ミスカの村
オシリスの酒場にて久しぶりの依頼を受けたヴァレリア達。
早速、件の村に向かうのだった。
バルカ王国・アウストラシア領。
ミスカの村‥‥‥
※アウストラシア領はライヒの街の南側に位置する領土で、ガロの従兄弟マルクスの領土である。
「わぁ〜、結構長旅でしたわ! 馬車をお借りしていて正解でしたわね!」
私はヴァレリア。久しぶりの依頼を受けて、ウッキウキで冒険に胸を躍らせているの! オシリスさんによると、何やら原因不明の奇病に悩まされている村があって、その奇病の謎を解明してほしいという。
今日やっとその村に着いたところよ!
ヴァレリア達は人数が多いので馬車を二つ使っていた。途中大きな街に寄って装備や傷薬、食糧を調達し、宿に泊まり、やっとミスカの村に着いたのである。
『なぁヴァーリャ〜、今さらだけどお前熱はもうないのか? いくら原因が精神的な物だとしても、奇病が蔓延してる所に行くのは勇気がいるんじゃないのか? なんだったら馬車で待機してても良いんだぞ?』
ニルが心配そうに聞いてくる。上目遣いが可愛いわ!
「大丈夫よ! もう心配症なんだから。ニルもだいぶエリーに似てきましたわね! ははは!」
「ははは! じゃないのですわお嬢様! お嬢様が毎回毎回こちらが気を揉むような事ばかりするから必然的にそうなってしまうのです! 王子も最初こそ自分勝手だったのに‥‥‥。いやそこは変わって良かったのかしら?」
エリーは自分でも言っている事がよくわからないようだ。
「俺? 俺は変わってないぞ! ただヴァーリャは特別ってだけだ!」
「まぁレクター、嬉しいわ」
ヴァレリアがニルを谷間に挟んだまま王子に抱きついた。
『グェ〜苦しい! ヴァーリャ! ところ構わずイチャイチャするのはやめろ!』
「はいそこまで! 大体王子も王子ですよ。隙あらばお嬢様とイチャイチャイチャイチャ。いくら無敵だとしても多少の緊張感は持ってください!」
同時に怒られて慌てて体を離す二人。
『ケケケ〜! 天下の王子が怒られてやんの! ギャハハハ』
「なんだと!? ニル、最近のお前はヴァーリャと契約しているからといって調子に乗ってるな!? おい御者! 馬を止めろ! ニルに折檻をしてやる」
「まぁレクター! 折檻だなんて物騒な事やめてください! 可哀想ですわ。それにニルが傷付くと私も傷付くんですのよ?」
ヴァレリアの紫の瞳に涙の膜が張っている。うっ、そんな目をされると‥‥‥
「はぁ、もう何なんですか。毎回のごとく繰り返されるこの茶番は‥‥‥」
エリーは頭を抱えた。
* * *
しばらくすると、御者が馬を止めた。
「ここから真っ直ぐいけば村に着きます。私は馬車を停めてきますので」
そう言って御者が指した方を見ると、ミスカと書いてある看板と、村へと続く舗装された道があった。
「ご苦労。さあヴァーリャ、足元に気をつけて」
王子は先に馬車から降りて、優雅に手を差し出してヴァレリアにエスコートした。一応王子なので、こういう時には咄嗟に体が動いてしまうのだ。
「もうレクターったら!// 大袈裟なんだから!」
顔を真っ赤にしたヴァレリアが王子から目を逸らしながらもその手を取る。
(こういう時のレクター、ずるい! やっぱり王子だから手慣れてるのかな? 私以外のお嬢様にも、もしかしてこんな事をしていたのかな‥‥‥)
「? どうしたヴァーリャ」
レクターが不思議そうに私を見てる。なんか、嫌だな‥‥‥。レクターが、私以外のお嬢様にも優しく手を差し出して。
そのキラキラした笑顔を、他のお嬢様にも向けていたと考えたら。
ズキッ‥‥‥
「何なの、これは」
この胸の痛みは何かしら? ずっと取れない棘みたいに、嫌な気持ち。汚くて。真っ黒い感情で、心が支配されそう‥‥‥
そういえば前にもこんな感覚があったけど。今はもっとそれが強い。
「お嬢様、どうかされましたか?」
エリーの心配そうな声が聞こえて思わず首を横に振る。
「なんでもないのよエリー! それより早くいきましょ! あっ、セト達もきたわ」
御者が立ち去った後に、セトがサラスィアを肩ぐるましてやってきた。
『おーい! ニル! これを見るのじゃ! すっごい眺めじゃぞ!! お前も後でやってもらえ!』
セトの肩に乗ったサラスィアがぶんぶんと嬉しそうにこちらに手を振る。
『やだよ! 俺様は高所恐怖症なんだ!』
『なっ、ニルお前どこからしゃべっておるのじゃ!// 全くハレンチな奴じゃ!』
サラスィアの視線の先にはヴァレリアの胸の谷間で踏ん反りかえっているニルがいた。
すみません少し短かったですね。サラスィアちゃん可愛いな。
ここまでお読みくださってありがとうございました!!




