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わたつみ
海を見ていると涙がこぼれてくることがある。
はじめは水面に反射する太陽がまぶしいからかと思っていた。しかし違うようだ。
それはいつも決まって、人気のない海を見ている時だった。
夏の海のにぎわいは自分を泣かせるときはなく、誰かに打ち捨てられているような海を見るとき、私の胸には寂寞としたなにかが押しよせてくるのだった。
海。海。広い海だ。自分などひとたまりもなく呑み込んでゆく、大きな水のかたまりだ。自分は海を眺めると、それで少しだけ自分も大きく感じることができる。
この涙は何なのだろう。喧騒ではけして流れることのない涙が、こうも簡単に湧き出てくる。自分の中の塩分が砂を通して海と一体になる。
海だ、海だ。自分の頭はそれでいっぱいだ。
風すらも、身を切るように吹き荒れている。自分はすっかり洗い流される。
何かが自分の中から出尽くした時、自分は海を去る。何かが海に還ったのだろう。満足をした顔で。
私が海に背を向けると、心地の良い潮の満ち退きはいつまでも自分の耳に残っている。




