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第72話 大神殿に到着

 ダイパール王国。


 シーナチカ教会の教義を国教とする国の中で最も大きな国であり、その首都には大神殿が建設され、『実質的な宗教国家の総本山』と言っていい。


 ダイパール王国、首都エイリーン。


 高い壁に囲まれた大都市は、緊張状態になっていた。

 無理もない。


 この町ではホーラスに対するネガティブキャンペーンが多数行われており、結果としてホーラスに対する悪感情を持つものは多い。


 ゴーレムの被害に遭った町を修復したり援助したりしながらこちらに向かっているという噂も届いてはいるものの、『自分で壊して自分で治す自作自演』と批判するものもいる。


 ただ、中には賢い者もいるし、バルゼイルが発表した声明を受けて、大神殿に不信感を持っている者もいる。被害に遭ったため、この町に逃げてきた者もいるし、自分たちが住んでいた町が修復、援助されていると知って、悪感情がない者もいる。


 要するに、『都市の中』がそもそも分裂寸前ということ。


 そんな中、『騒動において重要な要素』であるホーラスがこの町にたどり着くのだ。


 これで普段通りの生活をしろというのも、無理な話。


「お、来た来た!」


 壁に囲まれた出入り口で、一人の少女が楽しそうに微笑んでいる。


 金髪をショートカットにした白いワンピースの少女。

 小柄な印象だが、胸部装甲はなかなかのもので、アンバランスな魅力と言ったところだろう。


「勇者コミュニティと、その師匠であるホーラス君だね。お待ちしてました!」

「君は?」

「私は、神聖騎士団の第一隊から第三隊の教官。レミっていうんだよ。よろしく」


 小柄でとても笑顔な少女。

 普段、こういう子が朗らかに接してきたら、一人、元気になりそうなメンバーがいるが……。


「……ああ、私はロリババアに興味はありませんよ」

「誰がロリババアだ!」

「見た目通りの年齢ではないでしょう。見ればわかります。私は実年齢が十歳から十五歳で足がスベスベの可愛らしい女の子にしか興味がありません」

「犯罪じゃね?」

「横からうるさい」


 ラーメルのツッコミで眉間にしわが寄ったエリーだが、すぐに戻った。シンディの膝枕で寝ている間の彼女はかなり無敵である。


「……はぁ。あなたをうまくひっかけて勢いで話を進めようと思ってたけど、上手くいかないね」

「で、その教官が何の用だ?」


 レミに訝し気な視線を向けるホーラス。

 そんな彼の表情を見て、レミは納得した。


「ん? ああ、もう気が付いてるんだね」

Fa-loss(ファーロス)だからな。シドとソラがいたんなら、むしろ露骨だろ」

「確かにね……ついてきて、大神殿まで案内してあげる」


 そう言って、レミは背を向ける。

 ホーラスたちは移動拠点から降りて、ティアリスが指を鳴らすと、移動拠点が渦の中に消えるように収納された。


 特に気にしていないレミに続いて、ホーラスたちも首都レイリーンの中に入っていく。


「……さすがに緊張状態ですね」

「まあねー。私が言うのもなんだけど、ホーラス君が『悪人だって心の底から信じてる人』は……ゼロとは言わないけど、ほとんどいないと思うよ」

「え、そうなんですか?」

「『悪人だって信じたい人』は、たくさんいるかもしれないけどね」

「迷惑な話ね」

「……そうだな」


 ホーラスの表情は最初からすぐれない。

 もちろん、体調が悪いという訳ではない。

 いろいろ『知っている』が故のものだ。


「フフッ、アハハッ、いろいろ知ってるっていうのも、その上で、簡単に何かを諦められる人は違うね」

「簡単にあきらめる? 師匠が?」

「何に時間を使えば成功するかなんてわからない。だから人は、目先の利益に飛びつく。なんせ……『目先の利益を得続けることができる』なら、それは生きていけるってことだからね。でも、ホーラス君は違う」


 レミは微笑みながら言う。


「根本的なところで『無責任』だから、他人を簡単に巻き込める技術と力を持ってるけど、それで何が起こるのかを考慮しない。問題が起こっても、被害があっても、後で『元凶』を叩いて再発防止はするけど、被害が起こることそのものを否定しない。だって無責任だから」


 貶しているわけではない。

 ただ、どこまでも、レミはホーラスという人間についてわかっているのだろう。


「他人の期待なんて知らない。他人の要求なんて知らない。そうだよね? ホーラス君が強くなる理由って、人に認められたいからじゃなくて、倒したい存在があるからだもん。シドから聞いたよ」

「そうだな。とはいえ……軍事力の研究を進めた結果、世の中が発展するのは歴史が証明してる。強くなるための技術、それを、広義的は魔道具に分類されるものを研究すれば、文明レベルに影響を与えるのは当然だ」

「そう。だから、どれほど人を豊かにできるとしても、それを他人のために使おうとはしない。ディアマンテ王国で働いてたのも、今の世界の形を最低限維持したいから」


 レミはどこまで、知っているのだろう。


「世界会議があって、その中で、竜石国がキンセカイ大鉱脈を独占する。その形が欲しかった。だから働いていたのであって、今よりも問題なく、『キンセカイ大鉱脈を使える』となれば、別にそれでよかったんでしょ?」

「そうだな。多分、被害者が今よりも多い『もしも』はあっただろう」


 ホーラスの善悪論は一般とは異なる。

 本質的に『無責任』であるゆえに、固執しようとしない。

 自分の意見をすぐに変えることに躊躇がない。

 だからこそ、『他人の主義の善悪を気にしない』のだ。


「あははっ、もしかして……今以上に、もっと早く、ホーラス君が倒したい存在を倒せる手段が見つかったら、ゴーレムマスターを辞めるの?」

「秒で辞めるよ」

「あははははっ! あははははっ!」


 本当に楽しそうに笑うレミ。


「フフッ、楽しいね。やっぱり、『強い人』と話すのはとても楽しい。はぁ……あの時の私たちも、それくらい強かったらよかったなぁ……」


 レミはそう言ったとき、大神殿に到着した。


「さて、ついたよ。君が来るってことでいろいろ準備して待ち構えていると思うけど、まっ、頑張って。あ、第一隊から第三隊は任務でここにいないから。それじゃ、また」


 レミはそう言って、ホーラスたちから離れていった。

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……次話はレスバになりそう。バトルになるかはともかくとして。

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