第24話 ホーラスVS霊天竜ガイ・ギガント 1
王都にあるレクオテニデス公爵家の屋敷の屋上。
台座に石が置かれ、魔力が注がれると、周囲の天候が曇天になった。
地面が揺れ始めて、風が巻き上がる。
突如、召喚石から魔力が放出され、周囲にいた魔力を注いでいた人間たちを、紫色の霧が飲み込むと、そのままベールに包んで飲み込み、糧にする。
石から放たれた閃光は、曇天を貫き、一部だけ雲が割れた。
「グルルルルルル……」
晴れた空の中に一体の竜が姿を現し……降りてくる。
紫色の鱗が全身を覆った全長三十メートルはありそうな巨体の頭部の眼が開き、王都を見下ろした。
「お、おい、なんだアレ!」
「ど、ドラゴンだ! おい、逃げるぞ!」
王都の住民は大混乱だ。
一瞬にして曇天となり、風が巻き起こり、地面が揺れるなど、普通では考えられない。
明らかな異常事態であり、人々は我先にドラゴンのいる方向から遠ざかろうと逃げ出している。
そんな人々をガイ・ギガントは見下ろし……口の中に、紫色の魔力が集まっていく。
「あのドラゴン、口の中に何か溜めてる」
「ブレスでも出す気か! 何かの陰に隠れろ! 狙われたら終わりだ!」
腰が抜けて動けない者もいる中で、逃げろと叫べるのは強い証拠だ。
しかし、だからと言って、ブレスは防げない。
ガイ・ギガントは、容赦なくブレスを放出する。
「……ったく、勇者の師匠が来るまで時間を稼げって、冗談だろマジで」
どこかから三日月のような形の斬撃の魔力が放たれ、ブレスを斬り裂いていく。
そのまま斬撃はガイ・ギガントがブレスを放出し終わるまで存在を主張し、ブレスを吐き終わると同時に消滅した。
「はぁ、王都にいた勇者コミュニティのメンバーは王都を離れて竜石国に行ってるし、他の『幹部』は遠い国にいてすぐに来られない。理屈はともかくよ。せめてSS、低くてもSランクを呼べよ。こんなのマジで俺の仕事じゃねえだろ」
難癖をつけているのは、黒い鎧で全身を纏って、業物の剣を握る男だ。
「こういうときに緊急で招集がかかるからSランク昇格試験を受けなかったのに、『宵闇のディード』は普通のAランクがいいんだよもう。ばったり出てきやがって」
ディードは悪態をつきながらも、ガイ・ギガントを見る。
「まっ、耐えるだけで報酬はいいし、頑張るか」
ディードは剣を構えなおす。
その刀身に、再び魔力があふれ出した。
「とりあえず……人間様の土俵に立ってもらおうか。降りてこいやコラァ!」
剣を振り上げると、斬撃が魔力を帯びて放出される。
かなり濃密なほど魔力が圧縮されたもので、攻撃力は高いだろう。
だが、ガイ・ギガントは長い尻尾を振って、簡単に粉砕する。
「ったく、まだアレで全然本調子じゃないんだよな。冗談キツイぜ」
ディードは剣を構えなおして、切っ先を向けた。
ガイ・ギガントの口に魔力がたまっていくのを見て、自らも、剣の魔力を纏わせ始めた。
★
あちこちの建物が破壊された王都の上空に、流線形のゴーレムの乗り物が『突如姿を現し』、特殊ガラスでできたキャノピーが展開する。
「到着。……ん? 思ったより無事っぽいな。一名を除いて」
ガイ・ギガントとディードの戦闘が始まって一時間後。
そう、一時間後だ。
ランジェアは三時間後には到着していると予想したが、一時間でたどり着いていた。
コクピットからホーラスが顔を出しつつ、上着から銃型ゴーレムを取り出し、ガイ・ギガントに向けて発砲。
魔力で作られた弾丸が飛び出し、心臓がありそうな部分を狙ったが、背中に覆われた鱗を一枚傷つけるだけで終わった。
だがそれだけで、ガイ・ギガントはホーラスのほうに顔を向ける。
「そう、俺のほうを向きな」
ホーラスはコクピットに装着されている一辺三センチの立方体を外すと、魔力を流し込んで起動し、飛行ゴーレムをアイテムボックスに格納した。
どのような手段を使っているのか、ホーラスの体は落下する事なく空中で停止している。
「さて、まずは……」
銃型ゴーレムの撃鉄部分にある半球状の物質に触れて、銃弾をディードに向けて放つ。
超高速で飛んだその弾丸がディードの体にあたると、一部ヒビが入っている鎧が修復され、傷は癒えて……吹き飛んでなくなっている左腕が再生している。
ディードは自分の体から痛みが消えたのを訝しがっていたが、失ったはずの左腕を見てものすごく驚いているようだ。
おそらく戦いの中で吹き飛んだのだろうが、その腕が、鎧の腕部分ごと再生している。
ディードは空を見上げてホーラスを発見し……盛大にため息をつく。
そのまま踵を返すと、戦場から離れていった。
「ほかに負傷者はいない。『宵闇のディード』なら納得か、さて……俺と遊んでもらうぜ。霊天竜ガイ・ギガント」
弾を通常弾に切り替えて銃口を向け、ホーラスは次々と発砲する。
ガイ・ギガントは腕を振って弾丸を破壊しながら、ホーラスがいる空に向かって飛翔。
「リミッターを外して全速力で来てて、俺も魔力の調子がイマイチなんだ。こっちの準備運動にも付き合ってもらおうか」
自身に振り下ろされた尻尾を『空中を蹴って』回避しながら、ホーラスはニヤリと笑った。
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なお、ディードって誰? という疑問に関しては、名前は今回が初登場ですが、6話以来の登場になります。




