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第四章-3 やれることをやってみたら成果は出るけど……

 ガチャン。


「どうしたんですか?」

「部屋を間違えたみたい」

「でも、ここって今朝訪れた部屋だよね?」

「隣の部屋かも」

「隣の部屋は勇者様の部屋だよ?」


 マグウィードさんの最適解を俺は無視して隣の部屋を開ける。

 そこには綺麗な床としっかりと整えられたベッド。ベッドシーツが置いてあるだけで、人の姿はなかった。


 …………。

 俺は部屋の扉を閉め、先程開けた部屋の前に再度戻った。

 目を擦り眼球があることを確かめる。

 何の異常も無いことを確認し、俺はドアノブに手を伸ばし、ゆっくりと扉を開ける。

 そこには、一寸たり、微動だにしない、勇者様がいた。


「何してるんですかステラさん⁉」

「ごめんなさいー‼」


 俺が叫ぶと同時にステラさんが叫んだ。

 そのごめんなさいが勝手に部屋へ入り込んだことか、こんな妙なことをしていることなのか――まぁ恐らく全部に当てはまるのだろうけど、最終的には昨日のことへと行き着くのだと予測できる。


「勇者と言う肩書を背負っておきながら矮小な昆虫如きに悲鳴をあげ、挙句に気を失ってしまった後に介護していただいた上に私の身を案じて手紙まで置いて行って下さる手数を考えるとこの程度では申し分が立たないと思いますけど」

「立ちます! 立ちますから! とりあえず立ち上がってください!」


 俺は中に入ってステラさんの左腕を持って立たせる。

 俺の後ろから扉を閉める音が聞こえた。マグウィードさんが騒ぎにならないように閉めてくれたようだ。二日連続で騒ぎを起こせば近所迷惑でオーナーに通報されるだろう。

 俺が何とかステラさんの膝を起こし、彼女の負担を減らす。

 彼女の膝が床から離れたと同時に俺が手を放す。と同時に彼女の足がまた地に落ちる。


「あったた」

「だ、大丈夫ですか⁉」

「ぅぅぅ。すみません。足、足が」


 彼女がふくらはぎをさする所を見る限り、どうやら足が痺れたようだ。


「いつからそのような格好でいるんですか? 私たちがいつ戻ってくるかは記載していませんでしたけど」

「いつ来ても大丈夫なように、起きて、着替えてから、すぐ」

「起きてからずっとですか⁉」


 それは責任感じすぎでしょ! 俺にだっていつに戻るか書かなかった責任があるんだから!でも着替えた所だけは評価するよ! これでタオルのまんま土下座してたら悶絶物だっただろうし!

 足が上手く動かないステラさんを支え、ベッドの上に座らせる。

 俺とマグウィードさんはそれを確認したうえで小さなウッドチェアに一人ずつ座った。


「それなら謝るのは俺の方だから何の制止も聞かずに無謀なことをして、事態を大きくしてしまったせいで」

「それは異世界から来たのなら知らなくて当たり前ですよ!」

「そうです。当たり前です。でも、ずっとそのままじゃだめですよね」

「だから、彼はもっと世界を知るために商人になることを決意しました」

「えっ⁉ もとの世界に帰るんじゃなかったんですか⁉」


 謝罪すると同時に今後のことについて話そうとしたことをマグウィードさんが先行して話してしまう。


「もちろん帰りたいですよ。でも、ここまで旅をして分かったんです。この旅は長くなる。ならその間の衣食住位は自分の手で賄えるようにしたいんです。ステラさんの力は必要です。だからと言って財力にまで頼ることはもう卒業したいんです」

「そ、そんなことを」

「勇者様が悩んでいるようにケイタさんも悩んでいたんですよ。自分がやらなくちゃいけない。そう思いながらも勇者様が全部やってくれているから悶々としていたんです」

 

 互いに頼られたいと言う意思があった。

 そのせいで互いに病んでしまった。いや、これからも良くない流れは続いていくに違いない。


「だからここで一旦役割を決めてしまおう」


 俺ははっきりと告げた。

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