第2話:私は君と友達になりたかったんだ
(そうして二人が一緒に教室へと戻ってくる)
(加藤が席に座りながら、どこか冷たい視線で吉田をジロリと睨みつけ)
吉田(M): 目の威圧感がすごすぎる……めちゃくちゃ怖いんだけど……。
(加藤が周囲に聞こえないような小さな声で、ボソッと呟く)
加藤: ――絶対に誰にも言いふらさないでよね。今まで私の秘密を喋ろうとした奴らは……私が全員、地球から異世界へと瞬間移動させて消し去っちゃったから。
(その言葉を聞いた吉田の瞳が恐怖に激しく揺れ動き)
吉田: は……はい……ぜ……絶対に誰にも言いません……。
(加藤がその怯えるリアクションが気に入ったように、フッと悪戯っぽく微笑んで)
加藤(M): 冗談なのに、すっごく素直に信じ込んでて可愛いな〜。
吉田(M): 今のはただの冗談かもしれないけど……実際に瞬間移動を目の前で見せつけてくる奴が言うと、洒落になってなくてマジで怖いっての……。
(そうして午後の授業がすべて終わり、昼休み)
(加藤は自分の机にぐったりとうつぶせになっている)
(吉田が周囲の目を気にしながら、気まずそうに席を立とうとしたその瞬間)
(クラスのいかにも不良グループといった三人組が、吉田の席をニヤニヤしながら取り囲む)
吉田(M): あぁ……今度は俺がターゲットにされたわけか。まぁ、毎日まともな友達も作れずに、一人で教室を出てお弁当を食べてるような奴を見つければ、格好の獲物だよな……。
不良1: おいおい、吉田ぁ〜。お前、なんで毎日わざわざ外に出て一人で飯食ってんだよ?
不良2: 本当それな〜。
(不良たちが品定めするように、吉田の背中をポン、ポンと不躾に叩く)
(吉田が抵抗する気力もなく、力なくうつむいたままでいると)
不良1: なんとか言えよ〜。この俺様がわざわざ、お前と友達になってやろうと思って声をかけてやってるのによ。
(不良1が吉田の目を威圧するようにじっと覗き込み)
不良1: 喋れよ……。
(その刹那、うつぶせになっていた加藤がガバッと飛び起き、電光石火の速さで吉田の手首をがっちりと掴んで教室の外へと強引に連れ出す)
吉田の目が驚愕に見開かれ)
吉田: え……えぇっ!?
(残された不良たちが呆然として慌てふためき)
不良2: なんだよ……今のあいつ……加藤じゃねぇか?
不良1: ははっ、マジで何なんだよ一体!
(不良たちが怒ってすぐに教室の外へと追いかけるが、廊下に出た瞬間、加藤と吉田の二人の姿はどこにもなく完全に消え去っていた)
(不良たちが現実を理解できず、あちこちをキョロキョロと見回す)
不良1: 嘘だろ……!? どこに行きやがったんだ!?
不良2: いくら足が速くたって、俺たちの目の前から一瞬で視界から消えるなんて絶対にあり得ねぇって……!!
(場面が変わり、学校の敷地外。駅前にあるコンビニの前)
(吉田の目が点になり、激しい息を吐きながら周囲を見渡す)
加藤: 大丈夫、吉田くん?
吉田: はぁ……はぁ……う、うん……。だけど、ここは……コンビニ……!?
加藤: うん。あんたの手を掴んで教室を出る直前に、「ここに来たい」って頭の中で強く念じておいたの。
吉田: そ……そうなのか……。だけど、あの3秒は……? 瞬間移動するまでに3秒のタイムラグがあるって言ってただろ……。
加藤: 教室を出る前からあらかじめ念じておいて、廊下に出た瞬間にちょうど3秒経つように計算して発動させたんだよ。
吉田: すっげぇな……そんなことまで完璧に計算してただなんて。
加藤: この程度、私にかかれば朝飯前だし。
(吉田が未だに信じられないといった様子で、自分の手のひらをじっと見つめ)
加藤: どうしたの?
吉田: いや……現実味がなさすぎて……。
加藤: 何が? 瞬間移動したことが?
吉田: それもあるけど……。ただ、今日のこの状況のすべてが、俺にとっては夢みたいで信じられないんだ。
加藤: じゃあさ、せっかくの昼休みで時間もたっぷりあることだし、ここで何か美味しいものでも買って食べよっか!
吉田: え……だけど、本当にいいのか? こんな制服姿のままで、学校の外に出て……。
加藤: ん? そんなの気にしなくて大丈夫だってば〜!
(そう言ってパッと振り返った加藤の姿が、夕日の光に照らされて、吉田の目にはまるで輝く宝石のように美しく映り込む)
(加藤が呆然と立ち尽くしている吉田に向かって、満面の笑みを浮かべながら手招きする)
加藤: 吉田くん! 早くおいでよ!
