長時間の死闘
二人の女子プロレスラーがリングの中で激しい闘いを繰り広げていた。
もう試合開始から60分以上経過している。
まばゆいばかりの白い水着をまとい、黒いロングヘアが艶やかに揺れているのは、セレスティア彩乃。対するフェリシア紫苑は、灰色の水着をまとい、ウエーブのかかったセミロングの髪を揺らしている。フェリシアは執拗なまでにセレスティアを追い詰め、幾度も技を仕掛けてくる。もう息も絶え絶えのセレスティアを口汚くののしり、引き倒す。
しかし、セレスティアは何とかロープに逃げる。そして、逆にロープに走ると、その反動を利用してフェリシアにラリアットをかます。
「うぐ!」
ラリアットはヒットしたが、フェリシアもセレスティアの髪の毛をつかんで引き倒し、キャメルクラッチで攻め立てる。
フェリシアはセレスティアの背後から体重をかけ、グイッと上体を反らせる。
「くっ……!」セレスティアは喉を締め付けられるような痛みに顔を歪めた。
「ほら見ろよ! この程度で音を上げてどうする! お前のそのキレイな顔が苦痛で歪むのが最高にそそるんだよ!」
フェリシアはさらに力を込め、セレスティアの美しい髪を掴んで床に引きずり下ろそうとする。しかしセレスティアは歯を食いしばり、足をバタつかせるとロープへ必死に手を伸ばした。
「くそっ、しつこいんだよ!」
フェリシアが一瞬力の緩んだ隙に、セレスティアは回転して体勢を立て直すと、渾身の掌底をフェリシアの鳩尾に叩き込んだ!
「ぐはっ!?」
予想外の一撃にフェリシアはうずくまる。その隙を逃さずセレスティアはロープに走ると、全身のバネを使って跳ね返り、強烈なドロップキック! フェリシアの胸元にクリーンヒットし、リング中央に吹き飛ばされた。
「うっ……まだだ! こんなもんじゃ済ませねぇぞ!」
フェリシアはよろめくセレスティアを睨みつけた。
「この泥まみれの水着女! お前みたいな清楚ぶった奴が一番ムカつくんだ!」
激しい罵声とともにフェリシアは突進し、セレスティアの腕を掴むとジャイアントスイングのように振り回し始めた。
「こんな技で! 私は終わらないわ!」
セレスティアも抵抗し、体を捻って逆にフェリシアのバランスを崩す。互いに息も荒く、肩で呼吸をしているが、両者とも限界を超えてもなお闘争心だけは消えない。
「はぁ……はぁ……次は……決めてやる!」
リングサイドの観客席からは割れるような歓声が上がり、熱気は最高潮に達していた。セレスティアとフェリシア、二人の女の意地とプライドが火花を散らす。勝負の行方はまだ誰にもわからない――
「へっ……まだやる気満々みたいだねぇ……!」
セレスティアは息を切らしながらも、フェリシアを見据えていた。フェリシアは不敵な笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてくる。灰色の水着が汗で肌に張り付き、その表情には狂気じみた光があった。
「おいおい……まだ立ち上がるのかよ? そんなにボロボロの白い水着でかっこつけたいわけ?」
フェリシアはゆっくりとセレスティアの髪を引っ張り上げる。乱暴に掴まれた長い黒髪が悲鳴を上げた。
「いい加減、負けを認めたらどうなんだ、白い猛獣がっ! いつまで続けるつもりなんだ?!」
罵声と共に放たれた肘打ちがセレスティアの脇腹を抉る。鈍い痛みに顔をしかめるが、セレスティアはその場で踏み止まり、逆にフェリシアの腕を掴むと勢いよく投げ飛ばした。
「ぐはっ!?」
リングマットに叩きつけられたフェリシアだが、すぐに起き上がり拳を振りかざして突進する。観客席からは悲鳴に似た歓声が上がった。
「あんたみたいな気取った奴が、一番、嫌いなんだよ!」
拳が頬をかすめる。セレスティアの額から新たな汗が滴り落ちる。
(今だ!)
セレスティアは素早く飛び込む。フェリシアの太股を抱えるようにしてバックを取り、強引に持ち上げる!
「何!? クソッ!」
だがフェリシアも必死に抵抗する。身体を丸めると逆にセレスティアの腰を掴み返そうとした。
「させるか!」
セレスティアは残された力を振り絞ってフェリシアを持ち上げ、そのままバックドロップでマットへ叩きつけた。
「うぐぁっ!!」
セレスティアは倒れたフェリシアをすぐさま押さえ込む。レフリーが駆け寄り、カウントを数え始めた。
1……
2……
3……
カンカンカンカン!!!
試合終了のゴングが鳴り響き、会場は大歓声に包まれた。
「勝者……セレスティア彩乃!!」
アナウンサーの声が響き渡る中、勝利を収めたセレスティアはふらつきながらも立ち上がり、高々と拳を突き上げた。
リングの中央で、フェリシア紫苑は仰向けに倒れたまま、荒い呼吸を繰り返している。灰色の水着の肩紐が少しずれており、その端正な顔には苦悶の色が浮かんでいた。




