ヴィルヴィットend C 期限前
自分から求婚しておいて、あっさりと帰還するなんてないわ。
「ビバーチェア」
ヴィルヴィットが城へ戻ると、オルヴェンズが声をかけてきた。
「どうしたの?」
近くに人はおらず二人きりなので砕けた話し方をする。
「ヴィルヴィット=オーヴァの元へ嫁ぐのか?」
「オルヴェンズがそうしろと言うなら問題はないわ」
彼は大王の配下で、母の一族とも関わりがある。
今の私は半端な身分だが、両親が生きていれば妥当と言われる相手だろう。
「あの男について調べたが、奴の妻候補はビバーチェアだけではないようだ」
「え!?」
7つの領地の中でこの国があるヨウコク、ジュプス国のあるジュグの大気にはたくさん魔力が溶けている。
他の場所より魔法を使いやすく、それで富を築いた平民が多い。
しかし場所を関係なく五大魔導一族と呼ばれる者がいる。
赤のハイロダルタンダ、青のクラール、黄のヴォルディオン、緑のバロビニアン、白のシュヴェアンヴァニウム。
オルヴェンズの話ではヴィルヴィットの家は白のシュヴェアンヴァニウム一族らしい。
当主のみがその家名を継ぐ事ができるという。
6の花弁に包囲された中心たる花芯を当地するジュプス大王は魔導一族から伴侶をとるそうだ。
今のジュプス大王はシュヴェアンヴァニウム家の次女を妃にした。
だからヴィルヴィットは王の義弟にあたるそうだ。
「貴方の表情が険しいのは、この結婚に利益がないから?」
ジュプスの大王は暴君で、絶対の権力を持つ男。他エリアとの同盟など考えない。
「お前がヴィルヴィットの妻になった場合、王がアンヴァートを侵攻するだろうな」
そんなことになるなら、私はヴィルヴィットと結婚したくない。
「貴方に相応しい魔導一族は他にもたくさんあるそうですね。両親がおらず身元が不確かで、魔法も使えない私との結婚は利益がないと思います」
立ち去るヴィルヴィットから一言“残念”と言われた。
顔は見えなかったけど、きっとクールな彼ならば無表情だろう。
結婚は利益、国や家の守護の為にするものなのに育った国が滅ぶかもしれないと言われたのだ。
だから私は間違っていない筈なのだ。
「ビバーチェア、私が生きている限りはお前を守ろう。ずっとここにいろ」
「……ありがとう」
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