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第八十二話 商家到着


私達は鉱山での一件を片付け旅を続けていた。



あの後冒険者ギルドから事後処理の為の人達が来て色々説明した結果、後は向こうが引き受けてくれるとの事。

治癒術師も来てくれたのでリアもやっと解放される事となった。


十分に休んで出発した為、リアもマリーも元気になっている。



しかし……、


「なんか……ライラ元気ない?」

カンナが私の顔をのぞき込む様に見てくる。


愛らしいその表情に心がときめくものの、一方で私の心に陰りが差し込んでいく。

しかしカンナには心配をかけたくない。


「いえいえ、そんなことはないですよ。 ちょっとお日様が恋しいなぁ~って思っていたんです」


私の誤魔化しにカンナは納得した様に頷くと、


「うん~僕もお日様みたい。 早く見れるといいね」


そう言ってくれる。


カンナはやっぱり優しいなぁ。





「そろそろ首都につくかしら?」


う……。


何気ないリアの言葉に私の心が曇っていく。

そう……首都に近付くという事は、クレアに近付くという事。


おかげで私の心中は穏やかでなくざわめくばかりだ。


(何事も起きませんように! カンナ達が巻き込まれませんように! カンナに変な誤解がありませんように!!)



そうして……長い洞窟の先に巨大な広場が現れる。


最初の村など話にならないほどの巨大なドーム型の天井。

高さは見当もつかない。


横幅も広く、端までずっと続いているようだ。

これが洞窟の中だというから驚きである。



私達は全員唖然となって天井や壁を見ていた。


「本当に……洞窟の中なの?」

「おおきいねぇ~」

「大きすぎですわ。 崩れたりしないのかしら?」

「不思議……どうなっているんだろう?」


それぞれが感想を漏らす。


そして広い広場に大きな建物がいくつも建てられている。

中には高さがある塔の様な物や、まるで貴族の屋敷の様に大きなものも見えた。



「じゃ、じゃあ行こうか」

とは言ったものの……うぅ……行きたくない~~。


「ここからは案内しよう。 付いてい来い」


今まで後ろにいたアンズがいつの間にか横に来ている。


ほんとに足音も気配もないな!



私達はアンズの先導でカタクリの首都カタクリに向かって歩き出した。


岩肌の道を歩きカタクリの大きな門に近付く。



門の前には二人の門番が立っていたが、アンズが何やら書面を見せるとそのまま通行することが出来る。


「さっきの門番に何見せていたの?」

「……」

「ね~」

「……」

「ねーってば!」


私がしつこく聞くと足を止めため息交じりに、


「例の商家からカタクリ国内の通行証をいただいているのよ? 満足した?」


なるほど……顔パス的なものらしい。


「うん、ありがとう」

私がにっこり微笑むも、アンズはすぐに前を向いて歩き出す。


釣れないなぁ……。


私がそう思っていると、



『ライラ、なぜあ奴に近付く?』

フェンリルだ。


私はさり気なくマリーの横に並ぶと、小声で鞄に話しかける。


……いや、鞄にじゃないからね? 中のフェンリルにだよ?



『ん~、フェンリルは危ないって言ったけど、あの子何もしてこないじゃない?』


『今はまだな。 何かしら狙いがあるのかもしれん』


『狙いって?』


『吾輩がいくら博識でもそこまでわかるわけないじゃろう』


『まぁ……確かに』



急にアンズが足を止める。

私は慌てて口を噤んだ。


フェンリルは彼女に見つからないよう隠れている様だ。

ならばバレない様にしなくては。



「……着いた」


「え?」


「ここだ。 貴方を探している商家のその館」


「あ……ああ」

忘れていた……ここに向かっていたんだった!!



アンズが足を止めたのは石造りの館で外見的には質素に見える。

庭は狭いが館は三階建てと大きい。

門などはなく、道路のすぐそこが正面の扉となっている。



「あ、あの? ライラ大丈夫? 顔色がだいぶ……」

カンナが血の気の引いた私を見て声を掛けて来た時、


「……ようこそ、お越しくださいました」

聞き覚えのある声……。



私が壊れたロボットよろしくギギギギと顔を声のした方に向けると、


「私はこのカタクリにて服飾関係の商売を生業にしております。 クレアと申します」


いつの間に外に出て来たのか……クレアが以前と違い貴族が好む高級そうなドレスを着て立っている。

服装は変わっているがおさげと言いそばかすと言い間違いなくクレア本人だ。


私を見てニッコリと笑みを浮かべる。



そして私達をみながら深々とお辞儀をして、


「この度は急なお呼び建てをしてしまい申し訳ございません」


「それで……ライラ姉様に何か御用とかお伺いいたしましたけど?」


固まっている私に代わり質問するリア。

ちなみにカンナはマリーの後ろに隠れている。

知らない女性という事で人見知り状態らしい。


「まずはおあがり下さい。 遠路はるばるお越しいただいて軒先での対応など、私どもの沽券に関わります」


確かに……周りにいる通りがかりの人達が何事かと見ている。

カタクリでも有数の商家の軒先で、数名の人達が集まっていれば何事かと思うだろう。



クレアに案内され館にあげられる。


私は全力で逃げたかったが……流石に無理そう。


クレアの奴……館に入る前、私をチラッとみてにやりとしたぞ!

一瞬で鳥肌立ったわよ!



しかしそんな様子に気付かなかったリア達は、

「そんなに悪い人でもなさそうですわね」

「うん、礼儀正しいね」



みんな……だまされないでぇ~。


私の心の声は勿論届かなかった。




そうして大きな屋敷にあげられクレア自らが案内してくれる。


外見は質素ながら室内は暖かい絨毯などが敷かれいかにも高級そうな壺や絵がこれ見よがしに飾られている。



私達の視線に気づいたのか、


「商人は信用が一番ですから……みすぼらしい館では信用して頂けませんので」


だからこそ色々飾り立てているのだろう。


メイド姿の召使も何人もおり私達を出迎えてくれる。



クレアに案内されて豪華な客間に通される。

ちなみにアンズも後ろをついてくる。



勧められるがまま私達がソファに腰を降ろすと目の前にお茶と菓子などが出された。


そうしてクレアも私達の前に座るとその背後にアンズが立つ。

その姿は用心棒の様だ。



それには構わず、クレアは私達を見ると口を開いて話始めた。


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