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ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第四章 新しい仲間

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番外編・レクターの苦悩

この話は特に意味がないです。時間軸は多分アデルたちの諸々が解決した後だと思います。

ただの王子のボヤキ(独り言)です。

 俺はレクター。一応バルカ王国の王子である。


 王子なのだが、最近よくわからなくなってきた。俺は王子でありヴァレリアの婚約者だ。いずれ結婚して、当然のごとくヴァレリアは王妃として隣に居てくれるものだと思い込んでいた。


 思いこんでいたのだが、先日俺の婚約者のヴァレリアに。


【私が王妃になるかならないかは私が決めますわ! ねぇレクター?】


 という事を聞かされたのだ。マジでそんな事ある? 一応これ中世とかその辺の時間軸を舞台にした物語だよね? 中世のしかも王国でそんな事ありえないんだけど? いや時代問わず通常ではあり得ないんだけど?


 ‥‥‥。いやそんな事はどうでもいいんだ! ヴァレリアがもし仮に俺と結婚後も冒険をしたいと言い出したら? 俺が王子でなくていずれ国王になった時にまだ冒険をしたいと言ってきたら?


 遠距離恋愛?‥‥‥。になるのか?


 これ結婚の意味なくね?


「何とかせねば‥‥‥。でもヴァーリャの近くにはいつもエリーやらニーズがいるしな」


 ヴァレリアと俺が二人きりになりたい時、大抵の場合エリーは察してどこかへ行ってくれるのだが、問題はニーズだ。ニーズはヴァレリアと契約してるから、滅多な事では離れない。


 ニーズの機嫌がいい時にしか離れない。


「いっそのこと直談判してみようかな」


 そういえばニーズはウードガルザを恐れていたな‥‥‥。あの姿で直談判してヴァレリアと二人きりになって‥‥‥


 二人きりになって、ちゃんとヴァレリアと話そう。

 そういえばここのところセクメトやらアデルやらダルヒルデやらに邪魔されて、二人きりになれなかったような気がするからな! いや。雪遊びをしたりはしたけど、ちゃんと会話したのはもうずっと前だった気がする。


 俺ってこんなキャラだったっけ?


 前にもニーズヘッグに言われた。王子はもっと強引で、相手のことを考えずに行動して、自己中でわがままだったと‥‥‥


 確かにそれは俺も自覚はあった。俺は幼い頃から何でもできたから、少々わがままをしても、傍若無人に振る舞っても許されてきた。でもヴァレリアに会い、ヴァレリアの様子を見ているうちに俺も少しずつ変わっていった。今は、他の奴らはどうでも、ヴァレリアを傷つけたく無いという気持ちの方が強い。


「ヴァーリャ‥‥‥」


 俺はヴァレリアの寝室に入った。ヴァレリアは寝ていた。その頬をさすりながら名前を呼ぶ。どうやらニーズはいないようだ。


 よっしゃ! これならわざわざウードガルザにならずともよい!


「うーん、レクター‥‥‥」


「‥‥‥ッ//!」


 ヴァレリアは俺の手に頬擦りしながら俺の名を呼んだ。


「いや、お前それは反則だろ」


 今日俺がヴァレリアの寝室に来たのは‥‥‥。ヴァレリアと話をするためだったが。


 ヴァレリアの寝顔を覗き込む。白く透き通るような陶器肌に、黒くて長いまつ毛に覆われて、今は塞がっている目元。そして‥‥‥


 俺はヴァレリアの唇に目を向ける。


 なんと、愛らしくて魅惑的な唇だッ!!


 これはもう我慢ならんな? こんなけしからん胸と唇を前にして我慢できる男がいるか? ヴァレリアが誘ったんだよな!? ヴァレリアが悪いんだよなぁ!?!?


「ヴァーリャ!」


 俺はたまらなくなって貪るようにヴァレリアの唇を奪った! 久しぶりのこの感覚! なんと柔らかい!


 ヴァレリアは起きない。


「ヴァーリャ、起きろ。お前が起きないのならもっとすごい事をするぞ」


「うぅ〜ん、レクター‥‥‥。そのパンはニーズにあげてくださいな」


「ぶはっ、なんだそりゃ」


 愛しい愛しい俺のヴァレリア。


 俺はヴァレリアの顔中に唇を落とす。


「はぁ、甘いなぁ。俺も」


 参った。キス以上の事をしてやろうと思ったのに、幸せそうに眠るヴァレリアの顔を見ていると手が出せない。俺はベッドの端に腰掛けて項垂れた。


 俺はこんなヘタレだったか? いやヴァレリアが特別なんだ!


