妖刀になった邪竜王は、ご飯が食べたい様です。
「もう身を持って知ったと思うが…… ダンジョンの範囲外だと、魔力不足で魂が消滅するからな」
「魂の存続を望むならば、大人しくしていて下さい」
『…… 解った……』
「さて、とりあえず刀が戻ったし…… 飯にするか?」
妖刀になった邪竜王が大人しくなったので、昼食を食べにメイドカフェに向かうと……
『待て…… 我の分は、どうした?』
「にゃん? にゃにを言っているにゃん?」
「お前、刀だろう」
「今の自分の姿を忘れたのですか?」
『この姿では…… 食事が出来んのか?』
「知らんのか?」
「お聞きしますが…… 武器を知っていますか?」
『人族などが攻撃に使う者の事だろう? その者がどうした?』
「者…… ひょっとして、武器が生物だと勘違いしていませんか?」
『うむ? あの者達は生物では無いのか?』
「人化のご経験は…… 御座いますか?」
『この邪竜王の我が、人族などの姿を真似てどうする?』
「どうやら…… 道工を知らない様ですね」
「若い高位竜にゃ…… 武具も魔力持ち以外知らにゃいんじゃにゃいかにゃ?」
「魔力持ちの武具だから、生物だと勘違いしたか…… 有り得るのか?」
『さっきからゴチャゴチャと…… いいから、我の食事を用意せよ!』
「え~…… 今のあなたでは、食事が出来ませんよ」
『ぬ? 食事が出来ぬだと…… 何故だ!』
「今のあなたは…… 刀と言う武器で生物的な口や食道に胃などの食事をする為の器官が存在しません。なので…… 刀である限り、あなたは一生食事をする事は無いでしょう」
『な、なにぃ~~~~~!?』
その後は…… 男達の食事を見ては…… 妖刀に宿る邪竜王の魂が小さく揺らぐのだった。
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「私に用ですか?」
『ダンジョンのコアよ…… お主ならば、用意出来るのではないか?』
「私のマスターは、あなたではありませんので……」
『くっ……』
「他にご用はありませんか? 無いのならば…… 私はこれで」
『ま、待て…… どうすれば用意出来る?』
「あなたの永遠なる忠誠をマスターに……」
『くっ、誇り高き高位竜の我が…… 人族に忠誠を誓うなどと……』
「ハンバーグ……」
『うぅ!?』
「オムライス……」
『うぐぅ……』
「カレー…… スパゲッティ…… パンケーキ……」
『がはぁ! くっ…… 竜の誇りは……』
「邪竜王…… パフェって…… 知ってますか?」
『我魂の永遠の忠誠を…… そなたとそなたのマスターに誓う!』
「では…… マスターの夜の御供用に用意中の1体を、あなたに合わせて調整しましょう」
『有り難き幸せ!』
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~ 数時間後…… ~
「君は…… 誰?」
男の前で、見慣れぬ幼女が土下座をしていた。
「このじゃりゅうおうだーくねすかおすどらごんは…… ますたーにたましいのとわのちゅうせいをちかいます」
妖刀になった邪竜王は、食事の為……
ダンジョンコアと取引して……
コアとコアのマスターの男に……〝幼女の姿〟で、魂の永遠なる忠誠を誓った。




