第八章-6 約束したのだから……
「できるって。君はワープ系の魔法使えないんだよね?」
「何で分かるの?」
「えっ⁉ あっ⁉ その、ワープ系は魔法使いの特権みたいなこと聞いていたからさ」
ステラさんは明らかに疑っているみたいだけど、その顔も次第に和らいでいく。危なかった。あまりにも知りすぎてるストーカーと疑われてしまう。
「それよりもできるって、どうやって?」
「目印を作るの」
「目印?」
「そう。行きたい場所のことを思い浮かべてそこまでの道案内を光の線でつなぐの。後はそこまでそれを使って移動するの」
今度はカーナビ機能ですか。あなたの魔法何かと現代的な所多いですよね!
でも、行きたい場所か。
「それは場所じゃないとだめなのかい?」
「物でも何でもいいんだよ。だから、今回の場合彼女さん」
「それって本当にうまく行くの?」
「私は勇者の一族だから!」
お友達からの依頼をうまいこと達成できた。それが彼女に自信を与えたようで、彼女の発言は堂々としていた。
それならここで穴を見つけたり藪を突くようなことは避けたほうがいいな。今も昔も沈んでしまったら浮き上がるまでそこそこ時間がかかるのは重々理解してるし。
「なら、信じてみるよ。彼女を思えばいいんだな」
「うん。そうしてここに来たときと同じことをして」
ステラさんの指示の元彼女の姿を思い浮かべる。明るいけど、沈んだ時の深さはマナリア海溝よりも深い彼女の姿を。成長した方の子供じゃない姿を。
そして彼女がやったようにネジを巻く。
これで針が動くはず。
何度回せばいいのかわからないけど、取りあえず三回ほど回してみた。
すると、例のあの現象が起きた。
針が動き出し、体に白い光が纏わりつく。
「うわぁぁ」
「近づかないで! 君も巻き込まれてとばされちゃうよ」
「あっうん……」
俺に叱責されたせいで、ステラさんの表情は沈む。
そんな彼女に向けて、俺はあることを告げるのを忘れていた。
「ありがとう勇者様」
「私はまだ勇者じゃないよ。弟が」
「君には妹が出来るんだ。そして、君は勇者になる」
「え? どうしてお兄ちゃんが?」
その問いには答えない。あの靄が迫ってきている気がする。
俺は一番伝えたいことを告げる。
「君は立派な勇者だよ。だけど、勇者だから全部を背負う必要性は無いんだ。頼ってもいいんだよ。どんなに強い剣でも、役に立つ魔法でも、心が駄目になったら、その時点で役に立たなくなっちゃうからね。そうなる前に、周りの人を頼ってもいいんだよ。俺の世界では、勇者は一人で行動しないんだ」
「お兄ちゃんの世界?」
「それじゃまた。君とは長い別れになるけど。また――だね」
少女は声を発せなかった。内容を理解するにはちょっと複雑すぎただろうか。でも、俺はこれでいいと思った。単調に説明するよりかは、謎解きのようにじっくりと思考するような言い方をしたほうが心には残ってくれる。そう信じたからだ。
俺は再び気色悪い色の夢に落ちていった。




