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第四章-4 やれることをやってみたら成果は出るけど……

「ステラさんは俺を助けてくれる。この世界の常識と脅威から。俺はそれを学びながら生活基盤を作る。まずは自分の、行く末は、ステラさんの」

「何かいい夫婦みたいだね。役割が逆転している気もしなくはないが」

「余計なことを言わないでください! 後、俺の世界は夫が家事をする主夫と言う存在もいるんですからね!」


 商売をして宿屋に泊れるお金を稼ぐのが果たして主夫の仕事なのかはこの際置いといて、外はステラさん、内は俺と言う役割は到底変わらないだろう。


「ステラさん。別に一人で背負う必要性は無いんですよ? 俺の依頼は今までに無い長丁場になる可能性は十二分にあります。その間にステラさんを頼る人は数多く現れると思います。その時は、俺のことはとりあえず中断してそちらに集中してください。どちらもやらなくちゃいけない、片方を蔑ろにしたと考えていたら身がもちませんから、俺は最劣先でお願いします」

「…………」


 ステラさんから返事は無い。普段ならここでそんなことはできないと却下してくるはずだが、俺の言葉が響いてくれているのだろう。


「だから、ステラさん一人で背負うことは止めてもう少し俺を頼ってください、今の俺は本当に頼りないですけど、少しずつ自身の身位守る術を得ていきます」

「…………」


 ここはできれば「弱いなんて言わないでください!」って反論してほしかったかな。まぁ事実だから仕方あるまい。


「どうでしょう。ステラさんに甘えていくのはここまで。セイスキャンではおぼつかない足取りですが、自分なりに生きていけるように頑張っていきますので、無理なお願いかもしれませんが、俺の要望を聞き入れてくれませんか?」


 自分から作り上げた誓約分を読み上げ、ステラさんに思いを伝えきる。

 そして、すぐさま動こうとした。


「きゃっ!」


 彼女を止めた。

 たった一週間であるが、彼女が背負いすぎていることは理解しきっていた。

 今もその体を地に落とし、臨界点を突破した足に鞭を打ち、自身の頭を垂れて、卑下の言葉を連なる準備が整っていたに違いない。

 俺はその始発点となる右腕の進路を強制的に引き寄せ、俺の方に抱き寄せる。


「変に謝らないでください。今度こそオーナーが飛び込んできますよ?」


 この宿屋の壁が防音壁な可能性は恐らく無いだろう。そもそもこの世界に防音壁があるか否かすら真偽が問われる。ゴキブリ増殖、半裸少女放置、その後少女が泣き言は問題視されない方がおかしい。


「だから、一言だけ伝えてほしいんです。俺はステラさんがひたすら自尊心を下げ続けるのを見たくはありません。俺は、一言だけ聞ければ、それで気が治まるんです」


 腕の中で小さな音がした。

 それは声と表現するには不十分であり、悲鳴と比較するには小さすぎる。

 それでも、彼女の中で変化があった。


「ごめん、なさい」


 そして。注文通り、たった一言だけ、俺に伝えてくれた。


「いやぁ。お熱いね。あってまだ一週間だっけ? 実は前世も一緒で熱々夫婦だった。んで、子供は十人以上できる位愛し合ってたとか」


 マグウィードさんの茶々にどちらからとも問わず離れ、ベッドの端と端に寄った。

 ステラさんの顔は太陽の元丸々育ったトマトのように真っ赤だった。恐らく俺もそれくらい真っ赤なのだろう。顔の表面どころか内面に流れる血液すら沸騰するほどに熱くなっているのを感じる。


「茶化さないでくださいマグウィードさん!」

「いやいやすまんすまん。まるで演劇を見ているかのようでね。セイスキャンに劇場は無いが、どこか別の都市を訪れることがあったらそこで働いてみたらどうだい? 何なら二人で熱演して」


「「結構です‼」」


 そのぴったしのタイミング、惜しいな~。とマグウィードさんが反省する素振りは一切なかった。

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