サラスィア変身計画!
前回までのあらすじ
一同はとりあえずアナスタシアの話を聞くためにバルカ城に赴いた。そこで完璧女中のエリーが現れて‥‥‥
※全然関係ないですけどドラマか何かで「バルカ共和国」っていうのが出てめちゃくちゃ驚きました。
このお話とは無関係です。
『ああ、疲れた‥‥‥。俺は庭に行って休むぞ。あとの事は俺には関係ないからな』
そう言ってバルカに着いた早々、ヴァナルカンドはガルシアの庭に光の速さで走って行った。
「ありがとう! ヴァナルカンド!」
そう言ってユーリが手を振った。
* * *
「まぁ! いつのまに用意されていたのかしら」
私たちの前にはいつのまにかさまざまなお菓子や果物が乗せられたお皿が並んだテーブルが広げられていた。
お城の侍女が気を利かせて用意してくれたようですけど今はお菓子を食べておしゃべりという優雅な時間を過ごしている場合ではありませんのよ。
美味しそうだけど!!
「まぁ。バルカ城付きの宮廷女官も私ほどではないにしろ気がききますわね。では、まずは身支度を整えるためにお嬢様のお部屋へ行きましょう」
私はエリーの「身支度」という言葉を聞いて、キツいコルセットを真っ先に頭に浮かべて身震いをし、慌ててエリーの言葉を遮るように捲し立てた!
もうすっかり冒険服と男装に慣れてしまった今、あのようにキツいものは二度とごめんだわ!!
「エリー! 私たちはアナスタシア様のところへ行かなくては。夢でアナスタシア様にお会いしたのです。何か言いたげな様子で‥‥‥」
エリーはゆっくりと首を振る。
「いけません。いくらお嬢様でも、このバルカの宮殿にいらっしゃる限りはそれ相応の格好に着替えないと」
「私はこの格好をやめる気はありませんわ! 私は今の男装が気に入っているのです。レクターのサイズですのでちょっと大きいですけど」
「ほほほ、お嬢様ならそうおっしゃるとわかっていましたわ。私が言っているのはそちらの小さなお嬢様のことですわ」
「えっ? サラスィアちゃん!?」
『ええっ!? ワシ!!??』
テーブルに並べられたおやつにかじりついていたサラスィアが顔を上げた。
* * *
俺はレクター。今何をしているかというと、エリーが何やらサラスィアの身支度を整えるためにヴァレリアの部屋に行き、その身支度が終わるのをユーリとニルと菓子をつまみながら待っているところだ。
俺は甘いものはあまり好かんが、ヴァレリアと食べたドラジェというお菓子が皿に置いてあったのでそれを食べている。
ドラジェの甘みと紅茶の渋みが合っていた。
「ところでニル、お前ヴァレリアとの契約はどうなったのだ? ヴァレリアからはひび割れていると聞いていたが」
『その辺は大丈夫。ヴァーリャとは新しい契約をする。今度はヴァーリャを守る神としてな』
神と聞いてユーリが目を輝かせる。
「へぇ、そんな事ができるんですね。知りませんでした」
『元々俺様はヴァーリャの領地の守り神だったんだよ。それがどんどん闇落ちしていって悪魔に戻っちまった。だから守り神にもなれると思うんだ。それに今のヴァーリャは、何かと狙われやすいからな。ヴァーリャに取り憑いていた疫病をばら撒く悪魔ブエルが言っていたんだ』
【あの女‥‥‥。ヴァレリアといったか。あの女はこれからも俺たちみたいな不気味な悪魔に狙われ続けるだろう】
とな。
「なんだと? ニル、何故そんな大事な事を今まで黙っていたんだ?」
『話す暇がなかったんだよ! 今はアナスタシアの話を聞くのが先の方がいいと思ったんだ。それに今のヴァーリャには、なるべく負担になるような事はしたくなかったしな‥‥‥』
ああ、そういう事か‥‥‥
『まぁわからんけどな。そうそう、契約する際は王子にも司祭にも付き添ってもらうぞ。儀式や形式ばったものは嫌なことを思い出すから本当はやりたくないんだけど、ヴァーリャの為だからな』
