情報操作と開示契約 1
後宮の外では、何が起きているのか?
ヴィラの下には、ジェスタからの手紙が定期的に届く。
「ジェスタ兄様、アル様の講師料の対価はクロムウェストからの情報を後宮にいても提供すること、で、お願いいたしますわ。」
それが、ジェスタと直接交わした最後の会話だった。
情報は遮断され、物理的にも閉じられた空間である後宮の中で、正しい情報を得ることが一番難しい。
こんなところに放り込まれる事にならなければ、ジェスタ兄様と一緒に入られたのに。こんな業務的なお願いをしなくて済んだのに。
「お兄様の直筆のお手紙を残せないなんて。」
週間レポートを読み終えた後、ヴィラは泣く泣く手紙を暖炉にくべた。
年々、民の不安と国への不満が澱のように沈み澱んでいく。
国王不在の王宮で、第一王妃の意向を忖度されている。
各王子毎に派閥が出来上がりつつある。
公爵家や巻き込まれたくない家は、王家との距離を取り始めているようだ。
王家の目の届かない領地では、不必要な税率の引き上げがされている。
その隙に隣国との小競り合いが再開され、主力軍はその対応に苦慮していた。
第一王妃の実家である大国は、今のところ表立った動きはない。
「王宮内で跋扈しているけどね。」
ジェスタは、主に第一王妃オルフィアの動きを探っていた。
ギリン侯爵ーリークハルトは娘を連れ、後宮に足を踏み入れた。
国王の婚約者であるアーリアの父リークハルトは、国王のいる別邸へは足繁く通っていた。
ベットから起き上がることが苦しそうなルーベンス王の前の椅子に座り、向かい合う。
「陛下の良い話し相手になっているようで、なによりです。娘はおやつを食べに侍女たちに連れていかれましたけど。」
家に帰ったらお菓子の話を話しまくることだろうとギリン侯爵は娘のことを思い浮かべる。
「リークハルト、権力バランスを維持してくれ。数年持つだけでいい。」
ルーベンス王は低い声で紡ぐ。少し間が空いて、返答が返ってきた。
「そう…ですか。この国の宰相として、できる限り手を尽くしてみましょう。」
リークハルトは「また、娘ときますね。」と言って部屋を出た。




