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第五十六話 魔王軍兵


コスモス谷はユーフォルビアから西に進んだ場所に位置する。


谷と言っても山間部ではなく、街から続く草原が高原となり比較的浅い谷間を作っている場所だ。

なだらかな谷の為、ゴブリンなど低級の魔族などが住み着いているらしい。


……全部マリー情報だけど。



コスモス谷まで道はないが草原を進んでいく為比較的楽である。


谷に向かう間レムルスが何度となく話しかけて来たのが面倒だったぐらいで、比較的問題なく谷に着くことが出来た。




「見て来たわよ。 レム」

アザミが音も無く表れてレムルスに報告する。


谷の近くまで来た私達は、レムルスの提案でアザミを偵察に出していた。



「谷にはほとんど魔族はいないわね。 聞いていた話だと結構いると思ってたんだけど……」


情報共有の為、一応私達にも聞こえる様に言ってくれているらしい……視線はあくまでレムルスを向いているが。


「ほとんどって事は少しはいるって事かな?」

レムルスの言葉に頷きを返しつつ、


「ほんとに少し……でもいるのはゴブリンメイジとかではなくてデモンズソーサリー」


「なんだって!?」

レムルスが驚きの声を上げる。


「……デモンズソーサリー。 魔王配下の魔法兵」

知っていたのかマリーが呟く。


その言葉にレムルスが頷きつつ、

「そうだ。 個々で好き勝手している魔族とは違って、魔王軍に所属している魔族だ」

いつもの温和な表情と違い緊張しているのか真剣な表情だ。


レムルスはアザミの方を向くと、

「アザミ、相手はどれくらいいた?」


「私が確認できたのは三体かな? あんまり近寄るとバレちゃうから、他にもいるかは不明だけど……」


「アザミの偵察能力は優秀だからな。 アザミがそう言うなら三体なんだろう」

レムルスの言葉に顔を赤く染めるアザミ。

褒められた事と信じてくれた事が余程嬉しかったらしい。

めっちゃモジモジしている。


私に対する態度と全然違う。



レムルスが私の方を見て、

「僕達はデモンズソーサリーを倒しておこうと思う。 何を企んでいるかは知らないが、魔王軍に属する者が企む事など良くない事に決まっているしね」


「私達も手伝うわ。 元はと言えば私が竜人を探していたことから始まった事だしね」


「確かにそうかもしれないけどね。 でもありがとう、ライラ。  助かるよ」

レムルスが微笑み、アザミがジト目で見てくる。


私はそれに構わず、

「作戦とかあるの?」


「僕とアザミが一体ずつ相手をするよ。 ライラ達はもう一体をお願い」


「分かったわ」

私はそう言って後ろを向く。


後ろにいたマリーが頷き、少し離れた所のリアとカンナも頷いた。





谷間ではデモンズソーサリー達が鍋を囲んで何かを作成していた。


デモンズソーサリーは火にかけている鍋にいくつか薬を投げ込むと、ぐつぐつと音を立てる鍋を見ながら満足そうに頷く。


鍋の中身は紫色で……もし料理だったら食べるのを躊躇するの間違いなしだ。


デモンズソーサリー達は全身をローブで覆い隠されている。

フードも目深にかぶりその表情を伺い知ることは出来ない。

だが、フードを捲ってもその表情を見ることは出来ないだろう。


顔のあるべき部分は闇の様に暗く、二つある目だけが赤く輝いている。



「!」

一人のデモンズソーサリーが顔を上げる。


張っていた魔力の網に何かが掛かったのを感じたからだ。


しかし顔を上げた瞬間!


ドスドスドス!!


苦無が何本も飛んできて顔を上げたデモンズソーサリーのローブに突き刺さった!!


「ふふ~ん、気づくのが遅いのよ!」

上から苦無を投げつけたアザミがどや顔でデモンズソーサリーを見下ろす。


デモンズソーサリーが谷間にいた為、上にいたアザミからは絶好の獲物だった。



襲撃に気付いた他二体のデモンズソーサリーがすぐさま魔法を発動する!!


火球と氷の矢がアザミに向かって放たれる!!

その速度は速くそこら辺の魔術師より腕は上だろう。


アザミはそれを素早く躱して器用に谷間に降りていく。




そしてアザミを狙っているデモンズソーサリーの背後から二人の影が走り寄った!!




私は神速を使い間合いを詰める!

手にはミスリルソードが抜き放たれている。


(アザミに気が向いている今がチャンス!!)


相手が気づいてこちらを見るが……遅い!!


「華月流 一輪刺し!」


ローブのそのど真ん中。

剣を深々と突き刺した!!


刀身がその体に飲み込まれる。


すると……フッと手応えがなくなりローブだけがその場にフサァっと崩れ落ちた。

まるでローブ以外何もなかったかのように……血なども流れていないし肉体も残っていない。


(逃げられた? それとも消えた?)

私が慌てて周囲を見ると、レムレスの斬撃を喰らったデモンズソーサリーもローブを残して消えた様だ。



レムルスとお互いに目を合わせる。


「これって……」


「どうやら影の様な……実態がない魔族の様だね」


私の後ろからマリーが補足する。


「その通り。 デモンズソーサリーは主に魔力で構成された体を持ち、その体がある程度傷つくと血ではなく魔力が流れ出して消える……魔力で出来た風船の様なもの」



その説明が終わる寸前、


「きゃぁ!!」


悲鳴が上がった!


見るとアザミの四肢を……どういう仕組みか分からないが鎖が拘束している。

そして彼女の体が炎に包まれていた!!


「アザミ!!」


レムルスが叫ぶと同時に、アザミに向かって魔法を放ったデモンズソーサリーに走り寄る!


残ったデモンズソーサリーはアザミが相手をしていたやつだ。

体中に苦無が刺さりつつも、デモンズソーサリーは平然と動いている。


痛みも影響もない様で……大きく傷つけなければ倒すことが出来ないのかもしれない。


駆け寄ったレムルスの双剣がデモンズソーサリーを二分する!


ローブごと切り裂かれ、デモンズソーサリーは裂かれたローブを残し消えて行った。



その瞬間、アザミを拘束していた鎖も掻き消え、彼女はそのまま地面に倒れこんだ!


「フローラ!」

レムルスが名前を呼ぶと同時にアザミの体を光が覆う。

すでにフローラは回復魔法を準備していたようだ。


アザミの焼け爛れた皮膚が戻って行く……しかしアザミの表情は苦悶のままで目を覚ます様子はない。


レムルスがアザミを抱きかかえるも様子は変わらなかった。



その時、この場にいる誰の者でもない声が響いた。


そして、私はこの声の主を知っている。


「騒がしいと思えば……いつぞやのクズ剣士ではないか」


私の剣を奪った張本人……竜人が私達の前に現れたのだった。


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