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ゲート前で2

「レント先輩とガジャ先輩は、何しに行くの?」

 すぐ前を歩いていた二人に、千波が声をかける。


 二人は、いつもの私服や制服姿とは違い、そろいの軍服のような衣服を身につけている。さらにレントは、得意武器である弓も背負っていた。彼のほかにも、周囲の上級生たちは、多くが武装している。


「俺は、モンスターハント。なんとドラゴン退治ですよ」

 レントがどこか楽しそうな様子で答える。実際、彼は楽しんでいる。

 繊細な外見に似合わず、警護や守備といった受け身の任務よりも、倒すべき相手がはっきりしている討伐任務のほうが、彼の好みなのだ。それも小物の敵を大量に仕留めるのではなく、大物を相手にするほうが性に合っている。


「ドラゴンって……倒していいの?」

 千波が首を傾けながら訊ねると、レントはその反応に、同じように首を傾ける。

「地球にも、ドラゴン殺しの英雄がいるだろ?」

「いるけど、それは西洋だね。日本だと、竜は神聖な生きものってイメージ」

「へえ、所変わればってやつか」

 興味深そうにレントが頷く。

「でも、日本に実際にドラゴンが現れたら、そいつの気性によるだろうが、まず討伐対象になるだろうな。八岐大蛇ってのもいるし」

 冷静に分析する多喜の言葉に、千波もなるほど、と頷く。

「そういえば、ドラゴンなクエストとかもあったね」

 言ってから、中学時代にプレイしたゲームを思い起こす。本当にあのように火や氷の息を吐くのかはわからないが、きっと一筋縄ではいかないだろう。

「怪我、しないでね」

 ぽつりと言った千波に、レントは少し目を丸くしてから、にっこりと笑った。あまり見せない、屈託のない笑みはやたらと綺麗で、逃げるように千波は上級生たちのなかでも頭一つ大柄な先輩に目を向ける。


「ガジャ先輩は?」

「俺は……、何だったか……」

 問われたガジャルは返答に詰まる。紺色の耳がぴくぴくと動いている。

 そんなガジャルの様子に、彼の前を歩いていた生徒が、思わずといった体で振り返った。


「いやいや、お前、任務内容、昨日説明されたばっかりだろう」

「うるせぇよ。いいんだよ、俺は。どんな任務でもやることは一緒なんだから」

「よくねぇよ。今回は警護だぞ? 向かってくる奴みんな倒せばいいってもんじゃないからな? 警護対象守るのが仕事だからな?」

「向かってくる奴、全部倒せば守れるだろうが」

「だから、そういう問題じゃないんだってば」

 ほとほと困った表情の生徒に、レントが憐憫のまなざしを向ける。


「あーあ、ガジャ丸と同じ班なんてかわいそうに」

「レント先輩は、ガジャル先輩と同室じゃないですか」

「あ、本当だ。俺、かわいそう。でも、しばらくガジャ丸の顔見なくていいからラッキー」

「俺だって、お前の極楽鳥みたいな頭、当分見たくねぇよ」

「極楽鳥だって。それってそれだけ綺麗ってことだろ」

「中身まで極楽だな。ドラゴンもそんな中身がからっぽな頭、食いでがないだろうよ」

「うるせぇな。脳みそまで筋肉でできてる奴に言われたくねぇよ。その耳の毛全部剃り上げるぞ」


 不毛な言い合いを続ける二人に、下級生二人は顔を見合わせる。

「俺たちも、しばらくこれが見れないんだねぇ」

「静かで何よりだ」

「そう? 俺はちょっとさびしいかも」

「そのさびしさは、予習復習でまぎらわすといい」

「そんな器用なまねできるの、多喜くんくらいのものだよ」


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