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鉄火の魔女王  作者: 8D
アルカ国革命編
37/46

七話 金がない!

 ミスを修正致しました。

「なぁドクター、参考までに聞かせて欲しいんだが」

「何だ?」

「父さんはどこから資金を得ていたんだ?」

「ふふ」

「何だ? 何かおかしい事を言ったか?」

「こんな状況だからだろうが、ようやくそこに興味を持つようになったんだな。と思ってな。銃弾の値段を気にせず、容赦なくばら撒いていた子供が。と思うと少し感慨深い」


 カオルコはばつが悪そうに顔をそらした。


「うるさいなぁ。私はあくまでも戦士だったんだ」

「今は違うと?」

「……いいや、変わらない。ただ、やらなくちゃならない事が増えただけだ」

「そうだな」


 クローフは再び笑う。

 その様子が気に食わず、カオルコは顔を少し顰めた。


「あの頃は頭を使わない分、戦いでは結果を出してた」

「ふっ、そうだな。だが、今のお前を見ればあいつも喜ぶだろうな」

「いいから! 父さんはどこから資金を得ていたんだ?」

「出資者から受け取っていた」

「出資者がいたのか?」

「ああ。あの国をどうにかしたいという人間は少なくなかったからな。まぁ、それぞれ思惑は違ったのだろうが」

「金だけ出して、戦わせていた奴らがいるって事なのか?」


 カオルコは顔を顰める。


「そう言うな。実際に現地へ行くわけではないが、彼らもまた戦っていた。出資するという形でな。だからこそ、俺達は戦う事ができていたんだ」

「……そうだな。資金は重要だからな。今は特にわかる」


 納得していない様子だったが、カオルコはそう返した。


「他には、ガス田を発見したのも大きい」

「ガス田?」

「ああ。ジャングルの中で見つけて……。施設が基地にあったろう?」

「あのよくわからない建物か?」

「お前は、本当に戦い以外に目がいってなかったんだな」

「先を続けろ」


 低い声で言うカオルコにクローフは苦笑する。


「あのガス田から出たガスを売って資金に当てていた。あれがあったから、長期の間戦えていたような物だ」

「そうなのか。ここらにあると思うか?」

「さぁな。だが、あったとしても資金にするのは難しいと思うぞ」

「どうして?」

「この世界の人間がガスの価値を理解していると思うか?」


 カオルコは納得した。

 この世界の町などを見てみたが、ガスを活用できるだけの科学力はなさそうだった。


「需要がなければ物は売れない」

「じゃあダメだな」


 言って、カオルコは溜息を吐いた。


「なら後は、麻薬の栽培ぐらいか?」

「それはやめろ。お前の親父は、どんなに資金繰りが厳しくてもそれに手を出さなかった」

「わかってるよ。冗談だ。それだけは、父さんに何度も言われていた事だからな」

「そうか。……だが、何かを栽培するというのは視野に入れてもいいかもしれないな」

「たとえば?」

「そうだなぁ。個人的には、煙草を栽培したい」

「麻薬みたいなもんじゃないか」

「一度、北の港町へ行ってみるのもいいかもしれないな。あそこなら、こっちで出回っていない珍しい作物なんかを見つけられるかもしれん。あとは……最悪、銃を売るか」


 クローフの提案に、カオルコは顔を顰める。


「相手の戦力が増強されるんじゃないか?」

「アルカ国に売るわけじゃない。海の向こうへ輸出するんだ。この世界において、銃は人も魔女も等しく容易に殺せる超兵器だ。一丁だけでもかなりの値がつく」

「そうだな。確かに今は、銃を持て余しているからな」

「たとえ、銃器が不足しても作ればいいからな」

「作れるのか?」


 カオルコは問い返し、クローフが頷く。


「不可能じゃないはずだ」

「この一帯でも、鉄と木はふんだんにあるからな。その二つを主な素材として、構造も比較的単純。何より、製造も簡単に行える銃があるだろう?」


 クローフの説明にカオルコは目を輝かせた。


「AKか……!」


 クローフは肯定の意味を込めてにやりと笑う。


「不足した素材もいくつかあるだろうが、ないならないで手を加えれば作れない事はないはずだ」

「そうか……」

「ただ、今の所設備の一切がない。それらを作る事にもなるから、時間はかかるだろう。ここの魔女達に金属加工の知識を持った奴はいないから、設備の完成にも莫大な時間を要するだろうな」

「じゃあ、手を出すなら早い方がいいって事だな?」

「そうだな」

「なら、今優先するのは金策と銃の製造。それでいいか?」

「今の所はな」


 そこで、クローフは深く溜息を吐いた。


「正直に言うと、他国とはいえ銃の技術を拡散する事には抵抗があるんだがな」

「どうして?」

「これから先、銃の力が今よりさらに多くの命をこの世界から奪うのではないか、それが心配なんだ。銃が蔓延るようになってしまったこの世界がどうなるのか、それが心配なんだ」

「……気にするような事か? どんな武器を持っても、人間のやる事なんて変わらない。武器が変わったとしても殺す方法が効率的になるだけだ。そうだろ?」

「……かもな」


 クローフは苦笑する。


「大丈夫だ。所詮俺は、即物的な人間だ。未来にある誰かの命よりも、目の前にある仲間の命が目に付いてしまう。感傷で、仲間を軽んじる事はしないさ。……銃の製造は、後の金策にも繋がるかもしれない。感傷だけで捨てられる考えじゃないさ」

「なら、いいんだな?」

「ああ」

「わかった。エルネストも交えて、また話を詰めよう」

「そうだな」


 カオルコは診療所から出て行こうとする。


「エルネストに挨拶はしたか?」

「今からだよ」

「場所はわかるか?」

「クリスタニアに案内してもらう。……ふっ、あいつと話すのは久しぶりだな」

「あいつも会いたがっている。会話を楽しんで来い」

「ああ」


 言葉を交わしあい、カオルコは診療所から出て行った。


「しかし……」


 カオルコが去った後、くろーふはつぶやく。


「異世界でまで、コピー品が出回るか……」

 カラシニコフ博士、お許しください。

 博士じゃないですけど。

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