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コイントス
「これをするにはコツがいるんだ。いいか、試してみろよ」
そう言って、兄は私にコイントスのコツを見せてくれた。私は見よう見まねで、それをやってみる。上手くいかない。何回か試してみる。しかし結果は同じだ。あとちょっとというところまでもたどり着けない。幼い私はそんな自分に嫌気が差してきた。そして、その嫌気は自然と目の前にいる兄に転嫁されていった。
無言でコインを拾うと、私はふてくされて兄にそれを突き返した。
「なんだ、もういいのか」
こちらを試すように、兄が言ってくる。
「飽きた。つまんない」
そのようなことを、もっと幼い口調で私は言ったのだろう。口をとがらせながら部屋を出た私は、やがて遊ぶ道具は兄の部屋に集まっていたことを腹立たしく思い出したのだった。しかし小さな私にもなけなしのプライドというものがあった。それは自分のわがままが引き起こした結果ではあったが、むくれて出ていった部屋におめおめと戻っていくような行動は節度のない振る舞いのように思われた。
兄の部屋から一定の距離を保ったまま、無為の時間を過ごさねばならなかった私は、とうとう暇つぶしを探すのを諦めて床に寝転んだ。目の前には白い、少しくすんだ天井が広がっている。眼を閉じる。さっき昼寝をしたばかりだから、すぐには眠れそうにもなかった。




