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第22話【アレンの感情】


 ラディウスとの謁見が終わり、リュミエール一家は明日の宴に備えて城に泊まる事になった。


 アレンは緊張して疲れたのか、食事前に寝てしまった。


 そしてセレンを寝かしつけたレイラ達はソファに座って暗い顔をしていた。


「アレンは我々に遠慮していたのだな……」


 ラディウスの言葉にアレンは感情を抑えられず、賛同した。 その後の表情を3人は忘れられなかった。


「どうして気付かなかったのかしら……アレン、私達を勇者として誇りに思ってるのに聖魔大戦の事、聞いてこなかった。 それどころか聞きたくなかったのかも……」


「俺達が甘え過ぎてたんだろう。 アレンはあまりにも聡い。 きっとラディウスと同じ考えを持っていながら、エリスを失った原因の聖魔大戦の事を話したがらず、今まで言えなかった。」


 アレンの心からの願い、魔人族との和平という望みをレイラ達に悟らせまいと気丈に振る舞っていた事を知った3人は落ち込まずにはいられなかった。


「アレンは初めて同じ考えを持つラディウスに感動したのだろうな。 我々はあの戦いを体験したからこそ、甘い考えだと切り捨てたあの言葉を……」


「そうですね。 思えばアレンはエリスの子、あの子が魔王との間にアレンを宿した時点でエリスも同じ気持ちだったのかも。」


「この国がハルバート帝国だった頃、エリスは前皇帝の悪事を知って追われる身になっていた。 俺はエリスが人族に見切りを付けた可能性も考えていたよ」


 エリスは花の勇者ではあったが、聖魔大戦時、お尋ね者になった事がある。


 それはエスペランザ王国になる前、ハルバート帝国の皇帝の悪事を知ってしまった為であり、エリスは帝国軍に追われている所を魔王レオンに攫われた。


 今にしてみれば、優しいフレディがエリスを助けたのかもしれないが、2人とも既にこの世に居ない為、真意は分からない。


 そしてその皇帝の罪を暴き、反乱を起こしたのが現在のエスペランザ王国国王、ラディウスだった。


 ラディウスはハルバート皇帝の息子であり、次期皇帝であったが、魔人族差別、魔王レオンからの和平の申し出を一蹴する父親に不信感を抱いていた。


 そしてエリスがお尋ね者になった理由を知り、このままではこの世界に平和が来ないと確信した彼は謀反を起こし、自らの手で父親を討った。


 そしてハルバート帝国をエスペランザ王国に変え、今も魔人族との友好を取り戻す為に尽力している。


「エリスの事だ。 それはなかっただろう。 元々優しい子だった。 戦いなど似合わないほどにな」


「そうですね……確かにエリスはそんな奴でした。 ハーフの俺に回復魔法を迷わず掛けるほどに……」


 ディアスとセルカはエリスを思い出して微笑む。 だがレイラだけは暗い顔をしていた。


「私の……せいですね……」


「何をいう。 お前が聖魔大戦を終わらせたんだ。 それに2人が守ったアレンをここまで育てたのはお前だ。」


「そうだぞ? 俺との繋がりまで切ってアレンを守ろうとしてたろ?」


 2人の言葉にレイラは首を振る。 そして唇を噛み締めた。

「魔王レオンは言ってたわ。 平和になった世界でアレンの成長をエリスと見れないのが心残りだと……きっとレオンもエリスも、和平を望んでいた。 きっとアレンという存在は2人にとって人族と魔人族の架け橋だったのかもしれない……」


「レイラ……」


 レイラは肩を震わせて涙を流す。 そんなレイラをディアスは抱き締める。


「なんであの時、私は……レオンは和平を私に提案した。 その為に命すら差し出したのに……私は、アレンの目の前であの子の父親を……エリスを失った悲しみで殺した……」


「レイラ、自分を責めるな。 魔王レオンも分かっていた。 勇者か魔王、どちらかが死なぬ限り聖魔大戦が終わらない事を……」


「けど! あの時の私は……あの子すら殺そうと……」


「「!?」」


 ディアスとセルカは驚愕する。 まさかレイラがアレンを殺そうとしていた等と思いもしなかった。


「どういう事だレイラ? 何故アレンまで……」


「レイラ、この際だ。 あの時何があった? 話してみろ」


「私は……本当は、あの子の親じゃいけないんです……」


 そしてしばらく、レイラは泣き続けた。 それをディアスとセルカは黙って見守っていた。


 ようやく落ち着きを取り戻したレイラにセルカは聞く。


「落ち着いたか?」


「はい。 すみません……」


 レイラはディアスに抱きしめられながら涙を拭う。


「では話してくれるか? あの日、魔王城で何があったのか。 どうしてお前がアレンを育てるに至ったのかを……」

 

 そしてレイラは俯きながら、ポツリポツリと当時の事を語り出した。


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