男装の麗人!
前回のあらすじ
ニルは病気を蔓延させている悪魔を飲み込み、そのまま地獄へ行ってしまう。一瞬でもその悪魔に取り憑かれ、瀕死状態になってしまったヴァレリアをレクターがなんとか救出。自分の吐いた血やなんやかやで汚れたヴァレリアをレクターは風呂に入れるのだった。
パシャッ!
レクターはヴァレリアを風呂に入れていた。気を失ったヴァレリアは、お湯を貯めてレクターがその身を運び、湯船に入る時も気を失ったままだった。
(こういうシチュエーション。他の男共にとっては所謂「おいしい展開」なんだろうな)
だが俺はそこらの男とは違う。もちろんヴァレリアもそこらの女性とは違う。
いや! そりゃ我慢してるのも少しだけありますよ!?
でも‥‥‥。気絶している、しかも自分が好きな女性を己れの欲望の捌け口にはするつもりもないし、そんな事ヴァレリアにしたくない。
「そういえばヴァーリャは髪が伸びたままだな」
ヴァレリアはニルと同化する時に髪が伸びていた。ルエラを助ける時にはそこまで乗り気じゃなかったのか、髪までは伸びてはいなかったが‥‥‥
「髪も洗って、体も綺麗にして」
あ、そうだ。これも付けないと。
レクターはいつのまに拾ったのか、弾かれたヴァレリアの髪飾りを持っていた。
「せっかくヴァーリャが俺のために付けてくれたのだ。もったいない。今のこの長い髪につけたら、より美しく輝くのだろうな」
ザダクに髪を切られたあと、ヴァレリアは落ち込むどころか、手間がかからなくて済むと喜んでいた。
ザダクの件がひと段落したあの時、ヴァレリアは自分でこの髪飾りを付けて来たんだよな。
ただのケルベロスの散歩に行くだけなのに。
【レクターが、お好きかなと思って】
※詳しくは第一章の「順序が色々と変!」をお読みいただければ、あーそういう感じね。てかまたこの二人こんな事やってたの? ウケる! てなると思います。
「ヴァーリャ、よく頑張ったな」
恐らくヒトデの悪魔に取り憑かれた時に、もうヴァレリアの意思は決定していたのだ。
恐らく自分はもう死ぬのだと覚悟していた。
だからあの時あんな言葉をかけたのだ‥‥‥
【レクター、私にもしもの事があったら。私以外のお嬢様と婚約し直して、幸せになってね】
そんな事は俺が許さない。
「ヴァーリャ、もっと俺を信じてくれ。ヴァーリャ無しの生活など今さら想像できんからな」
そしてもう一度、俺のために笑っておくれ‥‥‥
それからパパッと魔法を使って極力ヴァレリアの体を見ないようにタオルやら魔法やらを使ってヴァレリアの髪と体を乾かした。
ヴァレリアが着ていた冒険服は、ヴァレリアの血やらヒトデの血まみれだからな。とりあえず俺が幼少期に着ていた服を着せて‥‥‥
本当はドレスがいいんだろうが、ヴァレリアはコルセットがキツいって嫌がるからなぁ〜
「ええ?? このサイズでもブカブカなのか? うーむ。もっと小さい服じゃないとダメか? あ、でもそれだと胸が入らんな」
こういう時にエリーが居てくれたら助かるんだけど、エリーはエリーで今大変だからなぁ。俺がやっちまったんだけど。
「仕方ない。少しブカブカだが、この服を着せてっと。おお! こうして見るとヴァレリアはまるで男装の麗人だな!」
俺の栗色の髪に合わせて作った礼服。ちょっと赤味が入っていて、それがちょうどヴァレリアの緋色の髪を映えさせている。
「もういっそ男装していた方がいいんじゃないか? その方が変なやつに狙われにくそうだ。人間の男共にも。ふふっ」
レクターは洗って綺麗になったヴァレリアの桃色の頬を撫でる。
ヴァレリア、これからもお前の命は俺が守る。なんせ俺は、最強だからな‥‥‥
そう囁きながらレクターはあらかたの事を済ませて安心したのか、いつのまにかヴァレリアの隣りで眠ってしまった。
すみません今回短めでした。
レクターは各地にある自分の別荘に自分の衣服を常備しています。
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