アデルの家にて
ルエラ救出のためにアデルは自分の家に向かう。
当然のようにヴァレリアと王子がついてきた。
アデルの家は村のはずれにあった。
貧乏だとアデルが自分でいうだけあってボロい家だった。
「まぁ〜! オシリスさんの家よりもおんぼろですわ! 干し草の屋根なんて初めて見ますわ!」
ヴァレリアが開口一番感動しているのか馬鹿にしているのか意味不明な言葉を放つ。
『ヴァーリャ!!』
ニーズが慌ててヴァレリアを諌める。
「なんですの? 可愛いお家じゃないですか?」
『ひぇ〜これだから世間知らずのお嬢様は‥‥‥。一応この国の次期王妃になるんだからさ、こんな暮らしをしてる人も居るんだって覚えとかな! クーデター起こされるぞ知らんけど』
「まぁニーズヘッグ! 勝手に決めないでください! 私が王妃になるかならないかは私が決めますわ! ねぇレクター?」
「えっ? そ、そうなのか?!」
てっきり結婚すれば王妃になると思い込んでいたレクターはヴァレリアの突然の言葉に驚いた。
「ええ! そうですよ! それは例え私がレクターと結婚しても変わらないですわ。結婚が自分にとっての幸せではないですから。レクターはレクターで国王として政務でも何でもすれば良いですけど、私はお城の生活は退屈ですので。結婚してもそれは変わらないですわ!」
ええ〜‥‥‥。そんな事ある? レクターは頭を抱えた。
『ぶはは! 諦めるんだな王子! ヴァーリャがただ粛々(しゅくしゅく)と王妃の座に甘んじる性格じゃない事は知ってただろ?』
「知っていたが‥‥‥。ヴァーリャが結婚してもなおこの生活を続けるつもりなら俺も‥‥‥」
『その辺は知らんぞ! 現国王と話し合って決めてくれ! 俺様は関係ないからな? 俺様が一番大事なのはヴァーリャだからな』
ニーズヘッグが顔の前で両腕でバッテンを作って言う!
「お、俺だってヴァーリャが一番大事だ!(親父はいつのまに現国王になっていた??)」
『大体王子はレーヴァテインに選ばれてんじゃないのか? ヴァーリャとは時々会うくらいで良いじゃないのか?』
「ニーズヘッグお前関係ないからって好きに言いやがって!!」
『へへ〜ん、その点俺様はヴァーリャがどこに行っても側に居れるからなぁ、王子ザマァ!!』
ニーズヘッグとレクターがギャーギャーと言い合っている様子をアデルが口をポカンと開けて見ていた。
なんと‥‥‥。このレクター王子は、王子なのに国王にならないおつもりか? え? 何故? ヴァレリアさんの方が国より大事だから? か?
『なんじゃ騒がしい奴らじゃのう。この音量じゃ家の者に気付かれてしまうではないか。ただでさえおんぼろ屋敷なのに』
サラスィアはズケズケと本当の事を言う。
『大体なんでこいつらはついて来たのじゃ?』
サラスィアの言葉を聞き、ニーズヘッグが口を開く。
『だってお前は攻撃魔法なんか使えないし小さいし、いざという時にアデルを守れないだろ? 俺様と王子たちがついて来たのはアデルの護衛と、アデルのおかしくなった父親からルエラを守るためだ。アデル!』
「は、はい!」
アデルは急に呼ばれて背筋を伸ばした!
『一応確認するが、お前の父親がこちらに危害を加えそうになったらその時は。お前の父親をやっても良いんだよな!?』
おおん? とアデルの顔面ギリギリまで迫るニーズヘッグ。
アデルは一瞬黙り、いつぞやのレクターの言葉を思い出していた。
【アデル、お前は不幸な一族の元に生まれたが。これからは自分の意思で生きていける。今が忌々しい毒親から離れるチャンスだと俺は思う。まずはルエラにその薔薇を与えて考えよう。大丈夫、みんな味方だ】
今が毒親から離れるチャンス‥‥‥。みんな味方‥‥‥
狂ってしまった父アーサー。
痩せ細って今にも死にそうなルエラ。
ルエラの幼い頃にそっくりなサラスィア。
【生まれてきちゃ、いけなかった。望まれてなんか‥‥‥いなかった】
瞬間、アデルの血のように赤い目が怒りに燃えているように見えた。その片目にはもう迷いはない。
「ああ、邪魔してくるようなら‥‥‥。遠慮なく殺してくれ!」
もうあの男は父などではない。人間ではない。いざとなったら俺がこの手で‥‥‥!
アデルは決意した。
「この家には貧乏ながらもルエラのお手伝いをする気のいいおばさんがいたのだが、時々お水を変えにルエラの部屋を出て行く時があるんだ。その隙を狙う。ルエラの部屋は二階の日の当たらない場所だ。俺がルエラを奪取するから」
アデルはそこで一区切り置いて頭を垂れた。
「俺とルエラが狂った父に襲われそうになった時は、頼む!」
『ははは! 当たり前じゃないか!
サラスィアは胸を張ってアデルの家に入ろうとしたがヴァレリアに阻止された!
「あら! あなたは私と一緒に外から監視役よ! あなたは小さいし攻撃魔法も使えないのでしょう? ここで待っていましょう。いざとなったらおとりにでもなって邪魔しましょう!」
「ヴァーリャ! 怒」
ヴァレリアのその言葉にレクターが怒る。おとりになる? 馬鹿じゃないのかこのお嬢様は!? それで何度も危険な目に遭ったことを忘れたのか?
「レクター、大丈夫ですよ! 私にはニーズヘッグがいますから!」
そう言ったと同時にヴァレリアは変身してドラゴンの羽根を翻した!
「どうですか? これで文句はないでしょう。大丈夫です。私もニーズヘッグからアデルのお父様の話を聞いて、多少なりとも怒っていますから。いつでも臨戦体制ですわよ」
「でもお前の魔法は自分も傷付く魔法ばかりじゃないか」
「そればかりではないですわよ。シリウスを治した時のような魔法も使えますから! とにかくレクターはアデルを守ってくださいね」
『俺様は狂った人間が一番怖いと思ってるからいざとなったらヴァーリャを守る方に全振りするぜ!』
ヴァレリアに同化しているニーズヘッグが言う。
全振りというのは、ヴァレリアの意思とは別に、アーサーを殺すということだ。そんなことができるのだろうか?
「おばさんが出てきた! 今がチャンスです! 王子!」
アデルの片目が、勝手口から出てくるおばさんの姿をとらえた。
「アデル心配するな、お前の背中は俺が守る。お前はルエラを救ってやってくれ」
ルエラ‥‥‥
待っていてくれ!
お久しぶりですー!
完全に自業自得なんですが色々あって疲れてぶっ倒れてました。汗
ブクマしてくれてる方、読んでくれている方本当にありがとうございます!嬉しい泣
ぼちぼち更新していきます!
ここまでお読みくださってありがとうございました。




