第62話 指名手配『ホーラス Unlimited Rewards』
「大変なのだ~!」
「大変ですう~!」
「……」
騒動から一週間が経過し、ホーラスはパストルから抜き取った宝石を装甲に組み込む作業の休憩中だった。
出入り口を開けて中に入ってきたのは、二人のロリっ子。
「師匠、大変なことになったのだ~」
のだ口調おっとりしているのは、青髪をショートカットにした魔法使いのような女の子。
年齢は15歳。身長はそれ相応で、全体的に体の起伏が乏しい。
魔法使いが着るローブを身に着けており、その内側はノースリーブシャツとホットパンツだ。
左手で本を抱えているため、これが魔法のブーストアイテムなのだろう。
ニコニコしていて糸目であり、何を考えているのか、若干わかりにくい。
「急にいろんなところで追いかけられたんですよ! むふうううっ!」
緑色の髪を長く伸ばした元気いっぱいな様子だ。
上半身は緑のコートを着て、内側はシャツとミニスカートという恰好。
体の起伏が乏しい青髪の子と並ぶと分かりやすいほど胸がバインバインで太ももがむっちりしている。
一応二人は同い年だが、なぜこうも違う感じに育ったのか。よくわからない。
「……ウルリカ。シンディ。お前たちが言うと緊張感がないな」
「なんでですか~!」
「まあ、それはよく言われるのだ~」
青の短髪でほっそりした『のだ口調』ウルリカ。
緑の長髪で起伏が激しく元気なのがシンディ。
何があったのかはわからないが、それを二人が言うと確かに緊迫感がない。
……ちなみに、この二人がいると、途端に元気になるアホがいる。
「シンディ。それは置いておきましょう」
「エリー。どうしてですか?」
「とりあえず、あそこのソファに座ってください」
「む? わかりました!」
シンディは近くのソファに座った。
すると、エリーはミニスカートに包まれたむっちりした太ももに顔を埋めた。
「すううううううはああああああああああすうううううううううううはあああああああああああ!」
キモい。
「あ、私の方は気にせず話してください」
一瞬顔を上げたときは完全に真顔だった。
ちなみに、ロビーにいるのはホーラス、エリー、ウルリカ、シンディに加えてランジェアもいるが、彼女はいろいろ諦めたような表情で紅茶を飲んでいる。
変態をどうにかするのは勇者であってもなかなか難しいということなのだろう。
「後でエリーは滝行にするのだ~。それで師匠。大変なことになってるのだ~」
「最初からその話だったな。で、どういう内容だ?」
「これが宗教国家の間で出回ってるのだ~」
ウルリカが鞄から一枚の紙を取り出した。
ホーラスは受け取って、呆れた溜息をついた。
それは、一枚の『指名手配書』。
ホーラスの写真が大きく載って、彼の名前が刻まれている。
そして一番下。
『Unlimited Rewards』
本来なら報酬が記載される部分には、このように記載されている。
「……これ、どういう意味だと思う?」
「要するに、『いくらでも払うから、首を持ってこい』ということだと思うのだ~」
「だよな。コレ、宗教国家で出回ってるって言ったよな」
「そうなのだ~。ウルリカとシンディは宗教国家を転々として活動してたのだ~。でも、いきなりこれが出回ると同時に、ウルリカ達を狙ってくる人たちが出てきて、こっちに避難してきたのだ~」
ホーラスはそれを聞いて、最近の新聞を確認している。
「……はぁ、宗教国家ねぇ。いずれ、俺を敵に回すことは目に見えてたが、こんな手段を取るとは、そこまで俺が許せないか」
「支払いは『シーナチカ大神殿』となってるのだ~。師匠、いったい何をしたのだ~?」
「別に悪いことはしてないさ。俺基準でも、向こう基準でもな。ただ、許せないことがあるんだろう」
手配書をテーブルにおいて、ホーラスは溜息をついた。
「血と冒険者の後は、宗教国家か……世の中ってのは静かにならないな。まったく……」
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