吉田: あ……うん! 今行く!
吉田(M): よく分からない……このめちゃくちゃな状況の答えなんて。だけど、一つだけ確かなのは……俺は今、加藤に絶望の底から救い出されたんだ……。
(コンビニの店内で、加藤が買い込んだ食べ物をレジのカウンターに並べる)
店員: 君たち、こんな時間にどうしたんだい? 学校にいる時間帯のはずだけど……。
加藤: あはは、今ちょうどお昼休みなんです〜! 先生にお弁当を忘れちゃったって相談したら、「近くのコンビニで何か買って食べなさい」って許可をもらったので!
(隣にいる吉田がその堂々たる嘘に驚愕し、目を丸くする)
吉田(M): メンタルが強すぎる……! 嘘を吐くときの迷いが一切ない……!
(そうして、お店の前にあるベンチに二人で並んで腰掛け、買ってきたおにぎりを食べながら)
吉田: か……加藤……。
加藤: ん? 何?
吉田: だけど……なんで俺なんかと友達になろうなんて言ってくれたんだ?
加藤: なんでって、どういう意味?
吉田: だって……言いふらさせないのが目的なら、さっきみたいに異世界に送るぞって怖く脅すだけでも十分だし……監視が目的なら、隣の席から静かに見張ってればいいだけだろ……。
(その言葉を聞いた加藤の目がパッと丸くなり)
(加藤の顔が耳の根元まで真っ赤に染まっていく)
加藤: な……何よそれ! 単純に友達になりたいって言っちゃダメなわけ!?
(吉田が驚いて、加藤の横顔を見つめる)
加藤: ――私はただ、吉田くんと友達になりたかったの! 本当にそれだけ! 今日の屋上で言った監視がどうのこうのってやつは……全部恥ずかしくて言ったただの言い訳だから!
吉田: そ……そうだったのか……。良かった……。
加藤: 良かったって……何が?
吉田: 加藤も見ての通り、俺は中学校の頃からずっと、ああやって不良グループに目を付けられながら生きてきたからさ。まぁ、俺が陰気で頼りなく見えるのが悪いんだけど。
吉田: だから、友達なんて本当に一人もいなかったんだ……。なのに、高校に入って急に加藤から友達になろうなんて言われたから、裏があるんじゃないかって疑っちゃって……。ごめん……変な疑い方をして。
(加藤が吉田の切ない過去をじっと静かに聞いた後、パッと優しい笑顔を浮かべて言う)
加藤: 謝る必要なんてどこにもないよ! そんなの、疑って当然のシチュエーションだし!
(吉田の目がカッと見開かれ)
加藤: ――私はね、吉田くんと本当の意味での、本物の親友になりたいんだから!
吉田: あ……ありがとな、加藤……。
加藤: それじゃあ……あとは、あの教室に残ってきた不良の奴らをどうにかしなきゃね……?
吉田: そ……そうなんだけど……。
(駅前のコンビニ裏口。加藤が吉田の手を優しく握り直し)
(吉田の顔がカッと熱くなり、赤面する)
加藤: それじゃあ、戻ろっか。
吉田: あ……うん! そ……そうだね。
(加藤の能力で、再び学校の誰もいない静まり返った廊下へと一瞬で戻ってくる)
加藤: 吉田くん! 私はちょっとお手洗いに寄ってから教室に行くね。
吉田: あ……うん、分かった。
(吉田が一人で教室に戻り、自分の席に座ってぼんやりしていると、再びあの不良グループたちがニヤニヤしながら近づいてくる)
不良1: あれれ〜? 吉田じゃん。どこに行ってたのかと思えば、いつの間に戻ってきてたわけ?
不良2: そうだぜ〜。みんなでお前のこと探してたんだからさ〜。
(その刹那、不良たちの背後から、加藤がこの世のものとは思えないほど冷たい眼差しでジロリと睨みつける)
(不良たちがただならぬ殺気のような気配を察知し、ハッとして後ろを振り返る)
不良1: ――っ、お前……さっき吉田の手首を掴んで教室を飛び出していった、加藤じゃねぇか……?
不良2: そうだよな……。お前、むちゃくちゃ足速かったな? 一瞬、本当に瞬間移動でもしたのかと思ったぜ〜。
(加藤が低く、地を這うような重苦しいト톤で言い放つ)
加藤: ――消えろ。
不良1: はぁ!? 何だって?
不良2: 怖いねぇ〜。そんな可愛い顔して、よくそんな恐ろしいセリフが吐けるな〜。
加藤: 冗談で言ってるように見える? ――消えろって言ってるの。
不良1: っ……お、おい……何なんだよ、急に……。
加藤: もう一度同じことを言わせたら……ただじゃおかないから。
(加藤の身体から圧倒的な威圧感のアウラが放たれ)
(不良たちがその気迫に完全に気圧され、冷や汗を流しながらジリジリと後ろへ退がる)
不良1: おいおい……なんでそんなに怒ってんだよ、お前。
不良2: ただの友達同士の軽い冗談じゃんか……なぁ?
