若手官僚と講師契約
王宮に部屋を持つ王族には、各分野の講師が教育を授ける。
基本、皇太子に授けた教育に準ずる内容を年齢の近い兄弟達に集団教育しているが、上の兄と年の差があるアルバートは、1人で受けることが多い。新たに行政の講師に若い官僚がやってきた。
「久しぶりだね、アルバート様。私のいる部署は、みな優秀すぎて忙しいのです。コネで入った私は比較的手が空いてるだろうから、仕事の合間に王族の相手をしてこいと上司から命じられました。いろいろお話ししながら、ゆっくり学んでいきましょう。」
アルバートはうなづいた。
その講師は、仕事が忙しくて会えなかったギルバード だった。
「アルがまだ回復しきれてない状態で、ウォルガがまた旅に出てしまっただろう?代わりに顔を見にいってくれと頼まれていたんだ。元気になってくれてうれしいよ。」
みんなのお兄さん的なギルバードと話ができて、アルバートは気が緩んだ。実際の兄たちは年齢が離れすぎ、会話がほぼない。
「ギル、…生きたいんだ。1人で調べても、考えても悪いようにしかならない。この先どうしたらいいのかわからないんだ。」
「この一年近くとても大変だったのは、知っています。それでも、生きてこられたのは、アルの生きたいという思いと、周りの人間がアルを生かしたいと思って手を尽くしてきた結果じゃないかな。誰がどんな風に助けてくれたのか覚えていますか?」
頭の中が自分が大変だったことでいっぱいだった。ギルバードの言葉に、改めて考えてみる。
「侍従たちが、毒味をしてくれた。侍従を下がらせた後、ウォルガがよく看病に来てくれた。ノアやギルも見舞いに来てくれた。ジェスタが側にいて薬を手配してくれた。彼の妹ヴィラ嬢にも。それから…」
どんどん、言葉が出てくる。いろんな人が関わってくれていたことをあらためて感じた。
「1人で、ではなく、手を貸して欲しいとお願いしてみてはいかがですか。私に相談されたように。」
「感謝しているけれど、返せるものがないんだ。」
兄が王になり、兄の子が後を継ぐ。今後、何の益もなさそうな自分に、これから先も関わって欲しいと言えるだろうか?
「ウォルガは、世話好きなので側にいると思いますよ。そうですね、感謝のお気持ちを伝えてみては?言われ慣れていないジェスタとか、意外に手を貸してくれそうですよ。」
さりげなくジェスタを推薦した後、本題の授業を開始した。




