紫の麗人〜罪な女性ヴァレリア〜
(作者すら忘れていそうな)前回までのあらすじ
ガルシア国王が召喚した召喚獣が言うには、ユーリの爵位記念に晩餐会を開くと言う話だが‥‥‥
一方、何も知らないヴァレリアたちは?
「まぁ〜可愛いわサラスィアちゃん! ヴァレリア様の幼少期のドレスがサラスィアちゃんのその紫の瞳に映えていますわ!」
ヴァレリアとエリーとサラスィアは、ヴァレリアの部屋で三人でキャッキャウフフしていた(一人は除く)。
『全然着心地が良くないのじゃ!! 締め付けはひどいし、お城の人間どもはいつもこんな窮屈な格好を強いられておるのか??』
「あらあら、まだコルセットがきつかったかしら? これでも手加減したつもりだったんですけど」
そう言ってエリーがサラスィアのコルセットを緩め始めた。
「ヴァレリア様もその格好似合っておりますわよ。さすが王子。仕立て屋に根回ししてヴァレリア様にピッタリな衣服を用意させているなんて」
どこにそんな暇が? という疑問を持つ方もいらっしゃりますが、そこは王子。ブランシュ公爵夫人に早馬を寄せ、ギシェットの仕立て屋に急ぎで頼んでいたのです。さすがですね!
サラスィアちゃんの色と合わせた紫のセットアップ、同じく少し濃いめの紫の上等な生地で出来たブリーチズ! どこからどう見ても、最高の男装ですわ!
お二人とも紫で統一なのがより一層ミステリアスさを引き立てて‥‥‥
「今夜の晩餐会が楽しみですわね」
「えっ? エリー今なんと?」
しまった!
『なんじゃその【ばんさんかい】というのは?』
「サ、サラスィアちゃん!【ばんさんかい】っていうのはすごく退屈なものよ! ただ食事が豪華なだけの」
食事が豪華‥‥‥
サラスィアはゴクリと喉を鳴らした。
『エリー! ワシはその【ばんさんかい】とやらに出席したいぞ!』
「あわわわ何がいけなかったのかしら!? 豪華な食事? 豪華な食事がサラスィアちゃんの琴線に触れたの??」
ヴァレリアはサラスィアの反応に慌てた。でも【豪華な食事】に興味があるのはヴァレリアも同じだった。
「ほほほ、では日が暮れるまでドンジャラでもして待ちましょう。あ、ヴァレリア様。晩餐会にはアナスタシア様もご出席なさるそうです。アナスタシア様は体調の優れない中、ヴァレリア様に会いに来てくれるそうですわよ。見つけたらお声をかけてくださいね」
アナスタシア様‥‥‥。そんなにしてまで私に伝えたい事があるのね。やはり直感を信じて正解でしたわ。
「わかったわエリー。アナスタシア様の為に私も晩餐会に参加します。日暮までドンジャラでもして待ちましょう」
『ドンジャラ? なんじゃそれは』
「ほほほ、私も良く知らないんですのよ」
「同じく。私もよく知らないんです」
『エリーも知らんのかい!!』
* * *
うーむ。結局ドンジャラが何か全員わからず、ポーカーで時間を潰してしもうた。それにしても‥‥‥
『豪華じゃのう、この宮殿は。王子の別荘も豪華だと思うたが、ここはレベルが違うぞ! 廊下まで豪華な照明が照らして‥‥‥』
「サラスィアちゃん、もうすぐ着きますわよ。今日はバルカの一番大きな広間でユーリの受勲記念式を開催するみたいですわ。きっとユーリは緊張してカチコチになっているでしょうね、ふふふ」
サラスィアはヴァレリアの言葉を聞いて、その可愛らしい銀色のツインテールを揺らしながら慌てた。
『ユ、ユーリが来るのか?? おいヴァレリア! ワシに変なところは無いか? ゴミが付いてるとか‥‥‥。ドレス? に毛が生えてるとか』
「まさか! サラスィアちゃんはこの宮殿で一番と言っていい程に美しく仕上がってますわよ!」
サラスィアちゃんはどうしたのかしら? ユーリの名前が出た途端急に身なりを気にして‥‥‥
エリーがニヤニヤしながらその様子を見ていた。
(全く、ヴァレリア様は相変わらず激鈍です事‥‥‥。王子が苦労するのもわかるわ)
広間に到着した二人を見て、その場にいた一同がざわめく。
「誰かしらあの麗しい御人は‥‥‥。紫の瞳がとても綺麗な」
「えっ!? あんなかっこいいお方が、王子以外にこのバルカにいたんですの!? はわわわもう少しオシャレしてくればよかったかしら?」
「信じられない! あんな美しい方がこの世にいたなんて!! 嗚呼‥‥‥。立ちくらみが‥‥‥」
お嬢様方の視線とため息を独り占めして、男装のヴァレリアは颯爽と現れた。
「レクターはまだ到着していないのね」
ヴァレリア様が振り返るたび、風にポニーテールがなびく。その合間に見える紫の妖しい瞳。お嬢様方はその危うい美しさに倒れる方もちらほら。
当のご本人はご自身が原因だとは全く気づいていないご様子。
「全く罪なお方ですこと」
エリーが久しぶりにクソデカいため息をついた。
『まだユーリたちは来てないのだな』
「そうですわね。きっと皆が揃った頃にレクターと国王陛下と来るのだと思いますわ」
ヴァレリアは記憶を頼りながらサラスィアに説明する。
多分そうだったはず‥‥‥。お城から出てずいぶん経つので、しきたりとかそういう事を忘れかけてましたわ。
『わぁ〜!! ヘルヘイムにいた頃にも、青い薔薇を見守っていた時にも、見た事ない程の豪華な食事じゃ!! ヴァレリア! 食べても良いか!?』
「ふふっ、どうぞどうぞ」
私がそう言った途端、サラスィアちゃんは目をキラキラさせてテーブルの上の豪華な食事に手をつけた。
「アナスタシア様はまだ来てないですわね」
きっと女中か、思いを寄せるハンニバル様に支えられて来るはず。元々私の体だったからわかる。私なら自分の胆力で自分一人で来れたけれど、中身がヴァレリア様だから、後宮からのこの距離は足腰に辛い‥‥‥
(アナスタシア様、頑張って‥‥‥。私に伝えたい事があるのでしょう?)
その時、国王陛下到着の合図を知らせるファンファーレが広間に鳴り響いた。
ドンジャラって何ですかね?(私も知らない)
次回ユーリはどんな格好で来るのか!?メカクレ?それとも前髪をあげて来るのか?
それにしてもヴァレリア様は男装でもお嬢様方を無意識に誘惑するのだからタチが悪いですね。
ここまでお読みくださってありがとうございました!




