第17話【第8の扉】
セルカが眠りについた頃、アレンは真っ暗闇の中、扉に囲まれていた。
「ここは……」
アレンを中心に8つの扉が立ち並ぶ光景にアレンは困惑した。
「ここって前にエリスお姉ちゃんに会った時と似てる……。 でもなんでこんなに扉があるんだろう?」
それぞれの扉には赤、青、紫、緑、桃色、茶色、黄色、そして金色と色分けされていた。
「なんでこの扉だけこんなに豪華なんだろう?」
その中でも一際豪華な金色の扉にアレンは首を傾げ、近付く。 まるでその扉に吸い込まれるかのように……
そしてアレンの手が金色の扉に触れる直前だった。 何者かの手がアレンの腕を掴んだのだ。
「え!?」
アレンは腕を掴まれ困惑し、慌てて離れようとする。
「落ち着いて。 俺は君を止めただけだよ」
するとアレンの腕を掴んだ男がそう伝える。 優しさを感じるその言葉にアレンは従う。
冷静さを取り戻したアレンは自身の腕を掴む男を見る。
白髪の長い髪に高位の魔人族特有の二本角、そしてその男の眼は見たことの無い魔眼だった。
「驚かせたようだね。 俺はフレディ。 見ての通り魔人族だよ」
「…………。」
フレディが自己紹介しても何も言わないアレン。 フレディは警戒されていると思い、さらに語りかける。
「警戒するのも無理はないよね。 でも君に危害を加えるつもりは――」
「……綺麗な髪」
「え?」
フレディはアレンの言葉に固まる。
「雪みたいに白くて、綺麗な髪だね」
「……そうか。 ありがとう。 この髪を褒めてくれたのは君で2人目だよ」
フレディは微笑みながらそう答える。
「俺が魔人族なのは気にしないのかい?」
「なんで? お兄さん悪い人なの?」
アレンは質問の意味が分からず、そう尋ねる。
「そうだよ? 俺は悪い魔人族なんだ。 君のお母さんとも戦ったよ」
「お母さんと!? でも……」
アレンはレイラと戦った魔人族と聞き驚く。 しかし彼のの直感はこの男が悪い人物だとは思えなかった。
「どうしたんだい?」
「お兄さん本当に悪い人? 戦争だから仕方なくお母さんと戦ったんじゃないの?」
「!?」
アレンの直感にフレディは驚く。 アレンは彼の本質を捉え始めていた。
(やっぱり君の子だね。 エリス……)
フレディの本質を見抜いたアレンを見て、フレディは思った。
「確かにそうだね。 俺としては魔人族と人族が仲良く出来ればと思うよ」
「僕もそう思う! だから仲直りの方法を探してるんだよ!」
「!?」
笑顔でそう答えるアレンにフレディはまた驚き、今度は涙を流す。
「そうか……(俺の選択は間違ってなかった。 こんなに優しい子に育ったんだね)君がその答えに辿り着く事を願うよ」
フレディは涙を拭い、微笑みながらアレンに答える。
アレンも嬉しそうに笑う。
そしてフレディは真面目な顔で語り出した。
「君が今いるこの空間は魔人族が魔眼を定める場所だ。」
「魔眼を定める? それってどう言う意味?」
「言葉通りの意味だよ。 魔眼には基本の7種類があり、君が触ろうとした魔眼は特別な魔眼に繋がる第8の扉だ」
そう言ってフレディはアレンが触れようとした扉を指差す。
「この扉だけは触れない方がいい」
「どうして?」
アレンの問いにフレディは静かに答えた。
「この扉は、破滅の魔眼に繋がっている。 破滅の魔眼を持つ者は間違いなく魔剣に選ばれてしまう」
「魔剣? 魔王が持ってた聖剣と同じ力を持つ剣の事だよね?」
「そうだ。 そして聖剣が次代の勇者を選ぶように、魔剣に選ばれた者が次の魔王となる。 私もそうだった」
「!?」
フレディの言葉にアレンは反応した。 そしてフレディはアレンが自身の正体に気付いた事を悟る。
「魔王……レオン・メルキオール?」
「そうだ。 私は君の母に打ち倒されし魔王、レオン・メルキオールだ」
フレディは冷たい視線をアレンに送る。 アレンは困惑するが、フレディの視線を受けて頬を膨らます。
「……どうした?」
「お兄ちゃん、その演技やめた方がいいと思うよ? だからお母さんと喧嘩しちゃったんじゃないの?」
怯えると思っていたアレンの態度にレオンは困惑する。
「その喋り方、なんかイラッとするから駄目だよ。 お母さんもそうなんじゃない?」
「そ、そうかい?」
アレンのお叱りについ素に戻ってしまうフレディ。
「お兄ちゃんはそっちの喋り方が合ってるよ。 凄く暖かくて安心する!」
ニッと笑うアレンを見てフレディは微笑む。
「さて、話が脱線したね。 君の魔眼についてだが……」
「あの金の扉に触れると魔王になっちゃうんだよね?」
「ああ。 だから他の扉を――」
他の扉を選ぶ様に言おうとするフレディに対し、アレンは驚愕する事を口にした。
「もし魔王になる事で人族と魔族が仲良くなるならなってもいいよ?」
「え……?」
フレディは耳を疑った。 それだけアレンの発言は常軌を逸していた。
幼児であるが故に理解出来ていないのかとも思ったが、アレンの瞳には覚悟が灯っていたのだった。




