョルジュ。
だが、その目は少しだけ柔らかい。
「観測は終わりだ」
ダニエル。
静かに笑う。
「……ねえ」
みんなを見る。
「これから、どうする?」
「決まっている」
クリストフ。
「選び続ける」
「好きに生きる」
アルベルト。
「お嬢様の望むままに」
ノエル。
「守ると誓いましたから」
ベルナール。
「非合理も許容します」
ジョルジュ。
「終わりじゃない」
ダニエル。
「ここからだ」
「……うん」
頷く。
一歩、踏み出す。
「行こう」
未来へ。
「選びに」
運命じゃない。
強制でもない。
自分で選ぶ世界。
それが──
私たちの物語。
完結しました。
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