第四章-2 やれることをやってみたら成果は出るけど……
「こんなにあっさりしていていいのか?」
「人と人、さえいれば誰でも商売は出来る。それに違法で商売している人もいるくらいだから寧ろ登録してくれるのはギルドとしては大歓迎なのさ」
もしかしたらこの人すごい人でマグウィードさんの紹介なら、と俺に商業権をくれたわけではどうやら無いようだ。地球では最近になって個人個人の売り買い(使い古しがほとんどだが)が目立つようになってきたが、この世界では単なる物々交換の延長線なのかもしれないが、それが既に成り立っているようだ。
だからこそ、俺にも参入する隙はいくらでもあると言う。
「それに君にはとっておきの助っ人、勇者様がいらっしゃるからね。魔物は生涯出ると同時に入手困難な生活基盤にもなり得る。それを君が最大助っ人に託し、商売は君が担当する。いい考えだと思うよ?」
「それぞれの役割で頑張るということですか」
「それだけじゃない。商いをするということは世界を知る事にも繋がる。そうすれば昨日のような失敗も無くなるんだよ」
「あれはトラウマだったな……」
「なら絶対に忘れないな! 人の中で一番記憶に刻まれるのはトラウマだって話だからね」
笑い話にしているが、この人も当事者の一人である。
あの悪夢を体験しておきながらこの対応。大物である。
もう一方は気絶して寝込んだというのに。
「もう起きてるかな?」
「流石に起きているんじゃないのかな? 置き手紙もしてあるし」
「そっちよりも、無施錠ってのが……」
「向こうでは普通の家でも施錠が出来るって話らしいね」
「家どころか何にでも施錠、の時代ですからね」
今朝約束の時間になって気になったのでステラさんの部屋を訪ねてみた時はまだ眠って、いや見た感じ着替えていなかったので気絶したままだった。起こそうにも起きた時点で違うことが起きそうだったので、そのままにして俺たちは自分たちの用事を済ませることにした。
宿屋のオーナーには「連れが慣れないお酒を飲んで潰れてしまいあられもない格好になったので部屋には入らないでほしい」とだけ伝えた。
間違ってそこに別の宿泊客が入りでもしたら騒動だし、下劣な輩が入ったとしたら気絶した要因を作ってしまった俺にとってはいたたまれない事態に発展する可能性さえあった。
「まぁ、勇者様だから返り討ちにするんじゃない?」
と言うマグウィードさんの軽い考えに始めは反論したが、最終的にそれもそうかと納得してしまう俺がいた。
「何かお土産でも買っていくか?」
「ステラさんは何が好きか俺知らないんですよね……お風呂以外」
「流石にお湯を買っていくわけにはいかないからね」
「温泉の素でもあればいいんだろうけどな……」
探そうと思えば柚子的な物は見つかるだろう。そうなったら彼女にプレゼントしてあげてもいいかな。
俺は温泉の素と言う物がどんな物かを説明しながら滞在期間後僅かになった宿に戻った。
自身の部屋の前に辿り着き、他の部屋同様鍵のかかっていないドアノブを捻り開いた。
中には土下座するステラさんがいた。