「レクター?」


 いつのまにかヴァレリアは起きていた。紫の双眸(そうぼう)が驚いたように大きく見開いて何度か瞬きを繰り返していた。俺がいる事に驚いたのだろう。


「ん? どうしたヴァーリャ」


「うん、何かとても素敵な夢を見ていたの。レクターがいて、私はレクターが見守っている中で狩りをしているの‥‥‥」


 言いかけてヴァレリアは俺にキスをしてきた。不意打ちのキス。やめろよ! 俺がせっかく諸々我慢してるのに。俺は素早くヴァレリアの手を取るとその顔を俺に引き寄せた。途端に真っ赤になるヴァレリアの顔。


「ヴァーリャ、お前は俺がもし国王になったらどうする?」


「レレレレクター!// ちちちち近いですわ! 胸板が! 心臓の鼓動が聞こえますわ!」


 その言葉を聞き、俺はベッドにヴァレリアを優しく押し倒し両腕を布団に縫い付ける。


「ぎゃー! レクター! その麗しい筋肉と鎖骨を見せないでください! 目をどこにやったらいいのか困りますわ!」


 ヴァレリアはそう言って目に涙を浮かべて顔を真っ赤にして小刻みに震えている。いちいちリアクションが可愛いな。もっと困らせたいな。


 もっと困らせて。

 ずぶずぶに甘やかして。

 俺なしでは生きていけないようにしたら、ヴァレリアは側にいてくれるのか?


「どうなんだ? ヴァーリャ」


「なななな何がですか? それより大変ですレクター! 私の心臓がドキドキして張り裂けそうですわ! ほら!」


 そう言って俺の腕を無理矢理ひっぺがしてとったかと思うと、ヴァレリアはその豊満な胸に俺の手を当てがった!


 むぎゅ!


「おわー! なななな何をしているのだお前は!?」


「だって私の心臓がこれ以上ないってくらいドキドキしてるんですもの! レクターにそれをわかっていただきたくて!」


 いや知ってるよ! ヴァレリアはこないだ自覚したばっかりで色々と初めてだから知ってるよ!


 だがそれは俺が我慢が効かなくなってドキドキするからマジでやめてくれ!


「ヴァーリャ、わかったわかった。だから俺の手を離してくれ‥‥‥。わぶっ!」


 ボヨヨン!


 今度は俺の顔をその谷間に押し付けてきた! さっきから何をやっているのだこのお嬢様は!? 怒

 なんかもう腹たってきたな!?


「もうレクター! その整った顔で見つめないでください! 胸がドキドキしすぎて死んでしまいますわ!」


 いや、死にそうなのは俺の方なんだが!? ああでも柔らかい‥‥‥。幸せ。ニーズヘッグはいつもこんな天国みたいな場所で眠ってるのかよ!


 イライラムラムラ!


「ぷは! ヴァーリャ! いい加減にしろ、もう限界だ! 俺の気も知らないで好き勝手にしやがって‥‥‥!」


「?? レクター? どうしたんですか? すごく怖い顔になっ」


 俺はヴァレリアのうるさい口を唇で塞ぐ。もう構うものか! 散々俺を煽ったヴァレリアが悪い!


 俺が一線を越えようとヴァレリアの衣服に手をかけた時‥‥‥


 バタンと寝室のドアが開けられ、顔に般若の面をつけたエリーが仁王立ちしていた。


「おおおお王子! お嬢様に何を‥‥‥」


「はっ、エリーこれは違うんだ! そう見えるだろうがこれは断じて違う! さっきまで俺はずっと我慢していて、ヴァレリアが」


 俺は咄嗟のことで意味不明な言い訳をしていた。いや恋人同士なんだから本来ならあるべき姿なんだろうけど! なんたって相手はヴァレリアだからな?


 エリーから見たら今の構図はさぞ最悪に映ったことだろう。涙目のヴァレリアに覆い被さる俺! どう見ても俺が無理矢理ヴァレリアを襲っているシチュエーションじゃねぇか本当にありがとうございました!!


「エリー怒らないでこれは違うの! 私がレクターを怒らせるような事をしちゃって。それでなぜかレクターが怒っちゃって!」


 なぜか怒っちゃって! じゃねぇよ!


 もおお本当ヤダこのお嬢様!!!!


 エリーは何かを察したのか先程までの般若が打って変わって、こちらに哀れみの目を向けてきた。やめろ! そんな目で見るな! さっきまでの般若の方がまだマシだ!


「いや、すまなかったヴァーリャ。怒ったわけじゃないんだ。お前があまりに可愛いかったから、つい」


「レクター」


 そう言って俺が離れようとするのを引き止め、裾をクイクイと引っ張る。


「レクター、抱きしめて」


 おんんんん!!!! こっ、このお嬢様はぁぁ!!!! もうヤダ!!!!(二回目)



 ※結局レクターは聞きたいことを一つも聞けなかったようです。



ガハハハハ!情けないのぉ〜っていうサラスィアの声が聞こえてきそうですね。ヴァレリア様が強すぎる。

ヘタレ男×気の強い女って好きです(難儀な性癖)

ヴァレリア様の場合、気の強い女性というより無意識でやっているのがタチが悪いというか‥‥‥王子頑張れ(笑)


ここまでお読みくださってありがとうございました。



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