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鉄火の魔女王  作者: 8D
アルカ国革命編
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九話 新たな魔女

「こいつは確か、ビルリィの……」

「はい。神学者達を束ねていた人間です。そして、殲滅兵団の装備や魔女の拷問具を開発していた女性……」


 言って、エルネストは強く拳を握りしめた。


「どうしてここにいる?」

「私はアルカ国王都の支部で彼女と戦いました」

「その時の事は聞いている。死に掛けたらしいな」

「厳密には、一度死んだらしいですけれどね。私は意識がありませんでしたが、駆けつけた仲間が彼女を捕縛したんです」


 カオルコは改めてフォリオを見る。


 服とも呼べないような麻布あさぬのを着た彼女。

 手枷で両手を拘束されたその体の所々には生々しい傷が見える。


 拷問の痕だ。


「よく、クローフがこんな仕打ちを許したな」

「許しませんでしたよ」

「どういう事だ?」

「当初、彼女は一部の仲間が隠れて監禁していたんです。発覚するまでの間、彼女は凄惨な拷問を受けていました。彼女の体に残る傷は、その時の物……」

「そのわりに、傷が新しいようだがな」


 エルネストは溜息を吐く。


「彼女には危害を加えないよう言っているのですが……。今でも、目を盗んで彼女を痛めつけようと考える人間は尽きません」


 それだけ、魔女達が彼女へ懐く恨みは深いのだろう。

 魔女達には、裁定場で受けた拷問の記憶がある。

 その怨嗟は、今も強いのだ。


「拷問器具や、殲滅兵団の装備を考え出したのもこいつだという話だったな。確かにこいつなら条件に一致している、か……」


 カオルコはフォリオを見る。


 彼女はそんなカオルコの視線に、不敵な笑みを返す。

 自分の身に起こる事を一切気にしていないかのようだ。


「初めて見る顔だ」


 フォリオは口を開く。


「カオルコだ」

「ふぅん。初めまして。フォリオだ」


 挨拶を交し合う。


「単刀直入に言おう。お前、私達の仲間になる気はあるか?」


 カオルコが問うと、フォリオは目を細める。


「どういう風の吹き回しかな?」

「私達は今、お前の技術を欲している」


 カオルコは、肩にかけていたARKを見せる。

 フォリオはそれを見て目を輝かせた。


「これは特別製だが……。お前は、こういう武器と同じ物を作れと言われれば作れるか?」

「素晴しい」


 フォリオは笑った。


「僕はね、今まで守ってきたんだ。片目を抉られても、足の指を潰されても、この両手の指だけは……」


 言って差し出されたフォリオの両手。

 枷に繋がれた両手の指は、ボロボロになった他の体の部位と比べてとても綺麗だった。

 無傷と言ってもいいだろう。


「それはまた、こうして何かを作る機会を得たいと思っていたからだよ。また、私の内にある知識を動員して、あらゆる品を作り出したいと思っていたからだよ」

「作れるのか作れないのか。どっちだ?」


 要領を得ない言葉に、カオルコは強い口調を向ける。


「無論、一度バラさせて貰えば作れるし、原理も理解できる。そうなれば、一から新しい物だって作ってみせるよ。今よりもずっと性能良く、ね」

「仲間になるつもりは?」

「あるとも」


 あまりにもあっさりとした返事にカオルコは不審がる。


「ビルリィと敵対する事になっても、か?」

「むしろ大歓迎だよ。神様からはもう多くの事を学ばせてもらった。だから次は、魔女から学ばせてもらうのもいいと思うんだよ。僕は、ね」


 どうやら、こいつは他のビルリィ教の信者とは違うようだ。

 他の連中は、もっと妄信的、狂信的に神を信じていた。


 でもこいつにとって、神も自分の知識を満たすだけの道具でしかなかったらしい。


 だが、そんなこの国にとって異端の考えを持つ彼女は、むしろ魔女に近いのかもしれない。


「わかった。エルネスト。鍵を開けてくれ」

「……はい」


 エルネストは少し悩んだ素振りを見せ、鍵を取り出した。


 フォリオの力が必要だと思いながら、彼女自身フォリオに対して思う所があるのだろう。

 抵抗を覚えているのかもしれない。


 鍵が開かれる。

 カオルコとエルネストは牢の中へ入った。


「これからは、お前も魔女だ。ようこそ、魔女の巣へ」


 カオルコは右手をフォリオに差し出す。


「ありがとう」


 フォリオは、その手を枷に繋がれた両手で握った。


 こうしてここに、新たな魔女が誕生した。

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