一堂バルカ城に戻る
※前回までのあらすじはユーリが説明してくれます。
こんにちは。ユーリです。
前回までのあらすじを簡単に説明すると、僕がガルシア国王陛下と戯れている折に、レクター王子に手紙をもらって、僕とヴァナルカンドとサラスィアさんは、地獄にいるニルを助けにヘルヘイムに行きました。しかしそこで見たのは思ったより元気そうなニルでして。
レクター王子とヴァレリアさんが到着するまで僕とサラスィアさんはヘルヘイムの様子を探りに行きました。
そしたらヘルヘイムが思ったより強力な瘴気を放っていて、僕は気絶してしまったのです。
先程から僕は「思ったより」という言葉を多用していますね。はは。すみません。
そして気絶から覚めた今、何やらバルカ城にいるアナスタシアさんという方が何か知っているということで、僕は再びヴァナルカンドの背に乗って、バルカ城にとんぼ返りしているのです。終わり。
『ユーリ、先程王子が謝っておったぞ。あっちこっち行かせて済まないとな』
そう言って少し不服そうに口を尖らせているのはサラスィアさん。
サラスィアさんは悪魔だろうと人間だろうと神だろうと、何にでも変身する事ができる何気にすごい能力の悪魔さんだ。
「いえ! 王子が呼んでくれなかったら、あんな貴重な体験はできませんでしたから! むしろ感謝していますよ」
『貴重な体験? まさか地獄めぐりの事か?』
「はい。サラスィアさんは元々あの地に住んでいたから、新鮮さはなかったでしょうけど、ヘルヘイムを見る事ができてよかったです。昔はきちんとした門番がいた事もわかって学びはありました」
『まぁワシも、お前の意外な一面を見られたし。久しぶりにヘルヘイムを見られたし、結果的には満足したかもしれんな。まぁ、当分あの地には行きたくないが。どれほどの時間が経っても臭くて敵わん』
「意外な一面?」
『うん? なんじゃ。覚えておらぬのか。まぁ些細な事じゃ‥‥‥。忘れるがいい』
そう言ってサラスィアさんはほんのりと頬を赤らめてヴァナルカンドの毛に顔を埋めた。
「‥‥‥? 変なサラスィアさん」
* * *
「ここへ来るのも久しいな」
いずれは戻る事になるだろう場所だと思ってはいたが、親父が王に復位した今。そうそう戻る事もないと思っていた。
俺の故郷。ここを出る事などあるわけがないと信じていたバルカ城。
「なぁヴァレリア」
「はい! 懐かしいですわ。あの高い城壁。頑丈な砦。趣味の悪い暗い色! 私はあの牢獄のような城から一刻も早く出て行きたかったのですわ」
そのお城にまた戻ってくるなんてホホホ!
ヴァレリアの言葉に思わず馬から落ちそうになった!
『わ〜ヴァーリャ! そこは正直に答えちゃダメだって! お前は一応いいところのお嬢様で、一応王子の婚約者なんだから‥‥‥』
ニルが慌ててフォローにならないフォローをしている。
「ハハッ、まぁいいさ。ようやく元の光景が帰ってきたな」
ヴァレリアの不思議発言とニルのズレたツッコミ‥‥‥。ようやく日常が帰ってきた気がして俺は満足だった。幸いと言うべきか。ニルとヴァーリャの契約も一度ヒビが入ったものの修復はしているようだ。悪魔に二人の絆が勝ったのだろう。
「ん? あれは‥‥‥」
砦の高い場所、城を三百六十度見渡せる小さな塔の上で、金髪を翻し、こちらに手を振る者がいた。
「エリーだわ! 何故お城にいるのかしら!? レクター! 早く早く、急ぎましょう」
とりあえず俺たちはエリーのいる場所へと馬を急がせた。
「エリー? どうしてバルカに? 治療を受けていたのでは?」
塔を降りてきたエリーに質問を投げかける。
「おほほほ、ご心配をおかけしましたわ王子。その小さなお方の持っていた青い薔薇のおかげで治ったのです。あのお茶の効果は絶大ですわね。私がここにいる理由ですけど、レクター王子が城に戻るというのをネフティスさんから聞いたのですわ。それでお嬢様達より先回りして待っていたのです」
『お、おう! まあな! 役に立ててよかったのじゃ//』
サラスィアが顔を真っ赤にしている。そういえばサラスィアは褒められるのが苦手だったな。
「ネフティスさんが? 何故ネフティスさんがバルカ城にレクターが戻る事をご存知なのでしょう?」
「あの方は今オシリスさんに頼まれて、高級娼館の情報屋のような事をしているのです。高級娼館は当然伯爵様のような王族に近しい方たちの御用達なので、その方たちの噂で王子がバルカ城に戻る事がわかったのです」
で、そいつらの噂がネフティスの耳に入ったと‥‥‥
「俺と親しい貴族はごくわずかだが‥‥‥?」
一応婚約者候補の女性の一族たちの親族と、親父の親戚繋がりでの公爵、侯爵、伯爵‥‥‥。遠い親戚にあたるがほとんど接触のない名前だけは知っている貴族。ああ、あとシリウスも一応そうだった。
あれ? そういえばあいつ(シリウス)今何してんだっけ?
「王子がそうお思いでも、王子の事を気にしている貴族の方はたくさんいらっしゃるのですわ」
「ほう、なるほど。せっかく元の日常を取り戻したと思ったら、こっちの方でも現実に引き戻されるとはな」
俺はそう言って思いきり顔をしかめた! 貴族は噂話が好きでまことに鬱陶しい! 俺はヴァレリアがいればそれでいいのだ。
「何はともあれ私は嬉しいわ。エリー。あなたが倒れたと聞いて、しばらく会えないと思っていたから‥‥‥」
ヴァレリアはそっとエリーの手を握った。
「何があっても、私はお嬢様の側にいますわ」
久しぶりの投稿なのに短くてすみません。
私の夏はほとんどコロナで終わりました( ;∀;)
お盆休み?そんなものはなかった!
ここまでお読みくださってありがとうございました!




