後宮と人質契約 2
レミリアはイスタ王妃から話を聞いて、急遽予定を変更した。
予想以上に薬を手配することになりそうだと考え、レミリア バーミリオン伯爵令嬢は薬剤師として後宮へ上がったのだ。
女性しか配置できない後宮で、女性医療従事者のニーズは高く、あっさりと薬室の主となっていた。
「前国王の側妃様たちの分まで、大変よね。ヴィラ様。」
薬室の奥の部屋は、研究室として使われている。
「そうですわね。想定以上にお作りしないといけないので、後宮で軟禁されているわりには、充実しておりますわ。イスタ様がお越しになられた半年前から急に増えてしまったらしいということですが。時々飲み水にも気をつけないといけないのは王宮より異常ですわね。」
その研究室にこもっている薬室の真の主ーヴィラは、自分好みの庭園でハーブティーなどを栽培するなど、人目のつかないところで雑草と薬草を少しづつ栽培している。散策していると、元々栽培されているものも見つかるので、毒から逃れられない閉じられた場所にいる事を常に意識することになった。
「イスタ様達は、ルーベンス王の所へ?」
「ご機嫌伺いだと聞いておりますよ。残暑が続き、食欲があまりないとか。いくつかの栄養価の高いものをお渡しいたしましたけど。」
レミリアは、専属医師の診断にしたがい、必要な薬を手配していた。
今頃、ルーベンス王はイスタ王妃と会っているはずだ。
「王妃様方は、私と王が会わないようにいろいろと手を打って頂いているのは、とても有り難いと思っています。」
「それは、ヴィラ様の知識が命綱だから。皆様は、年若いお嬢様をこの様なところに来させてしまった事をとても気にしておられ、せめて、瑕疵なくクロムウェスト公にお返ししたいと思っておられるのですよ。」
「有り難いのですが、最悪の場合、王妃様の生命と引き換えにしろと思っている父がそこまで私の身を案じて送り出したかどうかはわかりません。私には婚約者がいるらしいのですが、誰方なのか聞いたことがありませんし、意外と結婚させずに家の仕事をさせるかもしれませんね。」
悪い父ではないが、当主として、クロムウェスト家と王家の為ならどんな決断も辞さない。実の兄が3人もいるのだから、血筋とか家を継ぐ者に関しては全く問題ないだろう。
「ヴィラ様、私が言うのもなんですけど、むかつくぐらい周りから心配されていますのよ。ご自覚くださいませ。」
ジェスタ兄様も気にしておられる。
レミリアはツンとしながら、「失言でしたわ」とつぶやいた。
「ごめんなさい。私の方こそ、周りの方々のお気遣いを無にする様な事を言ってしまいました。すこし、根を詰めすぎたようね。」
自由が制限される環境の中、後ろ向きな発言をした自分にびっくりして、話題を変えようと頭を軽く振った。
「レミリア様、アルバート様のご様子はいかがでしょうか?」
「ヴィラ様のおかげで、生き延びておられます。側で護身術を叩き込んでいる者からの話ですが。」
ヴィラ自身が後宮へ上がる事になったので、忙しくなったし、期間が足りなかった。
アルバートへの授業の最後の方は手紙でしか指示できなかったため、気にかかっていたのだ。
「そう。お兄様からのご依頼、間に合ってよかったですわ。ところで、飲み水対策に金魚をもう少し仕入れることできないかしら。 ここで増やしたほうがいいかしら?」
「手配しておきますわ。全部の池に放しておいたら、妃様達の気晴らしにもなるでしょうし。」
「そうしましょう。」
話が終わると、二人は黙々と作業に没頭した。




