表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴァレリアとアナスタシア  作者: 杉野仁美
第四章 新しい仲間
203/269

着いてきたサラスィア

青い薔薇を無事にとることができた一同は山を降り、各々の疲れを癒しにオシリスの酒場に寄るのだった。アデルは一緒についてきたサラスィアに話しかける。

 山を降り、酒場に着いた途端、エリーは青い薔薇を抱きしめてトゲだらけのアデルを治し、矢継ぎ早にセトとセクメトの話をしだした。


「セクメトは一度ぐずったらギャン泣きして私じゃないと手に負えませんの。幸い今は泣き声が聞こえないから寝ているんでしょうけど」


 セクメトがぐずっていないか心配しているエリーはアデルから青い薔薇を奪うようにして片手に持った!


「セクメトの様子を見るついでにこの青い薔薇を煎じてきますわ!」


 エリーはそう言って慌ただしくバタバタと階段を登って行った。


 レクターはオシリスに酒を注文し、アデルにも同じ物を注文していた。


 アデルは小声で礼を言った。


「お疲れ様でした。王子、アデル。今日は俺の奢りだ。好きなだけ飲んで行ってくれ」


 オシリスの言葉にアデルは目を丸くした。なんて親切なんだ。


「あ、ありがとう‥‥‥」


「ハハッ、そんなに恐縮しなくて良いよ。目的の青い薔薇を無事に採れてよかったな」


 オシリスの言葉を受けて、レクターが口を開く。


「俺たちは何もしてないよ。ニーズヘッグの知り合いの悪魔がいたくらいで特に争うこともなかったからな」


 レクターはなぁ、とアデルに同意を求めながら言う。


「そうですね。ドラゴンの(かた)には感謝してもしきれないですよ」


 アデルはそう言って微笑んだ。レクターはグラスを置き、真面目な顔をしてアデルを見た。


「アデル、お前は不幸な一族の元に生まれたが‥‥‥。これからは自分の意思で生きていける。今が忌々しい毒親から離れるチャンスだと俺は思う。まずはルエラにその薔薇を与えて考えよう。大丈夫、みんな味方だ」


 みんな味方‥‥‥


 それは暗にアデルを仲間として迎える準備はできていると言う事だった。アデルの過去を聞き、ヴァレリアの話を聞き。この孤独な男を放ってはおけないと、ヴァレリアはじめ誰もが思っていた。もちろんレクターも。


「はい。レクター王子‥‥‥。ありがとうございます」


「お前はそうして笑っていた方がいいよ。さすが女神の血族なだけあってなかなかのイケメンだ(俺ほどじゃないけど)」


 そのようにして各々が疲れを癒やしている時、ニーズヘッグが大声をあげた。ヴァレリアの腰にはいつのまにかサラスィアが引っ付いていた。 


『お前なんでついてきてんだよ!!』


「あら? あなた着いてきてましたの? 小さくて気づきませんでしたわ」


 ヴァレリアがクスクスと呑気に笑いながら言う。


「ヴァーリャ! 笑ってる場合じゃないぞ! こいつは悪魔なの! 食われるぞ!」


 サラスィアはヴァレリアの後ろに隠れてモジモジしている。


『お、お前が言ったのじゃ! もう罠にかけて人間を食うなどと悪趣味な事はするなと! そ、それにワシは元々あまり人間の血肉は好きじゃなかったのじゃ! あの地に食う物がなかったから仕方なく食ろうとったのじゃ!』


 ニーズヘッグが呆れたようにため息をついた。


『はぁ〜、だからってお前‥‥‥。まあいいや、俺様は疲れたから寝る! ヴァーリャもとりあえず寝ようぜ〜! 寒いとそれだけで体力を奪うからな』


「そうですわね! 特にニーズヘッグは今回大活躍でしたから、疲れたのも分かるわ。なんか言われてみれば私も眠くなってきましたし。サラスィア、また後ほど話を聞きますわ」


 ヴァレリアとニーズヘッグは仮眠を取るために二階へあがろうとした。


『あ! まっ、待つのじゃ!!』


「大丈夫ですよ。あなたもニーズのように何かしら事情があるのでしょう? 決して見捨てたりはしませんわ。それとも私と一緒に寝ますか?」


『それは俺様が嫌だ!』


 ニーズヘッグが慌てて叫ぶ!


『わっ、ワシだって嫌じゃ!』


「そう? 気が変わったらいつでもいらっしゃいね」


『ばっ、馬鹿にするでないのじゃ! これでもお前よりすごく長生きしてきたのじゃ。ワシは自分の意思でここに来たのじゃ! 自分の事は自分でなんとかする!』


 それを聞いてヴァレリアはふふっと微笑むと、ニーズヘッグと一緒に今度こそ上に上がってしまった。


 ポツン‥‥‥


 むむ! 見栄張って啖呵(たんか)を切ったはいいが、長い間雪山にいたせいで何をすればいいかわからん!!


 ふと、何気なく横を見るとアデルと目が合った!


 しもうた! あの男は確か‥‥‥。病気の妹のために青い薔薇を取りに来た男じゃ! 山を降りる途中に聞いた! さぞワシの事を恨んでいる事じゃろう!


「サラスィア、一人ぼっちになったのか? こっちへおいで」


 ヒェヒェ! アデルが呼んでるじゃんよ! 何をする気じゃ?! こ、このワシを殴るのか!?


「‥‥‥。心配しないで。何もしないよ」


「ほほほ本当か!?」


 その様子を見ていたレクターは何も言わず、スマートにカウンターに金を置いてヴァレリアとニーズがいる二階へと向かった。


「サラスィア、少し話をしよう」



短かったですねすみません!レクタースマートすぎワロタ。

さてアデルは先程まで敵だったサラスィアに何を言うのか?!


ここまでお読みくださってありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