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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第五章 拗れる心

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懐かしのバルカ

前回のあらすじ


エリーの計らいで宮殿用の衣服に着替えるため、半ば強引に連れて行かれたヴァレリアとサラスィア。

残された者達は各々だべっていた。


※ヴァナルカンドだけはガルシアの庭に赴き、長時間走った疲れを癒すため寝ている。


「おお! レクター! なんだ、帰ってきてたのか?」


 自室の前で聞き慣れた声に呼び止められた。


「マクシミリアン公! なぜここに?」


「ははは! お前の親父から興味深い話を聞いてな。ここに来るのも久しぶりだからな、宮殿を散歩していたんだ。それにしても、変わらないなこの宮殿は」


 マクシミリアン公はそう言って、こちらを見ながら扇を口元に当ててヒソヒソしているご婦人方に目を向けた。


「マクシミリアン公、こちらへ」


 俺は自室の扉を開け、マクシミリアン公を部屋に通した。


「うむ、悪いなレクター」


 マクシミリアン公は俺の親父の弟で、テセウスの実親だ。宮殿の噂好きな奴らと違い、自分の好きな事にしか興味を示さない。俺はこの自由奔放なマクシミリアン公が大好きなのだ。


 ※テセウスとは→レクターの従兄弟。髪の色以外はレクターに顔が瓜二つの男。一時期レクターの影武者を務めた事がある。普段はバルカ城かマクシミリアン公の城の地下室で怪しい研究をセコセコしている引きこもり。人付きあいが苦手で、晩餐会などには顔を出さない。残念なイケメン。


「それで興味深い話とは?」


 俺は司教に当てる手紙を書くために、机の引き出しを開けながら聞いた。


 マクシミリアン公はその辺の椅子に腰掛けた。


「お前の知り合いに、ユーリという男がいるらしいじゃないか? そのユーリが、何やら色んな動物に好かれると聞いてな。今日はその事を聞きにガルシアに会いにきたんだ」


 ガタガタッ!!


 俺は机の上の書類ごとずっこけた!


「どうしたレクター? 大丈夫か?」


「いえマックス公、大丈夫です。ちょっと意外な名前が出たもので」


 ユーリ? 何故ユーリの名前を叔父さんが?


「ガルシアはユーリに爵位を与えたとか。それも私の興味を惹いたんだ。ガルシアはその記念に今宵ユーリを招いて晩餐会をするらしい」


 ガターン!!


 俺はまたしても書類ごと椅子から転げ落ちた。


「どうしたレクター? さっきから大丈夫か??」


「いえ、色々情報量が多くて‥‥‥。混乱しているだけです」


 俺はマクシミリアン公にユーリと一緒にここにいる事を説明した。


「おや、では早馬を出すまでもなかったな。ガルシアは知っておるのだろうか?」


「さあ‥‥‥。いや、親父の事だからきっとお得意の魔法か何かで俺とユーリが来る事を知っていると思います」


 じゃないとタイミングが良すぎる。


「おお、それもそうだな。思えばあいつはいつも魔法の成績だけは兄弟の中で群を抜いていたからな。私はあいつが魔剣に選ばれて納得だったが、他の兄弟たちはみんな首を傾げておったな。ははは!」


 * * *


「あっ、ガルシア国王の魔法の鳥だ」


 ユーリは自分の頭上で弧を描いている美しい羽根の小鳥に気付いた。


『ん? なんだそれは?』


 ニルがテーブルの上の菓子を食い散らかしながら聞く。


「国王陛下の召喚獣ですよ。いつのまについて来てたんだろう。ほら、おいで」


 ユーリがそう言って指をかざすと、ガルシア国王の魔法の鳥という虹色の小鳥がその指に止まった。


「ピィピィ」


「ふふっ、そうなんですか。国王陛下がそんな事を‥‥‥」


『お前召喚獣と会話ができるのかよ。すげえな!』


「いえ、なんとなく言いたい事がわかる程度です。召喚獣というのは元々人間の思念が作り出したものだから、召喚した方の気持ちが伝わってくるんです。召喚魔法が使える魔法使いは大体分かるはずですよ」


『はぇ〜? 前から思ってたけどユーリって結構無敵だよなぁ(王子が凄すぎて影になりがちだけど)。お前を追放したパーティの皆は今頃後悔してるんじゃないか? 追放ものにありがちな設定だろ?』


 追放もの? ありがちな設定?


「‥‥‥。あの方たちには僕の二重人格のせいで迷惑をかけてばかりだったから。風紀を乱すと言って‥‥‥。後悔するどころか、今頃僕を追い出してせいせいしているんじゃないかな」


 でも僕は、今のこの変なパーティーに参加するようになって本当によかったと思ってる。アレクもだいぶ落ち着いて、出てこなくなって来たし‥‥‥


『それで? その召喚獣はなんて言ってんだ??』


「ははっ。この子が言うには、僕が爵位を持った事を記念して今夜晩餐会を開くらしいですよ。全く、あの方は面白いご冗談をおっしゃいますよ」


『ブフーーーーッ!!』


 ニルは飲もうとしていた紅茶を漫画のように吹き出した!


『ゲホゲホ! ユーリ何笑ってんだ! 多分それ冗談じゃないぞ? 俺様とヴァーリャは知らんぞ。ヴァーリャはキツいコルセットと格式ばった晩餐会が大嫌いなんだ! まぁ晩餐会に出るうまい飯は好きだけど』


「そうなんですか?」


『ああ、多分ヴァーリャと俺様はアナスタシアのいるところに行くぞ。お前は王子と参加すれば良いさ』





これはフラグ立ちましたね。今回も短いですねすみません。


ここまでお読みくださってありがとうございました!

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