「無論だ。ヴァレリアのためなら何でもしよう。そうだ。せっかく城に戻ったのだ。司祭に送る手紙をしたためよう。俺は一度自室に戻る。ユーリ達はこのままここでヴァレリア達が戻るのを待っていて欲しい」
ニルとユーリが頷くのを見ると、レクターは光の速さで自室に戻って行った。
『相変わらずヴァーリャの事となると王子は必死だな』
でもそれは俺様も同じだ。
ヴァーリャを守るために司祭を召喚し、神々に証明してもらいたいからな。俺様がヴァーリャの守り神である事を。全てはヴァーリャのためだ。
そして女神アニマにも‥‥‥。あいつがどういう理由でアナスタシアの体を狙っているのかわからないが、俺様はヴァーリャが無事ならそれでいい。
『アナスタシアはヴァーリャと一心同体なんだからな』
「あのぉ〜、先程から気になっていたんですが、アナスタシアさんとは誰なんですか?」
『えっ!? ひょっとしてご存知ない!? ユーリは結構最初の方からメンバーだったからずっと知ってると思ってたぜ!』
ニルから諸々の事情を聞かされたユーリは最初の方は口をポカンと開けてやや呆れ気味に聞いていたが、話を聞くうちにその表情は真剣になっていった。
「‥‥‥。なるほど。あの明るいヴァレリアさんは元々アナスタシアさんだったんだ。だけどニルに従って、自分より美しいアナスタシアさんに入れ替わったと‥‥‥。その影響で元々ヴァレリアさんに取り憑いていたニルも、自動的にヴァレリアさんの体に残る事に」
でも今のヴァレリアさんを上回るくらいの美貌の持ち主って、一体どのような方なのだろう?
『あの頃のヴァレリアは闇堕ちしまくっててな、何故かいつも俺様は憎まれていた。ヴァレリアの愛する女中を、俺様が殺したと言って。直接手をかけたのは俺様じゃないのに。俺様はヴァレリアが闇に堕ちる手助けをしてやっただけなのにさ』
カシャンッ!
「どうしてそんな事を!」
ユーリが思わず大声を上げた! 怒りでアレクが出てきそうだ。その衝撃でティーカップがコロコロとテーブルで踊った。
『それは‥‥‥。俺様が、その‥‥‥寂しかったから、つい。一緒に落ちてくれる人が欲しかった』
「‥‥‥」
『今のヴァーリャは、唯一俺様のことを受け入れてくれたんだ。俺様のことを家族だと言ってくれたんだ』
勝手な人間に暗くて寂しい祠に追いやられ、領地の守り神であった事さえも忘れ去られ、俺様はヘルヘイムにいた頃よりずっと心が荒んでしまった。
ユーリはニルの言葉を聞いて、椅子に座り直した。アレクが出てくる心配は無さそうだ。
「‥‥‥。ハハッ、今のヴァレリアさんらしい。僕も、今のヴァレリアさんに助けられた。姿形が違っても、ヴァレリアさんはヴァレリアさんだ」
ニルはユーリがヘルヘイムにいた事を思い出し、自分が助けた女神アニマの事もついでに話した。
「なるほど‥‥‥」
僕がさっきまでいたヘルヘイムで、ずっとずっと昔にそんな事が‥‥‥
『それで、何か知ってそうなアナスタシアに会いに、バルカ城まで戻ってきたんだぜ』
「アナスタシアさんが何か知っているという確証はあるんですか?」
『ない! だが何かあると思う! ヴァーリャの夢にアナスタシアがなんか意味深な様子で出てきたんだと! ヴァーリャの夢は結構当たるんだよ。俺様は、ヴァーリャを信じてるからな!』
「ふふっ、本当にニルさんはヴァレリアさんのことが好きなんですね」
ユーリの言葉が図星だと言わんばかりに、ニルの身体中が真っ赤になった。
果たしてサラスィアちゃんはどのように変身しちゃうのか!?
ヴァレリア様が好きすぎて守り神になろうとするニル可愛いなぁ〜!
ここまでお読みくださってありがとうございました!
※更新が遅れてすみません。




