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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第五章 拗れる心

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サラスィア

なんとかヴァレリアの体調を回復させたレクター。

そこへ何者かが訪ねて来た。

 コンコン!


 ノックの音? エリーか? 


 ヴァレリアの隣で寝こけていたレクターはすぐに身を起こす。ヴァレリアの方を見ると、穏やかに寝息を立てている。顔色もいい。


 もう大丈夫そうだな‥‥‥


「誰か来たみたいだ。ちょっと見てくるよ」


 ヴァレリアの頬に唇を落とし、レクターは足を玄関の方に向けた。


 エリーは動けないはずだ。俺の神のごときオーラをまともに食らったのだからな。


「誰だ?」


『あのぉ〜、ワシじゃ。サラスィアじゃ』


 サラスィア? 一人できたのか? 何故ここに? どうやって来たんだ?


『セトに言われて来たのじゃ。領主の御者と二人で。馬にはワシは小さくて乗れないからな』


 御者? ああ、あの気の弱そうな領主の用意した御者か‥‥‥


「サラスィア、まだ御者はいるか?」


『いや、ワシを置いて早々に帰ってしまった。何か相当慌てていたようだ』


 チッ、マルクスめ。何もかも知らないふりをするつもりだな。


「とにかく入れ。それにしてもよくここに俺がいるってわかったな」


『うん、セトが教えてくれたのじゃ。ニルの事も気になっておったし。むしろそっちの方が気になってゴニョゴニョ‥‥‥』


 ああ、サラスィアは知らないのか。ニルとヴァレリアの契約が消滅しかかっていて、ニルがあのヒトデと一緒にヘルヘイムに行ってしまった事を。


 そういえばサラスィアとニルは大戦の時同じ所にいたんだよな。あまりに暇すぎてサラスィアがしょっちゅうフレスベルグに悪口を言ってニルと喧嘩を仕掛けていたとか何とか‥‥‥


 まあ相手にもされてなかったようだが‥‥‥


「サラスィア、座って茶でも飲もう」


『う、うん!』


 サラスィアがキョロキョロしながら遠慮がちに入って来た。


『うわぁ、オシリスの家とか、アデルの家とは全然違うな! 暖炉もあるし、その暖炉の前に敷いてあるのは毛皮か?? 大理石のテーブルなんか初めて見たぞ! そこかしこに絵画はあるし、色の統一感も見事だ! それに何だあの豪華なシャンデリアは! なんかどことなく甘い匂いもするし、こんなのが何部屋もあるのか!? さすが王子だな』


 サラスィアは一気に(まく)したてると今度は椅子に驚いた!


『この椅子にもこだわりがあるのか! アデルの家は簡易的な今にも壊れそうな椅子がたった一つあっただけじゃ。どこもかしこも豪華じゃのう』


「ハハッ、その暖炉の配置やら大理石やらは全部従者がやってくれたのだよ。俺はそういうのをやってる暇がなかっただけさ。お茶を飲むだろう? ハーブティーを淹れたんだ。飲むといい」


『むー、なんか王子はすごいやつなはずなのに、秘密主義なせいで色々損していると思うぞ!』


「まぁな、秘密主義は幼い頃からの癖みたいなものだ。それよりサラスィアはニルがいる場所を知っているんだよな」


『ほぁ?』


 俺は簡潔にニルの現状をサラスィアに話した。


『へぇ〜! まさかそんな事になっておるとは思わなんだ! あいつが誰かを守るためにわざわざ動くとはな』


「悪魔は人間が苦しむ様を見て喜ぶイメージがあったが、今のニルは違うようだ。まるでヴァレリアの守り神のようになって来ている」


『そ、そうじゃの! ワシもアデルを守りたいし! まぁワシの場合元々悪魔としての力は弱かったからどっちつかずだけど』


 そう言ってサラスィアはお茶を飲む。うまっ、という声が聞こえた。俺は気になっていた事を(たず)ねた。


「エリーはどうしてる? まだ起きないか?」


『ずいぶん唐突じゃの。セトに青い薔薇の茶を渡したから大丈夫じゃろう。一応持って行ってたのじゃ』


「なるほど。それは良い判断をしたな」


 サラスィアの言葉を聞き、俺はほっと胸を撫で下ろす。


『で、これからどうするのじゃ? ワシはヘルヘイムへの道案内はできるぞ。なんせ何万年と住んでいたからな』


 と言って謎にドヤるサラスィア。俺はその様子を見て先程までピリついていた心が安らぐのを感じた。不思議な悪魔だ。ニルとはまた違った意味で、本当に人間が好きなんだな。先程のヒトデのような、邪悪な悪魔もいるというのに。そういえばこの「サラスィア」という名前も、ある哀れな人間の少女の名から取ったとアデルから聞いた。


 哀れな少女「サラスィア」ができなかった事を代わりにしているのか。だったら尚の事、色々な事にいちいち首を突っ込んでいるのもわかる。


 大して役にも立たないが。役に立たないのが、サラスィアのいいところなのかもしれない。


「一旦バルカ城へ早馬を派遣する」


 ヴァレリアは何者かの指示で派遣されたヒトデの悪魔が取り憑いた所為(せい)で、かなり体力を消耗していた。ニルと分離したのはある意味運がよかったかもしれない。今のヴァレリアをどこかに連れて行くのは難しい。


「あの悪魔も頭悪そうだったからな。ニルを挑発する事で頭いっぱいのようだったし」


 それにしても誰があのヒトデのような不気味な悪魔を派遣したんだ? あのヒトデはしきりに『あの方』と言っていたが‥‥‥

 ヴァナルカンドが話していたユーリの関係か? 過去を振り返ってみると、ザダクのようにユーリ関係の悪魔は不思議な形をした悪魔が多かった。


「バルカ城にいるはずの、ユーリに手紙を遣る。あいつはああ見えて一流の魔法使いだから、何か知っているかもしれない」


『ユーリ??』


 ああ、サラスィアは知らないのか。まぁ合流したあと説明すれば良いか。ユーリ関係のことを話していたらごちゃごちゃしすぎて日が暮れる。


「ニル、必ず助けに行く。ヴァーリャが回復するまで待っていてくれ」




シリアスな話が続いてそろそろ私が限界なので番外編でも挟もうと思います。

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