『平和な大地』 アジトにて作戦会議
「そういう事になるわね」とリリィが答えた。しかしどうやって潜入するのかな?
「そこでレンが潜入する事になるのだが潜入したら基本一人では動けないんだ」とホビーが続ける。
「私達がサポート役としてついて回る事になる。いざという時は助けに行くこともできるしさ」とリリィが言う。
「なるほどね。」と時雄は納得。
するとホビーは「そういえばリョウは?洗脳が完全に解けないのではアジトにも連れていけんし‥」
「ああ、大丈夫よ。今は洗脳を解く方法を考えているから問題なしよ。いったんアジトに連れて帰って解けるまでは独房にでも入れておくつもりよ。」と答え、みんなでアジトへ向かう事になった。
アジトは少し離れた森林地帯に隠れている。周りは木々で覆われていて人工物のビルや家は一切見当たらない。そして広い庭には畑があり野菜などを育てているようだ。さらに奥には何棟か建物があるがどれも古びたものばかりで今にも倒壊しそうなくらいボロボロだった。どうやら人が住んでいる形跡はあるが生活感は皆無で寂しげな雰囲気が漂っている。どう見ても人が住んでいそうな場所ではない。あまりに酷い状態の家で高柳、天川の二人は思わず言葉を失ったようだ。
「どうした?」「大丈夫?」「なんで黙ってるの?」「もしもーし」と三人から次々と声をかけられるが二人は放心状態だ。しかし高柳が「はっ」と意識を取り戻した。
「おい、あんたら。この惨状はなんだ?なんでこんなにボロボロなんだよ?」と怒鳴るように質問する。
「何言ってるの?ここはただの廃墟よ。人が住んでたなんて事ないわよ」とリリィが答えるが二人の耳には届いていない様子だ。
高柳も天川も困惑したまま立ち尽くしている。
しかし現実を知ってしまった以上、ショックが隠せないのは当然だ。こんなひどい環境で過ごすなんてとても耐えられないし想像もしたくない。するとリリィが話し始めた。
「びっくりしたでしょ?でもさ、いかにも秘密基地です。なんて外見してたらそれはもう秘密じゃないでしょ。実際は本当のアジトは地下にあるの。地下施設って事ね」と説明してくれた。
「ほんとに?ただの地下室じゃないでしょうね?」と半信半疑で聞くが
「もちろんよ。地下室なんてないわよ。この家の地下よ」
とリリィが答える。
「じゃあ、地下室はあるって事かい?」
「それは見てからのお楽しみよ」と言いつつ進むリリィ。
そして建物の中に通されると地下への階段があった。そこに降りるとそこには近代的な建物のホールのような空間が広がっていた。入口にはIDカードによるセキュリティーゲートやエレベーターも設置されておりまるで高級ホテルのフロントのようだった。それ以外にも高層ビルのエントランスみたいに大きな窓から陽の光が差し込み開放感もある空間となっていた。
「これはすごいわね。まるで映画館のロビーみたい」と高柳が感心している様子だ。
「さすがだな。まさかこんな場所があるとは思ってもいなかったわ」と山川も驚いた様子だ。
「まぁね。でもこれでも仮のアジトだからね。本当のアジトはもっと豪華よ」とリリィが自慢げだ。
「これで仮なのか‥」時雄は呆れてしまった。
「ええ、そうよ。でもこのアジトもなかなか気に入っているのよ。設備も充実してるしね」とリリィが笑顔で答える。そう言いながらリリィが廊下の一角に歩み寄り鍵を開け中に入るとそこには牢屋があった。リリィが檻を開け中に入ったと思ったら、少しして出て来た時には縛り上げられたリョウを連れて出て来た。そして隣の部屋の扉を開けリョウを入れると
「この部屋は独房代わりね」と呟いた。
「じゃあ、とりあえずは作戦会議をしましょうか」とホビーが提案した。
会議室に集まった全員はイスに腰掛け各々の意見を交わし合う。まず最初に口を開いたのはリリィであった。
「今回の目的はオーランド軍が開発中の兵器の奪取及び情報を収集する事です。そして特に重要視してるのは工場内の見取り図ね。これがあれば今後の作戦も立てやすくなる。実際の奪取は最終段階に入った時に行います」
と説明する。他のメンバーも頷く。続いて高柳が発言した。
「作戦成功の確率を上げるためには工場に潜入して情報収集するのがベストだと思うけど」と意見を述べた。しかし山川は懸念材料があるようで反論する。
「しかし、ここへ来る前に工場内は対ESP対策が施されているって言ってたわよね。ていう事は透視はもちろん出来ないんだろうけど、いざ戦闘になった時はサイボーグやアンドロイド相手にESPは使えず肉弾戦になるって事よね?」
「その通りだ。だからレンも無事でいられる保証はないって事だ」とホビーも同意する。
「でもレン君がやられることはあってもやられる事はないんじゃないかしら?」とリリィが付け加える。
「そうだな、一応、軍事訓練も一通り受けてるし、何より俺以外適任者はいないはずだ!」とレンが口を挟む。確かに彼以上に適任者がいないことは確かだ。
「だけどいくら軍事訓練を受けていると言ってもESPを使えないのであればサイバーなどの相手は荷が重いのでは?」と高柳が問いかける。
確かに疑問に感じる部分もある。
「大丈夫だ。作戦の成功率を上げるためにも入念な準備が必要だからな」
「じゃあ、とりあえずレン君が潜入しやすいように時間稼ぎをし、可能であれば敵を引き付けると。潜入はテレポートは使えないので変装して乗り込むしかないでしょうね。そうなるとレン君の超能力では変装は厳しいので私達の軍事車両で迎えに行くしかありませんね」とホビーが話す。
「そうだな。レン君を工場に送り込む際には車で向かうが、帰りは歩きとなる。ただ行き帰り共に戦闘になる可能性が高いだろう。もし工場内でレン君の身に何かあった場合は即撤退してくれ」とリリィが付け足す。
「わかった。しかし、もう少し計画性がないと‥」
「いや、問題ない。基本一人で工場潜入はできるからな」とレンが話す。どうやらかなりの自信を持っているようだ。
「ちょっと待ちなさいよ!いくらレン君でも殺戮を目的としたサイバーの戦力も未知数の状態で潜入なんて自殺行為よ!」と天川が声を荒げる。
確かにその通りだが……。どうしたものだろうか?
「潜入は私がします。私ならパワードスーツもあるし、軍事訓練も受けてるしね」と高柳がまさかの参加表明。
「まってよ!パワードスーツは私のよ!勝手に自分の物にしないで!」山川が反論。
「そんなこと言ってられないでしょ!そしてレン君には囮役をやってほしいの。工場の外で遠慮なく暴れまくって注目を集めて欲しいの」
「まてまて!そんなことよりパワードスーツって…そんなものあるのか?」とホビーが驚いた表情をした。
「ええ、以前、悪い奴らのアジトで暴れた時に頂いたの」
「頂いたんではなく奪ったっていうんだ。あれは」と時雄。
そう言いながら高柳を睨む。
「奪ったんじゃなくて正当な手段よ。だってあいつ等悪い奴らだもの。私たちが制裁を加えるのは当然よ。文句あるなら言ってみてよ。証拠を見せようか?」と反論する。どうやら譲る気はないようだ。
「はいはい、わかったよ。しかしそのパワードスーツってやつがあるからと言って、それでもサイボーグにはキツイと思うが」時雄が口を挟む。
「だからなるべく戦わなくて済むようにレン君には敵を引き寄せて欲しいの」




