第四章-5 やれることをやってみたら成果は出るけど……
一騒動終えた後、俺たちは荷造りが終ったマグウィードさんの荷馬車に再度乗り込みセイスキャンへと向かうこととなった。
二日前とは違い食糧品の入った木箱がほとんど無くなり、逆に食器や調理器具が入った木箱が増えていた。中には緩衝剤代わりの綿が詰められていた。ガウムは鍛冶業が少しばかし盛んで、鉄製の器具やガラス工芸、武器の精製にも精通していた。
が、この荷馬車の中に武器がほとんどない。
「それは次に向かう目的地が宗教都市だからですか? この国の宗教は殺生を好まないからとか」
俺はその理由をマグウィードさんに問うた。
「うーん。残念ながら五分の一の正解だ。確かにセイスキャンの宗教は殺生に関して少なからず戒律がある。けど、現法王は今セイスキャンを悩ませている問題に対抗すべく武器を集めている。だから武器を用意すれば比較的売れるのさ」
が、俺のテストの結果は20点だった。赤点じゃん。異世界史は補習確定か。
「ならどうして売れるものを補充しなかったんですか?」
「簡単ですよ、需要と供給です」
「あぁ……」
なるほどこの世界には通用しないと思うがデフレ、インフレと言う言葉は既に存在するようだ。
今セイスキャンの武器需要率はかなり高まっているらしいけど、それに対する供給率も既にキャパオーバーだということか。
「でも、にしては開けすぎじゃありませんか? これで収益は見込めるんですか?」
ガウムからセイスキャンにはまだ三日かかる。その間は人足もいるから恐らく野宿するのだろうけど、そうするにしても三人分の食費、何より馬の食費(そこら辺の草を食べさせるだけじゃ馬が衰えたり病気になるから餌は必須らしい)を考えるとこれで収益が出るのかは怪しいくらいに荷馬車の中は広かった。
へインスを出たころは俺とステラさんの肩や膝がぶつかり合う位に狭かったのに、今は対面に向かって座れるほどに広い。
一瞬ステラさんと目が合った。
けど、すぐさま反らされた。さっきの熱がまだ収まっていないのか。かくいう俺もマグウィードさんとできる限り対話をしようとして紛らわせているんだけどね。
「それについてだが、ちょっとばかし寄り道をさせてもらうことにするよ。時間的に半日から一日到着時間が伸びるかもしれないね」
「近くの町に行くんですか?」
ここに来てマグウィードさんが唐突の進路変更を申し出る。俺はその理由を別の村でこの空白分の交易品を仕入れるのだろうと考えた。
「仕入れるために。と言うのは正解だが、町ではないよ」
「町ではない?」
「頼んだのは君だろ? 仕事をくれないかって」
「ケイタさん、そんなこと言ってたんですか?」
それは俺がガウムに入って一日目の夜に頼んだことだった。
初耳だったステラさんはそのことについて問いただしてきたので、俺は口を開かざるを得なかった。
「あの時は魔物討伐で稼ごうと思っていたんだ。けど、その目論見が甘かったことは、ステラさんも存じての通りです。これを持ってきたはいいけど、どこまで役に立つか」
遠い目をしながら右に反らした視線の先には一つのボウガンがあった。
最終的に弓に僅かな可能性を見出していたが、結局ボウガンに変えた理由は二つある。
一つは一発限りなら既に装填しておくことができるから。これによって緊急事態には一撃なら対応が可能になる。
もう一つは安定性。弓は上下のブレに加え左右のブレが生じる。けれどもボウガンの場合腰を下ろして重心を低くすることができる為上下のブレにある程度強くなれることが分かった。
これによって俺でも少しは命中率を上げることができる。
勿論いい点ばかりではない。装填は弓よりも力を必要とするし、何より弓と違って機構が複雑なため手入れが大変だという。そこは普段の筋トレと、商いの腕を上げることによってカバーするしかない。
「ならその訓練になるかもしれないね。まぁそこは本家に任せてもらおうか。君の世界で言う、餅は餅屋、だったかな?」
マグウィードはそういってステラさんを見た。
「これから魔物討伐に向かうよ。それも単なる討伐じゃなく、交易目的の魔物討伐を」




