愛してる、レクター。
いつもお読みくださってありがとうございます!
「ヴァーリャ!!」
レクターが部屋に入ると、部屋の隅でこちらに背を向けてぶるぶると震えているヴァレリアの姿が目に入った!
エリーはヴァレリアに突き飛ばされたのか、右肩を押さえてヴァレリアから離れた場所にいた。
「王子、突然お嬢様が私の肩を突き飛ばして、あのような状態に‥‥‥。接触を試みたのですが、どうもお嬢様の様子がおかしくて近寄れないのですわ」
そう言ってヴァレリアを心配そうに見るエリー。
「わかった」
それだけ言って、俺はヴァレリアの方へ足を向ける。
「来るな!」
「ヴァーリャ?」
突然大声を上げ、俺が来るのを拒むヴァレリア。顔はこちらに背を向けたままだ。表情はわからないが、小刻みにその小さな肩が震えている。
「ヴァーリャ」
バリンッ!!
俺がヴァレリアの肩に手をかけようとした時、窓ガラスが割れ、そこから勢いよくニルが入ってきた。
『グウウウウ〜!! 王子! エリー! 今の俺様とヴァーリャから、逃げろ!!』
バキッ!
そう叫んだニルはあっという間にヴァレリアの体に引っ張られ同化する! ヴァレリアの緋色の髪がニルと同化した事で急速に伸び、その衝撃で髪飾りを弾く音が部屋に響いた。
ニルと同化してドラゴンの羽根が生えたヴァレリアが、こちらをゆっくりと振り向いた。緋色の髪が燃えるように逆立ち、紫の瞳はいつもより一層ギラギラと輝いている!
『エリー、王子! 逃げろ! この村に取り憑いている悪魔が‥‥‥! 今度はヴァーリャに‥‥‥』
ヴァレリアに取り憑く気だ!!
顔を挙げたヴァレリアの紫の瞳からは大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちていた。
「レ、レクター、エリー。ニルの言う通りにした方がいい‥‥‥。どうやらこの村に取り憑いていた悪魔が、今度は私の体を使って、病気を蔓延させる気だ!」
何が目的かわからないけれど‥‥‥この悪魔の狙いは、最初から私だった! 村人から、私の仲間からヘイトを向けさせるための!
グルル‥‥‥とヴァレリアが唸る。
『今はどうにかして悪魔の暴走を抑えているところだ! だけどそれももう限界かも』
ニルが苦しそうに息を吐く。
(ああ! レクター! 私まだあなたと、やりたい事がたくさんあったのに‥‥‥! でもこのまま私がここにいると、私の周りの大切な人たちを傷つけてしまう‥‥‥レクター!)
ヴァレリアは何かを決意したように口を開いた。
「レ、レクター、私。あなたが大好きよ。こんな事になってごめんなさい。わ、私の事は‥‥‥」
私の事は忘れて、幸せになって。とは言えなかった!‥‥‥。どうしても。
【愛してるわ‥‥‥レクター】
ヴァレリアは泣きながらそう呟いた。
「!!」
その瞬間、ものすごい速さでヴァレリアは部屋から出て行った!
「うお!」
階下でセトの驚く声が聞こえてきた。エリーがその声に弾かれたように慌てて降り、俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
「レ、レクター、私。あなたが大好きよ。こんな事になってごめんなさい。わ、私の事は‥‥‥」
なんだそれ‥‥‥
こんな事になってごめんなさい? 私の事は? その続きはなんだ? 私の事は忘れて幸せになって。とでも言いたかったのか?
「そんな事できるわけがないだろ」
それに何だ? 最後のあの言葉は。ヴァレリアは俺に聞こえてないつもりだったが、ちゃんと聞こえたぞ。
【愛してるわ‥‥‥レクター】
レクターの体中から怒りの炎が沸々と湧いて、静かな青い炎がレクターを取り巻く。レーヴァテインもそうらしい。レクターに呼応し、身体中から金色のオーラを放つ。金色と青色の炎が混ざって、その姿はまるで神のようだった。
「そんなに俺が信用できないのか? ヴァーリャ‥‥‥」
俺はお前が思っている以上に、俺はお前以上に‥‥‥
「あ、降りてきた。王子、一体何が‥‥‥」
セトは思わず言葉を飲み込んだ。王子の周りを取り囲む尋常ではないオーラに一瞬たじろいだ! セクメトの時とは違うオーラが王子の身体中を纏っていた。セトは慌ててサラスィアを外に出した。
『なんじゃ?? 何があったのじゃ!?』
「シー! サラスィアお前はしばらくそこにいろ!」
(やべえ! なんか知らんが王子がめっちゃ怒ってる!)
「俺はヴァーリャのところに行く。セトはこの依頼の詳細を領主に聞け」
そう言ってレクターは適当な紙をサッと懐から取り出して何かしら書いてセトに寄越した。
「ごねるようならこれを出せ」
「お、おう。それはいいけど、王子はお嬢がどこに行ったかわかるのか?」
セトは手紙を受け取りながらやっとのことで言葉を絞り出した。
「当たり前だ。俺を誰だと思っている」
そう言ったかと思うと、王子はその場から瞬時にいなくなった。セトは隠していたサラスィアを戻した。
「ほぇ〜! エリー見たかよあの王子の顔! 俺でも震え上がったぜ。エリー?」
セトは王子の行った方を確認しながらドアを閉めた。
『ちょちょちょちょセト! エリーは大丈夫なのか?! 何か倒れているみたいだぞ!』
サラスィアの言葉にセトが振り向くと、エリーは気を失っていた。どうやら王子の圧は、普通の人間のエリーには耐えきれなかったようだ。
「エリー!!」
セトは慌てて階段を駆け上がり、ベッドに横にした。
急展開すぎてすみません。
ヴァレリア様はレクターと一緒じゃなきゃ幸せになれないんですよね。ヴァレリア様の馬鹿‥‥‥( ;∀;)
レクター何とかして。
ヴァレリア様に幸せになってほしい!
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