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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第六章・仲間達の事情

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いきなり婚約者発言

前回のあらすじ


テセウスの元を訪れたアリア。いきなりのテセウスからの壁ドンに戸惑ったり、何事かをイケボで囁かれたり。あれれ〜?おかしいぞ〜?な雰囲気になったり、そういえばこの地下室に二人‥‥‥何があってもおかしくない状況なんだけど??


 

「ずっと待っていたよ。アリア。これからよろしくな‥‥‥。俺の婚約者として」


 な‥‥‥


「何のことですか? マクシミリアン公爵様は確か貴方様の話し相手にと‥‥‥。そんな、婚約者だなんて聞いてませんわ!」


 私は目の前のテセウス様の言葉に困惑していた。美しいその顔が、私の言葉で明らかに歪み、イラついているのが分かる。


 ‥‥‥怖い。


 どうして? どうして? 私何かしたかしら? でもまだ私たち、会うのは二回目なのに‥‥‥


 そういえばテセウス様は仰っていた。


 《ふぅん、覚えていないとはねぇ‥‥‥》


 覚えていない?? ひょっとしてテセウス様と私はどこかでお会いした事があったのかしら?


「ご気分を害されたのなら謝ります。ですが今回お聞きしたのは、本当にテセウス様の話し相手にとの事でしたので‥‥‥その」


 テセウス様の婚約者になど私は聞いていない! 普通なら公爵様のご子息と婚約なんて名誉な事だし、ましてや私は父を亡くした没落貴族‥‥‥。それでも、いきなりこんな‥‥‥。困惑する。


 それに今朝方の嫌なご婦人方に確実に知られてしまうわ。


「なるほどね。まあいいや、これから思い出してくれればいい事だし」


 思い出す‥‥‥? テセウス様は何を私に思い出して欲しいのかしら。なんとなくだけど、婚約者云々よりも、テセウス様は私に何かを思い出して欲しいような‥‥‥


「ねえ」


 テセウス様が私を壁ドンしたままの体制で見下ろしてくる。


「は、はい!」


「いきなり婚約者って言われて戸惑うのは分かるよ。でもこれは決定事項なんだ。今更覆(くつがえ)す事はできない」


「‥‥‥ッ!!」


 私は何も言う事ができなかった。その時見上げたテセウス様の顔が酷く‥‥‥。苦しそうだったから。


 言葉は冷たいのに、すごく勝手な事を言っているのに。何故そんな顔をするの??


 そんな顔で見つめられたら、何も言えなくなる。


「‥‥‥。一方的だと分かってはいるけど‥‥‥」


「??」


「少しだけ、抱きしめさせて。アリア」


「ぇ‥‥‥」


 テセウス様は言うだけ言って、私の意見も聞かずに抱きしめてきた。

 うへぇ!! ダンス以外でお父様以外の殿方に抱きしめられた事もないのに!!


 あ、でも‥‥‥。テセウス様の胸板、熱い。心臓の高鳴りが聞こえる。なんか‥‥‥。心地よいな。


「アリア‥‥‥」


 切なそうな声色で、私の耳元で囁くテセウス様‥‥‥。こんなの。


 ずるい‥‥‥


 私はそろそろと腕を伸ばしてテセウス様の背中に回す。

 テセウス様は驚いたのか、少し肩を揺らした。


「‥‥‥ッアリア」


 何故抱きしめ返したのかしら。わからないけど、テセウス様が震えているような、泣いているような気がしたから‥‥‥


 これは同情かしら? それとも‥‥‥。何か別の感情?


「テセウス様‥‥‥」


 テセウス様の名前を声に出してみる。そういえば昨日出会ってから、まともに名前を呼んだの初めてかも。


 ふとテセウス様の顔を見上げると、綺麗な顔が真っ赤になっていて、明らかに照れていた。

 ええ‥‥‥? 自分からしといてその顔は何??


(でも、ちょっと可愛い)


 って、何を(ほだ)されそうになってるの私!? 昨日初めてお会いしたばっかりのちょっと顔がいいだけの男性に‥‥‥


「ところで今朝こっちに来る前に何かあったの? 顔色が悪いように見えたけど」


「えっ」


 テセウス様はいつのまにか私から体を離して、何もなかったかのように作業に戻ってしまった。


(なっ、何なの!? 勝手に抱きしめてきて、ちょっと可愛いと思ったらもう平気な顔して作業に戻ってる‥‥‥。テセウス様が何を考えているのかわからないわ)


「いえ、少し‥‥‥。嫌なことを聞いて‥‥‥」


 私は今朝方のご婦人方の心無い言葉を思い出していた。


「嫌なこと?」


 テセウス様はそう言って私の方に顔を向けた。いつのまにかその顔には眼鏡がかけられていた。


「ええ‥‥‥。少し、この宮殿のご婦人方に心無い言葉を言われてしまって」


「‥‥‥。分かった」


「えっ?? 何が?」


(今の会話で何が分かったのかしら?)


 テセウス様は私の質問には答えず、自分の顎に手を当てて私の顔を眺めていた。


(ううっ、そんな整った顔で見つめないでください//)


 どうやら私はイケメンに対する耐性がないらしい。そうよね。赤子の時からずっと、ただ広いだけのお城で過ごしてきたのだもの。


「アリア、君は何も心配しなくていい」


「えっ‥‥‥。ぁ」


 そう言うとまたテセウス様は作業に戻ってしまった。


(何この人‥‥‥言いたい事だけ、やりたい事だけやって)


 バルカ城の貴族たちってみんなこんな感じなのかしら? 第一王子のレクター様はテセウス様よりも輪をかけて酷いってお噂だけど。


 * * *


「ふぇくしょ! へくしょ! へっくしょん!!」


「まぁ嫌ですわレクター。せめてハンカチでおさえてくださいまし!」


「うむ、すまんヴァーリャ。どうやら今日もまたどこかで誰かが俺の噂をしているようだ。ハハハ、モテる男は辛い」


『お前お前お前! 自意識過剰にも程があるぞ!!』


 一方その頃レクターたちは天気がいいからという理由で別荘の中庭でのんきにピクニックをしていたという。






相変わらず大人しい二人なので動かし辛いぜ!!

テセウス編はこのような、アリアに対するじっとりとこびりついた嫌な汗みたいな執着心が続いて行くと思います。果たして過去、二人というかテセウスに何があったのか?次回語られるのかね?


ここまでお読みくださってありがとうございました。

よければまたよろしくお願いします!


今日もお疲れ様でした!

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