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眠り姫は夢をみない  作者: 鈴木チセ
伽耶王国進行編
66/70

サイドストーリー 現実と夢の間で

ココナが見える。


スミレはふと思った。


(フタバはまだ戻ってこない。)


ずっと夢を見ていたはずが、気がついたらもといたはずの飛行艇の中の様子が見える。


ココナが令瞑の顔に残された落書きのあとで何かを察したところ。


シルフィが硫酸銅を舐めようとしてココナに嗜められているところ。


それからいつもは弱音を吐かない風華が父親に助けを求めたところ。


しかし結局はランも笑い出しそうな啖呵を切ったところ。


さらにランが伽耶王国に進行しているところが見えた。


しかし、想定とは違うことが起きていた。


例の伽耶王国の祭事が、廉によって中止されていたのだ。


それでもランの力は凄まじい。


祭事一つを中止にしたところで意味をなさないのだ。


結局廉は華の国に入った。


スミレはランが何をしたいのか理解できなかった。


無表情で目の前のことを他人事のように見ているスミレに、アイラは言った。


「そろそろ起きる時よ」


スミレはアイラのほうに向き直る。


あいも変わらず無表情だった。


アイラがスミレにニヤリと笑いかける。


貼り付けたような嫌な笑い方だった。


スミレはさっきまでの高尚に聞こえた目的が汚れたように感じた。


「アイラ様、あなたは和を滅ぼしたら死ぬの?」


少しの違和感は何も知らないスミレにとっては異質で、無視できない存在。


その違和感に根拠はなかったとしても、それがスミレ自身を揺るがすのなら、それがスミレにとっての真実なのだ。


異論は認めない。


「いいえ?なぜ死なないといけないの。」


全ての目的を達成した時、失われた命を傷みながら、しかしこれからの世界の安寧を願いながら、その永遠とも呼べる時間に自らきりをつけるべきではないのか。


スミレはいつか読んだ本の主人公がそうしたように、アイラもそうすべきだと考えていた。


「和を終わらせ、それからあの陽蘭も止める。」


「終わりはあるの?」


スミレはまた聞いた。


この問答に意味はないと思いながら。


「ないわ。私がいないと世界は悪いままよ。」


表情を変えずに言い切ったアイラに向かってスミレは吐き捨てた。


「そう、あなたは死にたくないだけなのね。」


スミレはさっきまで持っていたアイラへの畏敬の念を一気に拭い去る。


それからアイラに一言も話させる隙を与えず、ランにかけられた異能を弾いた。


その異能を弾くことになった能力の鍵になる感情は諦めだった。

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