(加藤が不良2の胸ぐらを掴み、教室の壁へと強引にドカンと叩きつける)
加藤: どう見ても、ただの冗談には思えないんだけど? ――違う?
(壁に押しつけられた不良2が、恐怖に顔を青ざめさせながらだくだくと冷や汗を流し)
不良2: ――っ、分かった! 悪かったよ、行くよ! 行けばいいんだろ!
加藤: 今度から、私の友達に二度と指一本触れるな。
加藤: ――命の覚悟があるなら、関わってもいいけどね。
(不良たちが完全に恐怖に震え上がり、一目散に教室から逃げ出していく)
(吉田がその光景を、驚愕に目を丸くしながら見つめている)
(不良たちが去った後、加藤がどこか気まずそうに、不自然にハハハと笑いながら話しかける)
加藤: 大丈夫だった、吉田くん? あはは……こんなこと、またやっちゃうなんてね……。
吉田: ――また、だって? 前にもこういうことをやったことがあるのか?
加藤: う……うん……。前に、私の友達が、今の吉田くんと全く同じような目に遭わされてたことがあってさ……。
吉田: そ……そうだったんだ……。
加藤: あ! そうだ、吉田くん! 今日学校が終わったら、一緒に一緒に帰ろ!
吉田: え? いっ……一緒に……?
加藤: うん! 私が吉田くんの家の場所を一度ちゃんと覚えちゃえば、明日からは毎日、一瞬で一緒に家に帰れるようになるでしょ!
吉田: そ……それはそうだけど……。
加藤: 何か問題でもあるわけ?
吉田: いや……そういうわけじゃなくて……。
加藤: じゃあ、どうして?
吉田: その……。
(吉田が照れくさそうに頭をかき、視線を泳がせながら)
吉田: ありがとな……加藤……。助けてくれて。
(加藤の目がパッと丸くなり)
加藤: な、何よそんなことくらいで……。友達が酷い目に遭ってるのに見て見ぬ振りなんてしたら、私はあの不良の奴らと同類になっちゃうじゃん。
(吉田の目がカッと見開かれ、真っ直ぐに加藤を見つめる)
吉田: こんな俺のことを……自分から助けてくれた人なんて、加藤が初めてなんだ。
加藤: そ……そうなんだ……。
吉田: 俺……加藤のことを、もっとたくさん知りたい。
(加藤の顔が瞬時に真っ赤に染まり)
加藤: え……えぇっ!? そ……それって、だから今こうして友達になったわけじゃん、私たち……?
吉田: もっと知りたいんだ、ただ……。
(加藤が恥ずかしさに耐えかねるように顔を真っ赤にして)
加藤: そ……そう……。
(そうして放課後、夕焼けに染まる帰り道)
(加藤と吉田が並んで歩き、吉田の家の前までやってくる)
加藤: 吉田くんの家ってここ?
吉田: うん。
加藤: 私の家とすっごく近いじゃん! 良かった! これで場所はバッチリ覚えたよ! それじゃあ、私はもう行くね!
吉田: うん……。
(加藤がパッと後ろを振り返って歩き出そうとしたその瞬間、吉田が加藤の手首をギュッと強く掴んで引き止める)
(加藤の顔がカッと熱くなり、驚いて勢いよく振り返る)
吉田: か……加藤……。
加藤: う……うん!? な……何……!?
吉田: もし……もしよかったらさ、家へ帰る時は瞬間移動を使わずに、一緒にこうやって歩いて帰っちゃダメかな……?
加藤: な……何でよ……? 瞬間移動のほうが圧倒的に便利じゃん。
吉田: それはそうだけど……。俺、加藤といろんな話をしながら、一緒に歩いて帰りたいんだよ。
(加藤の目がパッと大きく丸くなり、硬直する)
吉田: ご、ごめん……変なこと言って、引き止めちゃって……。
(吉田が気まずそうに、自嘲気味にアハハと苦笑いしながら手を離そうとし)
吉田: 今のは忘れて、普通に便利な瞬間移動で帰りなよ、はは……。
加藤: ――嫌だ。
(吉田の目が点になり)
吉田: え……?
加藤: 嫌だって言ってるの! ――私だって、吉田くんといっぱいお喋りしながら歩いて帰るの、すっごく良いなって思ってたんだから……!
(今度は吉田の顔が、耳の根元まで真っ赤に染まる)
吉田: あ……ありがと……。
(加藤が最高の満面の笑みを浮かべ、吉田に向かって小さく手を振る)
加藤: それじゃあ、また明日ね! 吉田くん!
吉田: あ……うん! また明日!
【第2話 完】
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