おまけ
二十年前のこと。かろを助けるために宇宙へ旅立ったKANADE号の一員は、この日もこの日とて奇っ怪な船長の行動を見届けていた。
「ふふふ……今日もかろを怖がらせてやる。」
「ただのストーカー行為でしょうに。また相手にされないだけですよ。」
むうは無線機を手に取って、またいつもの脅しを仕掛けようとする。――しかし、この日は無線機の向こうから先に声が聞こえてきた。
〈……せ。〉
〈よこせ……肉をよこせぇ……〉
タイミング悪く、腹を空かせている最中のかろに繋がってしまったようだ。むうは涙目で震えている。
「わあああ!!ぺーぺ!お、おばけぇ……っ!」
「ただの人喰い船長です。ご心配なく。」
☆
ある日は、かろがぺーぺに向けて虫歯の写真を送ってきた。写真を撮ってもぺーぺには見えないだろうに……と誰もが思ったところ、ぺーぺはメッセージに気がついた途端、写真の詳細を言い当ててしまった。
「これは……虫歯ですね。奥歯が完全にやられているようです。」
「おいぺーぺ。お前盲目なんだろ。なんでそんな事まで分かるんだよ。」
ぺーぺはむうの方に顔を向ける。その位置すら一切のズレを感じさせない。
「ええ。分かりますよ。まず空間の構造とその人の性格、心理さえ分析できればある程度の位置は把握できます。
今回かろが虫歯だと予想できたのは、かろは食いしん坊なのに旅疲れで歯を十分に磨けていない、そして今回わざわざわたし宛に写真を送ってきた。これらを繋ぎ合わせていけば簡単に特定できるためです。」
むうは納得できない様子で立ち上がる。
「待て!なんで虫歯の位置まで特定できるんだ!」
「秘密です。説明が面倒くさいので。」
こいつ、今のままでも十分医者としてやっていけるんじゃないのか。むうは彼女に若干の恐怖を覚えながら考えた。
☆
かろところろが真心を集める前の出来事。
とある研究室。かろが宇宙から帰ってくるのを待っていたころろは、怪我をして帰ってきたかろを見て驚いた。
「かろ、どーしたの?」
かろは頭に巻かれた包帯を押さえながら、へらへらと笑っている。
「えへへ。宇宙船が墜落しちゃって。」
……またある年は、足を怪我して車椅子に乗って帰ってきたこともあった。やっぱりかろは笑ってた。
「宇宙船が爆発しちゃって――」
……またある年も、やっぱり怪我をして。
「かろ。また機体トラブル?」
またかろが「えへへ」と笑おうとする。ころろは「ん。」と両手を差し出した。胸に飛び込んでこいのポーズだ。
「かろ。辛かった時は泣いていい。」
かろはほんの少し目を見開く。しかしやがて、わずかに微笑むところろの肩に顔を埋めた。
「じゃあ、ちょっとだけ。」
ころろはただ目を瞑り、かろを慰めようと頭に手を置こうとした――すると
「びえええええ!」
かろの号哭が、突如研究室に響き渡り、ころろは思わず手の動きを止めた。でも冷静になってみれば、むしろこれは安心できるものだと思えた。そしてまた、手を動かす。
――かろもこんな風に泣くんだな。
「ごはん、できてるよ。」
完結です。
星飯ぐるめぐりを観てくださった読者様。
短い間でしたが、ありがとうございました。
またどこかで✩.*˚




