別荘での平和な一日
どうしてもイチャイチャ要素をぶっ込みたかったんや( ; ; )
「なんだこれは?」
俺はレクター。一応このバルカ王国の王子なのだが、最近親父のガルシアが国王に返り咲き、主な政務を担っているので従者が俺に早馬を寄越すこともなく、比較的穏やかに仲間たちとの冒険を楽しんでいる。今の俺の立場は実質ニートである。
てかこの自己紹介何?
今の俺はガロの領地の別荘でヴァレリアと二人きりだ。
「ドラジェというお菓子ですわ! 王子は知らないのですか?」
「俺はあまり食には興味ない。お菓子は特に」
「まぁ! ではひとつ食べさせてあげますわ! すごく美味しいからレクターにも食べていただきたいわ」
えっ食べさせて‥‥‥? 俗に言う「あーん」ってやつか? ヴァレリアがしてくれるなら喜んで食うぞ?
「ほら、レクター口を開けて? あーん」
そう言ってヴァレリア自身も口を開けて顔を近づけてくる。色とりどりのドラジェというお菓子。ヴァレリアはその中のひとつをつまんで俺の口に放り込んできた。
「‥‥‥。うまいな」
「そうでしょう!?」
本当は味はよくわからなかった。ヴァレリアが口に入れてくれたからうまいと感じたのだろう。
「エリーが私のために方々(ほうぼう)探して、やっと見つけてきてくれたのですわ。オブライエン男爵が趣味でやっているお店で、私の家の紋章を見せたら快く売ってくださったそうですよ」
紋章ってこういう時に便利ですわよねとヴァレリアが言っている。確かに紋章はそういう時に役に立つな?
「ヴァーリャ、ありがとう。お礼に俺からも受け取ってくれ」
俺はドラジェを口に挟み、それをヴァレリアの口に入れようとした!
「ちょっと! 何してるんですか? 恥ずかしいですわ」
何を今さら‥‥‥。いや今までそういう焦ったい事は何度もしてきたけど。てかヴァーリャも今したではないか!?
でもこれくらいは許されていいはずだ! 今まで何度生殺しを喰らってきたことか!
「こら、逃げるんじゃない」
俺の隣から逃げようとしているヴァーリャの手を掴んで、もう一度ドラジェを口に挟んだ。少し強引にヴァレリアの体を引いたので必然的に俺の膝の上にヴァレリアが座る体制になった。
「ん!」
口に挟んだドラジェを差し出すと、ヴァレリアの顔がぼぼぼと瞬間的に赤くなった。可愛いなあ‥‥‥
「し、仕方ないですわね//今回だけですよ!!」
あーん‥‥‥
「ちゅ!」
もちろんお菓子の口移しだけで終わらす気は毛頭ない。俺はすかさずヴァレリアの唇を奪った。
「ちょっと! レクター! んっ‥‥‥」
ハァ〜久しぶりのヴァレリアの唇ー!! 柔らかい! よし! このまま押し倒して‥‥‥
いやいや婚約しているとはいえまだ結婚してはいないんだ! 血迷うな俺。俺はレクター、この国の王子! 誰よりも紳士な男だ!
「ん‥‥‥」
口を離すとヴァレリアの瞳が少し潤んでいた。頬も紅潮し、どう見ても「そういう」シチュエーションの始まりにしか思えん!
「うっ‥‥‥」
やられた。俺が仕掛けたとはいえ、まさかこんなことになろうとは。もちろんヴァレリアは何も悪くない! これはもうヴァレリアの天性のものだな! 無意識に男を誘う‥‥‥
「すまんヴァーリャ。少し久しぶりで浮かれていたようだ」
そう言ってヴァレリアの体を慌てて離す。
ヴァレリアは変な顔をしている。当然だ、先程まで半ば強引だったのに。
「レクター? ちょっと変ですわよ? 先程まで強引だったのに、急に突き放して。私が何か気に障るような事をしましたか?」
ヴァレリアは俺の手を振り払い、何を思ったか抱きついてきた! おおおおおお前! 今の状態の俺にそれはキツイって! もう嫌このお嬢様!
「レクター‥‥‥。私以外のお嬢様ともこんな事していたの?その、お菓子を口移しとか‥‥‥。でしたら少し嫌ですわ。何故か胸がチクチクしますの。もしかして、私またヤキモチをしているのかもしれません」
ええ〜?? 今の状態でそんな事言う?! いや可愛いけども!
「俺はヴァーリャ以外にこんな事はしないよ」
夜伽の女はすぐ帰らせていたし。キスなど言語道断だった。
「ではもう一度キス、してくださいますか?」
うおおおおお〜!! こっ、このお嬢様はよぉ! 俺のこの魂の我慢を全て無に帰すつもりか?!
ヴァレリアが顔を近づけてくる。あかん! もうこれ以上は‥‥‥。そうだ!
ボフンッ!
突然音を立ててレクターは消え、代わりにウードガルザ・ロキが姿を現した。金色のツノを携え、瞳も金色。ロキは金色に光る長い翼をバサっと翻す。
『やあヴァレリア。久しぶりだな』
「ふぁ‥‥‥」
ロキとまともに目が合ってしまったヴァレリアはその神のごときオーラに当てられて、そのままロキの膝の上で気絶してしまった。
『おっと』
(レクター? どういうつもりだ??)
ヴァレリアの体を支えながらロキはレクターに聞く。心なしかその声には怒りが含まれている気がする。
「ははは、すまん。ヴァーリャが魅力的すぎてどうにも我慢できそうになかったから代わってもらった」
『レクター! そんな事ごときで私を呼ぶな!! 大体お前たちはいつまでこんなおままごとのような事をしているのだ!?』
「ま、まあまあ‥‥‥。ヴァーリャは特別なんだ。許してくれ」
『レクター、次はこんなくだらん事で私を召喚したら殺すからな』
「ははは、それはできないよ。お前の全ては俺が手綱を握っているのだ」
ロキはため息をつきながら頭を抱えた。
はぁ‥‥‥。私の前ではこんなに偉そうな態度が取れるのに。まあ確かに。このお嬢様は手強いな‥‥‥
『レクター‥‥‥。頑張れよ』
「分かってくれたか!? そうそう! ヴァーリャは一筋縄では行かないのだよ!」
それにしてもヴァレリアの誘惑から逃れるために私を召喚するとは思わなかった。
大丈夫なのか? レクターは‥‥‥
なんか色々心配なんだけど‥‥‥。とかぶつぶつ言いながらウードガルザ・ロキは消えていったのだった。
どんどんヘタレになっていく王子かわよ(笑)。くだらん事で召喚されて辟易してるロキも書けてよかった〜!性癖満載ですみません。
次回は真面目に(多分)します。
ここまでお読みくださってありがとうございました。




