第66話 手配書が紙くずになるの速い!
「……展開が早いな」
新聞を読んでいるホーラスはつぶやいた。
「私もそう思うのだ~。早く『結論』にたどり着きたいと考えているような、そんなことを裏で考えている人がいるような気がするのだ~」
勇者屋敷のロビーで、ホーラスとウルリカが話している。
「……早速、『ゴーレムを動かしてるやつが見つかった』か。一応、身元は分からないようにしているが、調査を進めたら『神殿』の関係者だと分かったってところか」
「バルゼイル王が出した声明も後押ししてるのだ~。正直……あの手配書は、もうその力が残ってないのだ~」
新聞に書かれているのは、ゴーレムが大量に動いて町を襲い……探知系統の魔法を使えるものが『探った』ところ、近くでゴーレムを動かしている者がいたため、発見できたというもの。
一応、所持品で身元がわかるような愚行は『ほとんどのもの』がしていなかったが、中にはバカもいるので、『大神殿が絡んでいる可能性がある』とのこと。
「ていうかそもそも、ゴーレム操作って、そこまで可能範囲は広くないからな」
「優秀な人でも100メートルになるかどうかなのだ~。ただ、その場合はゴーレムの性能が低くなるから、『神殿が抱えているアイテム』を使ってブーストする必要があるのだ~」
「動かすゴーレムを増やすために数合わせで呼ばれた奴なんて、射程が30メートルあればいい方だが……正直、町で建物に隠れて操作するとしても限界がある」
「見切り発車にもほどがあるのだ~」
「……はぁ、魔王討伐後に動きがほぼなかったのに、今度はこれか」
「枢機卿、その中の一人が暴走しているのはわかるのだ~。おそらくシルビオという男なのだ~」
「だろうな。俺もそう思うよ」
新聞をテーブルに置いて、ホーラスは溜息をついた。
……ちなみに、何かと『情報量』が多いホーラスと普通に話しているウルリカだが、『のだ~口調』かつおっとりしているものの、実は頭の回転は勇者コミュニティメンバーで一番速い。
具体的な知識や知恵という部分ではほかのメンバーに一歩劣る部分はあるものの、今ある情報をまとめる『パズル』の段階になると抜群に速い。
勇者コミュニティ『ラスター・レポート』のサブリーダーであり、その頭脳は確かなものだ。脳筋のランジェアと違って。
「どっちかっていうと、問題はこっちか」
別の紙面を取り出すホーラス。
「多分そっちの方が問題があるのだ~」
ホーラスが取り出した紙面に書かれているのは、『ホーラスを擁護した宗教国家の末路』といったところだろう。
宗教国家と言えど、大神殿に対しどれほど依存しているのかはバラバラであり、中には大神殿の発表に真正面から反対する意味も込めて『擁護』している国もある。
というより、どうも今回の騒動は『大神殿の中でもトップクラス』の誰かが暴走している可能性が高く、バルゼイルの声明も合わさって、『ホーラスを擁護した方が勝ち組になる』と考える者は多い。
おそらくそういう前提の発表だろうが……。
「町や村で暴れるってことは、供給力を破壊だ。大神殿に借金がある国家は『財政破綻』が間近になってて、そうでなくとも、ゴーレムによって流通網が破壊されて物価が上昇してる」
「物価が倍以上になって、ハイパーインフレになる国も少なくないのだ~」
「……俺の身の潔白が証明されたとしても、『ゴーレム』という存在のネガティブキャンペーンには適してるな」
いろいろな記事を読むと、魔道具作成を行う工房が避けられているという報告もある。
「……生活っていうか、『文明』を支える魔道具やゴーレムの否定。俺に直接の非難はできなくても、そっちからせめて俺の印象を悪くするって寸法か」
「被害は今も出てるのだ~。そんな中で、ゴーレムが暴れてるのは事実なのだ~」
「……まあ、そこまで考えているのかどうかはともかく、どうにかしないとな」
「その通りなのだ~。このままだと、『神血旅』の均衡が崩れる可能性があるのだ~」
「シルビオは枢機卿。その上の法王は何やってんだか……」
「今の大神殿はシルビオ一強なのだ~。多分、どこかに閉じ込められてる可能性が高いのだ~」
「だな。ここまでの騒動になってんのに、一度も顔を出さない。どこかに捕らわれてるとは思うが、まあそれを込みで、『何やってんだ』と思うけどな」
「それは同意するのだ~」
今回暴走しているシルビオは枢機卿であり、厳密に言えばトップではない。
ただし、政治力が高ければ勢力を牛耳ることなど容易いのも事実。
「……おそらく、神聖騎士団の第一隊から第三隊が出てくることはなさそうだが、他はどうだろうな……」
「わからないのだ~。ただ、こっちも動く必要があるのだ~。『神血旅』が分断され、『神VS血旅』の形になるのは、とてもマズいのだ~」
「だな」
ホーラスは自分の手配書を見る。
「……もう、これも紙くずか。ただ……俺への宣戦布告という事実が残っただけ」
「どうするのだ~?」
「見せしめと一網打尽は変わらんさ」
そういって、手配書から目をそらした。
(……なんというか、根本的な部分で『無責任』なのは昔から変わらないのだ~)
そんなことをウルリカは考えていたが、口には出さなかった。
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