第22話【貴族SIDE】 古今東西、『自暴自棄』は器が小さい証明なのだろう。
世界会議を開いたわけだが、今回の場合、『メイン』は会見のほうだ。
王たちが集まって何をするのかという話だが、言ってしまえば『調整』と言ったところだろうか。
『あまりにも世界中の貴族が勇者に対して罵詈雑言』をぶつけまくっているのだから、こんなものが新聞にかけるわけがない。
毎日毎日、勇者屋敷に謝罪の使者が訪れるという邪魔の権化のような話になる。
しかし、暴言を吐いたことは事実であり、それを取り消してはマズイ。
そして、バルゼイルはあの場で『謝罪』をしたが、それはこれまで彼が行なったホーラスに対するものだ。
別にその場にいた貴族たちの愚行に対して頭を下げたわけではなく、本当に『言いたいことを言った』だけだ。
各国の王からすれば、『その場で貴族の愚行を謝ってくれればよかったのに』と思っているだろうが、そもそもバルゼイルは自国の貴族に対しても『調子に乗ったやつはダンジョンに放り込む』と明言しており、庇う気は一切ない。
というわけで、暴言をぶちまけまくったあの場の着地点をどうするのか。暴言を吐いたものに対しどのような罰を与えるのか。
世界会議で話さなければならないのは、主にそういった内容だ。
なお、世界各国の貴族を集めるために世界会議を開かせ、そこで副次的に使えるようになる『会見の場』を使っただけで、ランジェア自身は『王』ではないので、会議への出席はできても議決権はない。
そんな場所にいても、頭がよくないランジェアは面白くないので、『自分たちで決めてください』ということになった。
そんなわけで会議が行われ……同時に、『自暴自棄』の種もまた、芽吹いていた。
★
「くそっ! 我々が罰を受けるだと。これは間違っている。これはあまりにも不当だ!」
今回部屋に集まっていた貴族は『処分が下るまで待機』となっており、世界会議の施設に用意された部屋で軟禁されている。
「陛下があれほど勇者と対等な関係になったのだ。ならば、ディアマンテ王国の辺境伯である私に対し、罰を与えるなど言語道断! ダンジョンに放り込むなど、絶対に認めん!」
「そうだ! ディアマンテ王国と親密なメルエイド王国の公爵家である私がどれほど王国に尽くしているとお考えなのか。勇者と言えど調子に乗りすぎだ!」
……話していることからわかるように、彼らはディアマンテ王国の貴族と、王国と親密な関係を築いていた国家の貴族である。
なお、王国には公爵家が六つ存在していた。
ザイーテが当主を務めていた『ルギスソク公爵家』と、アシュトンが当主を務めていた『レクオテニデス公爵家』の二つ以外にも、四つの公爵家が存在している。
いずれも国政にかかわる家系であり、正直に言って無能であるザイーテやアシュトンと違って『普通』なため、『仕事があった』ゆえに調子に乗るタイミングがなかった。
それゆえにこの場に来るようなことになっておらず……そもそも、権謀術数の経験があるものなら、ザイーテやアシュトンを当て馬にして『勇者の出方をうかがう』のも戦術の一つだろう。
まあ、『押しに弱い性格ならいろいろ考えてみようか』などと考えていたら世界会議まで開かれてしまったので『こいつらはヤバい』という結論になったようだ。
なお、この場に集まっている貴族の大半は、もともとルギスソク公爵家やレクオテニデス公爵家の派閥にいた者たちであり……まあ、『類は友を呼ぶ』と言ったところか。
「陛下は我々の血の尊さがわかっておられないようだ。以前のような賢王ではなくなったということ。我らが陛下を正しい道を示すために行動することは、正義だ!」
「そうだ! バルゼイル国王陛下を正しき王にすべく……『アレ』を使うぞ」
「通信魔法が使える者はいるか?」
「もちろん」
誰かが手を掲げると、そこに魔法陣が出現した。
通信魔法を要求しているので、これを使って声を届けられるのだろう。
「伝令だ! ディアマンテ王国の王都に、『霊天竜ガイ・ギガント』を呼び出せ! 召喚石はレクオテニデス公爵家の屋敷の地下に保管されている! 早急に召喚し、王都を制圧しろ!」
通信終了。
「クククッ、召喚石を用いれば、出現するモンスターの制御もたやすい」
「我々を評価しない王を正しい方向に導くため、王都の民には犠牲になってもらわねばな」
そうして笑っている貴族たち。
……数秒後、扉が開かれた。
「さきほど、通信魔法の反応があったぞ! 傍受内容は、『霊天竜ガイ・ギガントの召喚と王都の制圧』だそうだな!」
「「「!?」」」
騎士の格好をした男が入ってきて叫ぶ。
その内容に、貴族たちは震えた。
「世界会議の本部の場で、ここまで愚かなことをするとは思っていなかったぞ! 国際的な犯罪者になりたいようだな。覚悟しておけ!」
★
「……人は愚かですね。師匠」
「俺たちは貴族が作る『利益』に興味なんてない。だからバルゼイル陛下は、『徳』を示した。ただ……その姿を見てなお、『恥』が理解できない。受け入れられない人間はいる。器の差だな」
「私や師匠のあの威圧を受けた後で、こんな……」
「いや、今のアイツらの標的は、俺たちじゃなくて陛下だ。貴族が束になれば王に匹敵するだけの影響力があるのも事実。だから、俺たちが簡単に陛下に勝ったから、貴族たちは陛下を過小評価してるんだろ」
「……まあ、ここはバルゼイル陛下の顔を立てておきましょう」
「そうしておけ。今頃は冷や汗がとんでもないことになってるからな。会見の場でも手汗がすごかったのに」
会見の場で握手を求めるという行為がなかったのはそんな理由があったりする。
「それで、ガイ・ギガントはどうしますか?」
「俺が片付けてくるよ。倒し方を工夫すると貴重な鉱石が手に入るからな」
「行ってらっしゃいませ」
「ああ、行ってくる」
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愚かな貴族の最後っ屁です。ホーラスには派手に暴れてもらいましょう。




