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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第五章 拗れる心

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今はまだそれで充分

「それで結局、お嬢様の具合は精神的なものであって、今は王子の魔法でなんとか落ち着いてるんですのね?」


 私はエリーザベト。今しがた王子の別荘に到着し、キッチンから紅茶を運んでいるところである。王子が言うにはお嬢様は呪文が効いていてしばらく起きないらしい。


「エリーが来てくれて助かったよ。一応医学の知識はあったが実践したのは初めてだったからな。結局最後の方は魔法に頼ってしまったが」


「それはそうですよ。王子が看病など聞いた事もありませんわ。何故ニーズヘッグに手伝わせなかったのですか?」


 そ、それは‥‥‥


「俺が、悪いんだ。多分、ヴァーリャを不安にさせたから」


 いや、正確にはヴァレリアの誘惑に耐えきれそうにない俺の理性が悪いんだ。


(またそんな事でジタバタしていたのですね)


 エリーは王子の言葉を聞いてため息をついた。


「‥‥‥王子。毎回毎回曖昧な事を言ってのらりくらりかわしてますが今回はダメです! お嬢様は熱を出しています。よっぽどのショックがあったに違いありませんわ。いくら婚約したとはいえ、私はお嬢様の女中である事に変わりはありません。何があったか具体的におっしゃってください!」


 王子は困ったように首の後ろを掻いた。


「何があったか、どこから話していいのか。ハハハ‥‥‥」


「王子!」


 エリーが眼光鋭くこちらを睨む! ハァ、どう説明しようか。ヴァレリアへの欲情が止められなくてつい冷たい態度をとってしまったなど‥‥‥

 まぁ今更だな。そんな事はエリーもわかっているだろうしな‥‥‥


「実は‥‥‥」


 俺が事情を話すとエリーは頭を抱えた。当然のリアクションだな。


 呆れただろうか? それとも笑うだろうか? 王子のくせに、しかも婚約しているのに。ヴァレリアを大切にしたいあまりに、逆に傷つけてしまった事を憐れむだろうか?


 だが顔を挙げたエリーから返ってきたのは予想外の返事だった!


「王子、あなたのお気持ちはよくわかりました! 明日! 私がお嬢様に直接掛け合ってみますわ!」


「ええっ?!」


 ちょちょちょちょ直接掛け合う?! えっ!? 待って待って? 今の俺の話をするのか? ヴァレリアに? 待て待て待て待てすごく恥ずかしい!! てかエリーはそういうのに対し結構前まで消極的じゃなかったか?? 男と一緒の部屋で寝るとか言語道断といってヴァレリアを説得してなかったか?? セトか? セトの影響か!?


「いや待ってくれ! 俺はすぐにそういう事をしたいわけじゃないんだ! 俺たちは婚約したとはいえまだ結婚はしていない。そういう事をするのは正式な結婚をしてからだろう。それにまだヴァレリアは16歳だ!いくら体付きが大人でも(特に胸ら辺が)」


 それにヴァレリアは最近まで俺の事を大人の男だと知らなかった! まぁそれもよく考えたら変な話だが‥‥‥。相手はなんせヴァレリアだからな? ヴァレリアの性格的に少しもおかしくない話だ。


「一つひとつ段階を踏んで教えてやりたいのだ。ヴァレリアは世間を知らなすぎる。それはエリーもわかっているはずだ」


 おまけに命知らずで何度も俺の話を無視して、その度にどれほどヒヤヒヤさせられた事か‥‥‥


「でも、その度にお嬢様が悩んで苦しむのを見るのは心苦しいですわ。それに王子が冒険についてきている時点で正式も何も‥‥‥。ついでにお嬢様が易々と『正式な結婚』を受け入れるかどうかわかりませんわ。ただの結婚ならまだしも、一国の王子の結婚となると話が違ってきますわ。王子との結婚は国の一大行事ですもの。自由奔放で、何ものにも捕らわれないお嬢様が今更するとは思えませんわ。それは王子もご存知のはず」


 ああそうか‥‥‥。エリーは知らないのだな。魔剣に選ばれた俺は俺の意志とは関係なく国王になる事を。

 てかやはり正式な結婚うんぬんはヴァーリャの性格的にそうだよね!? 泣


 ではどうすればいいのだ??


「駆け落ちしてもいいと思いますけどね私は。ガルシア様もまだお若いし、それに今ガルシア様にはフランシス様という心強い側近がいますわ(ユーリともいうけれども)」


 駆け落ち????


「うーむ、考えた事もなかった‥‥‥」


 駆け落ちか‥‥‥。レーヴァテインに相談したらなんとかなるかもしれないが。そういえばレーヴァテインが俺の魔剣でよかったな。あいつは魔剣の中でも適当だからな。話せばワンチャンわかってくれるかも‥‥‥


 いや今はそんな事より!


「とにかくヴァレリアに話すのはダメだ! しばらく黙っていてくれ。もしヴァレリアに話をするのなら。‥‥‥俺はヴァレリアが好きだ。愛してる。だから不安になる事はないと伝えてくれ」


 それに何より恥ずかしいしな!


「私はもうあれこれ考えても仕方ないと思いますけどね。セトのように王位を放棄すれば良いのに。そうしたら楽になりますよ」


 とか何とかエリーが言ってくる。てかエリーはセトに似てきたな! 言動がだいぶ適当になってきてやがる! 


 だからぁ〜! 魔剣を継承した俺はセトのようにおいそれと王位を放棄できないの! それにセトには兄弟がたくさんいたからそれも可能だったわけで‥‥‥

 俺にも一応ハンニバルがいるけども! あいつは魔剣に選ばれなかったし。


 その後も話し合いは平行線で、結局ヴァレリアが寂しい時に俺が添い寝をすることに落ち着いた。


 恐らくヴァレリアには、今はまだそういう事で充分なのだ。



私もそう思います。今はまだ添い寝くらいでいいのですよヴァレリア様は。

自由奔放で周りを振り回すヴァレリアお嬢様!そしてどんどんヘタレになっていく王子!いいぞもっとやr()

でも王子の言う通りエリーはだいぶ変わりましたね。これは完全にセトの影響ですね。笑

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