奇病は悪魔の仕業
いつもお読みくださってありがとうございます!
一方、ジメジメとした嫌な場所で一人もがく悪魔がいた。
『グォォォ‥‥‥もっとだ、もっと力をくれ。魔力が足りない! クソッ‥‥‥愚かな人間共め、私が完全体となれば、すぐにでも‥‥‥』
何もかもあいつのせいだ。
『ウードガルザ・ロキ。普段はレクターと言ったか? よくもザダクを。私の一部を再起不能にしてくれたな! ブエル!』
『はっ!』
ブエルと呼ばれたヒトデのような異形の者が返事をする。
『これは私の妾の人間の女に聞いた話だがな、人間は自分より、自分が好きな相手を傷つける方がよっぽど堪えるらしいぞ。お前はそういうのが得意だろう?』
『ぐへへ、はい。自分の大切にしている対象を嬲っている時の、絶望に満ちた眼差しは大変に興奮します』
ククク、我が部下ながら悪趣味な奴だ。
まずはお前の一番大切にしている対象、ヴァレリアから八つ裂きにしてやる! レクター! 己れの無力さを呪う叫びを俺に聞かせてくれ!
『ブエル、頼んだぞ』
『はい、仰せのままに』
そう言うとブエルと呼ばれた悪魔は、ヒトデのような五本の脚を器用に使って飛び立った。
ヴァレリア、ニル。そしてロキ。こいつらの正体を知るには、少々手こずった。特にあのレクター! 実に巧妙に正体を隠していたものだ。
『しかしその強固な壁も、あっさりヴァレリアという人間の小娘に破られて。すっかり骨抜きになってしまって』
おかげで隙ができた。
おまけに王子のくせにまだ城に戻らず冒険をしているのは妾の女から聞いて知っている。
『ハハハハハ、隙を見せたなレクター! その点ではヴァレリアに感謝だ! 邪魔な芽は早めに摘んだほうが良かろう! ハハハハハ!』
* * *
俺はレクター。今はセト達を先に行かせて宿の一階部分にある椅子に座っているところだ。確かに奇病の原因が悪魔だとすると話が早い。いざとなったら俺がロキに変身して倒せば良いのだから。ロキは我ながら強い。なんせ神だからな。ただ気まぐれなのが玉に瑕だが‥‥‥
村人にしか症状がないのも、おそらくこの地に根付いた悪魔のせいだろう。
でも何故? 何故病気を蔓延させるのか? 何か悪魔の気に障るような事をしたのか? ジューダの時と同じく、この村には何かあるんじゃないのか?
「なぁ奥さん、悪魔がどうとか言っていたが、率直に聞こう。この村の出身者が、何かその悪魔の気に障るような事をした覚えはあるか?」
レクターはようやく全ての窓を閉め終えた奥さんに聞く。
「ええっ?? ないですよ! ないない! 主人はだいぶ端折って説明したんでしょうけど、この村は元は何のへんてつもないどこにでもあるのどかな村だったんです! だけどある日突然この村に悪魔が取り憑いて、それから謎の奇病が流行って。まあ幸か不幸か、死人は今のところ出ていませんが」
そこまで言って、奥さんは初めて俺の目を見て言った。
「あなたはここの住民の顔を見ましたか? みんな顔色が悪く、目は虚ろだったでしょう? 死にはしないけれど、村人達は何か深刻な病に侵されているのです。何が目的かわかりませんが、悪魔はこの村ごと滅ぼすつもりなのですよ。領主様も危機感を感じていますわ。最悪この村ごと、引っ越さねばならないかもしれないし。とにかく一刻を争うのですよ」
おーヤダヤダ、と言いながら奥さんは台所に行ってしまった。
ふーっ‥‥‥俺は長く息を吐いた。
こんな小さな村に悪魔が取り憑いているなんて。
突然と言うのはその通りなんだろうな。オシリスも急な依頼だったようだし。しかも領主直々の依頼だった。
もしかして領主は最初から悪魔の仕業とわかっていたのではないか? 初めは病気がうつるのを恐れてさっさと城に帰ったのかと思ったが‥‥‥
まあ今更言っても仕方がないか。ここの領主マルクスは見るからに臆病者だし。
「それよりおかしいな。最初の違和感がずっと取れない。もしかするとこの村に取り憑いているという悪魔は‥‥‥」
「お、お嬢様!! どうなされたのですか!? お、落ち着いてください!」
「エリー?!」
階下に聞こえてきたエリーの叫び声に俺の背中を冷たいものが走った! 俺がこの村に足を踏み入れてから、ずっと感じていた違和感の正体はこれだった! 最初から悪魔の狙いはヴァレリアだったのだ!
スキドブラドニルの時といい、ヴァレリアはよく悪魔に目をつけられるな!
「クソッ! ヴァーリャ!」
よかった、まだこの場を離れていなくて! 俺は急いで二階へと上がった。
* * *
『何じゃ! ニル! どうしたのじゃ!?』
一方、ヴァレリアと契約しているニルも異常をきたしていた。
『うおおおお〜!!!! ヴァーリャーーーーッ!!!!』
ニルはそう叫んで頭を抱えたかと思うと、ぽんと音を立てて消えてしまった。
「‥‥‥ッ! ニル!」
セトが異常に気づいて宿の方に目を遣る。
「サラスィア、俺たちも一旦戻るぞ! きっとお嬢に何かあったに違いない!」
『う、セト! ニルが、ニル‥‥‥』
「大丈夫だ! 幸いお嬢のそばには王子がいるから」
クソッ、またお嬢とニルか! 毎度毎度お騒がせの二人だな!
セトは震えているサラスィアを半ば強引に肩に乗せて、宿へと急いだ。
ヒェ〜ヴァレリア様大丈夫なの??
てかブエルって誰?指示を出してる偉そうな奴誰?
ここまでお読みくださってありがとうございました。また読んでください!
励みになりますので★★★★★で応援よろしくお願いします。
ヴァレリア様大丈夫かな‥‥‥




