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第十二章-2 守る為には……

 後ろからそう呟かれれば、誰だって恐怖で凍り付くだろう。その気になれば一秒も使わずに一人の命を消すことは容易なのだから。


「な、何でしょうか?」


 声が裏返っていながらも、俺は逆らわないように精進する。


「あの子供たちのことを気にしているようだったのでお声をかけさせていただきました。実は私も町の中からずっとあの子たちのことを気にかけていたんです。しかし、私は篤志家と言えるほどの人間ではございません」

「とくしか?」

「お金を持っていて善意のある人のことです。あなたはあの子たちに何かしてあげることが無いか考えていらっしゃるのですか?」


 絶対そうではないことが背中から伝わる。だからこそ、そうだと信じなければならない。


「私だけでは彼ら全員に施しを与えることは出来ません。ならば、協力しませんか?」

「協力と言いますと?」


 さっきの話があったせいかステラさんも少しばかし疑いを持っているらしい。が、子供たちのことを思っている彼女の心はすぐにでも傾くだろう。


「私としても子供たちを助けたいのですが、ここ最近町の物価上昇が酷いのです。私一人の資産ではあれほどの子供たちを救うことは出来ません。ですが、あなたたちの資産も合わせれば――パンの何個かは与えられるかもしれません」

「そ、そうだったんですね。物価の高騰化ですか」


 敢えて話に乗り頷いて見せる。

 物価がどうとかはこの時代の人間ではない俺の知る所では無いし、後ろから突き付ける凶器が俺の答えを一方に固定している。


「物が高くなっているならなおさらあの人、あんどろいどたちが悪いんじゃないですか‼ ここは一度ガツンと言った方がやっぱりいいんじゃないですか⁉」

「あなたはお強いのですね。ですが、あれをご覧なさい」


 未だ正体の分からない男はステラさんに何か合図しているらしい。が、俺の背後で行われている為、俺には何一つ理解できない。


「あの監視カメラから何人もの人が監視しています。けど、あれはデコイであり、単なる脅しです。本当の監視カメラは別の場所に隠されていると良いでしょう」

「えっと……監視? ですか?」

「そうです。もし、先程の子供たちと話していた場所も見られていたら。子供たちも仲間扱いされるでしょう。子供たちを守りたいのであれば、今は私たちが身を切る他無いのです」


 どうやら監視カメラの説明をしているみたいだ。俺は一切しなかったが、男はステラさんに丁寧に説明した。異世界出身の彼女にカメラを説明するのは困難だろうと思ったが、男はうまいことそこを避けて通った。

 相手が理解しやすいように、尚且つ相手が一番恐れている事態を免れるために取れる策を提示する。うまい話に引っかかるのはお年寄りだけと言う話をするが、実際は若者も引っかかる時は引っかかる。

 それが純真な異世界少女だったらなおさらだ。


「困っている人の為には仕方ないですよね……ケイタさん。私も一緒にサクラさんの所へ行って謝りますから、このお金で子供たちを助けましょう!」

「咲倉さん怒るだろうな……でも、何とかなる――かな?」


 不安は的中し、ステラさんは男の口車に乗せられた。

 何とか彼女だけでも助かってほしいとは思うが、俺と言う犠牲の元で彼女が助かったとしても彼女は本当の意味で助からない。

 勇者の決断と行動が、男の0コンマ秒の動きに勝てるのかは定かではない。ここは俺も大人しく従い、彼女には悟られないようにしないと。


 俺たちは再び町の中へと入っていく。

 男は用心深く、ステラさんに背後を取らせないようにして立ち回る。

 コンビニに入る際も気さくに話しかけてくるような態度で密接し、銃を突き付けていることを隠ぺいしていた。

 その際、窓ガラスにが鏡面してくれたおかげで、男の姿を見ることが出来た。

 羽織っている黒いコート薄汚く、どう見ても町の人間には思えない。コートの所々には不自然な膨らみがあり、角ばった何かを大量にコート裏に隠していることが見て取れた。陽気に話し合っているように見せかけているが、スタイルにこだわることを止めた長い前髪の隙間から見える目は、一切笑っていない。


「じゃああちらにあるパンを出来るだけ取ってきますね」

「そんなには払えないでしょうから、ニ十個位にしておいてください。私たちは別の物を見てきましょう」


 そう言ってコンビニに入るや否や、男は俺とステラさんを離す。

 ステラさんと離れた俺達は子どもたちが好きそうなおやつの棚も、栄養面を補うためのサラダコーナーも過ぎ、普段ほとんど人がいない雑貨関連のコーナーへと連れられる。そこで、過去では見ることの無かった品物を目撃する。

 マッチ箱よりも少し大きい物から少し小さめの洗剤容器の箱みたいなもの。大きさ、色に統一性はないが、唯一同じなのは大きく表示された○○mmという数値。そして、横に描かれた、弾丸の絵。


「ここにあるものをありったけ積ませてもらう。勿論、お前が払うんだ」

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