ゲート前で5
玲のあとに続く千波の姿に、上級生たちも少しざわめいている。その空気に居心地の悪さを感じながら、ゲートから少し離れた一角に向かう。
玲が立ち止まったところには、八人の生徒が固まって立っていた。
そのなかにガジャルの姿を認め、千波の足は自然とそちらに向かう。
「チビ?」
「チビじゃないし。千波だし」
「なんだ、ガジャルと知り合いか?」
親しい様子の二人に、玲が訊ねる。
「同室なんだ。それで、何でこいつが?」
「向こうへ連れて行く。もちろん、行くだけですぐにこちらに帰すが」
「ああ、そういうことか」
ガジャルが軽く頷いて視線を落とすと、千波はどこか不安げな様子で下を向いている。
実際、不安なのだろう。とはいえ、やさしく励ますという芸当は、ガジャルには不可能である。
「行きたくねぇなら、多喜んとこ戻ってろ」
「え?」
「別に、お前は任務じゃねぇんだ。ぐだぐだ尻込みされると、面倒なんだよ」
「……だって」
「怖いんだろ。お前、ビビリだし、弱いもんな」
「違うし。その……緊張は、してる、けど」
「は? 緊張ってのは、はりつめるってことだろ。そんな情けねえ顔にはならねぇよ。ああ、いつもの顔か」
馬鹿にするような調子に、思わず千波も顔を上げる。
「ガジャ先輩なんて、年中凶悪面じゃんか」
「まだ二か月そこらしか、俺の顔見てねぇだろ」
「言葉のアヤだよ。わかる? 言葉のアヤ」
「巧みな言い回しがどこにあったよ」
「なんでその外見で、微妙にインテリなのさ」
「外見関係ねぇだろ」
ついついいつもの調子に乗せられていると千波が気づいたのは、背後で玲が軽く咳払いをしたときだった。
知らない上級生も多くいる手前、元来人見知りな千波は、今度は顔を赤くしてガジャルの陰に隠れる。
その様子に、また軽く笑うと、空気を切り替えるように玲が声をかける。
「それじゃあ、出発前に簡単に確認しておく」
ガジャルを含めた八人の学生は彼に意識を集中させた。
一瞬にして空気が緊張に張り詰め、その温度差に、千波は軽く身震いをした。たった一年しか変わらない彼らだが、実戦経験の有無の差は大きい。
「班長は俺、サブはノイエとティア。任務時の役割は向こうで詳細を確認して改めて決める。それより前に戦闘になった場合、前衛をガジャルとティア。ノイエと秋は距離をとって援護。他の者は中衛で適宜展開する。大規模な術式を使う場合は声掛けを徹底すること」
てきぱきと役割分担をする玲に、班員たちも簡単に頷き返すのみである。
千波は、来年の今頃、同じように任務に向かう自分を想像しようとして、やめた。
魔法を使ったことすらない現状で、自分に何ができるとも思えない。あまりにも遠いが、それでもいずれ立たなければならない場所だ。無駄な想像をするよりも、彼らの様子から、何かを学ぶほうがよほど生産的である。
ガジャルは座学の成績も上のほう。物理と国語が得意。
留学生はその次元の有望株ばかりなので、
基本的にみんな頭がいい。




