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第9話 婚約が決まりました。

明けましておめでとうございます。

今年も頑張って書いていきたいと思います。

よろしくお願いします。

 ホテルに戻りまず俺はリアナと話をするために自分に与えられた部屋に二人で移動した、しかしどう切り出せばいいかわからず少しの間沈黙が流れた。


「あの、テンリ様、怒ってますか?」


 沈黙を破ったのはリアナである、しかし怒っているかと聞かれるのは予想外で俺はポカンとしてしまう、どうしてそう思ったのだろう?


「テンリ様?」

「あ、えっと、怒ってないよ」

「本当に?」

「うん」

「私のステータスを見ましたよね、ならいろいろと思うところはあると思うのですが」

「そうだね、でも驚きはしたけど怒ってないよ」


 ステータスを見たときは本当に驚いた、ただそれに対して俺が怒る理由はない。


「ただ説明をしてもらえると助かるかな」

「はい、もちろんそのつもりです、ただどう説明をしていいのか、上手く伝えることができるか自信がないです」

「それでも、知っておきたいな」

「わかりました。私の事を話す前にまずアトレイア様の事をお話ししなければなりません、そもそもの始まりはアトレイア様がまだ幼く母親であり最高神でもあるアルトリア様の創った世界で秩序の維持を手伝っていた時まで遡ります。そしてその時たまたま下界を観測していたアトレイア様は一人の少年に目を奪われました、要は一目惚れです、その少年がテンリ様です」

「俺!?」

「はい、最初は世界の秩序を維持しながら眺めて見守っていたのですがその気持ちは募る一方で、ある時アトレイア様は恋愛を司る神様に相談しに行きました、恋愛神はそんなに気になるなら会いに行くように言いアトレイア様はテンリ様に会いに行きました、そして下界でアトレイア様とテンリ様は出会い二人は生涯を共に生きると誓ったのです」

「そんな記憶まったくないんだけど」

「それは当然です、この話はテンリ様とアトレイア様が初めて会った時の話ですから、それこそ数万年前どころの話ではありません、それにテンリ様は何度も転生なさっていますから記憶が全て残っていることはないでしょう」


 スケールが大きすぎて言葉が出てこない。


「話を進めて大丈夫ですか?」


 リアナに聞かれ取り敢えず頷く。


「アトレイア様とテンリ様は共に暮らし一人の娘を授かり幸せに暮らしていました、しかし神と人では生きる時間が違います、時がたちテンリ様は寿命でお亡くなりになりました、とは言え魂が消滅したわけではありません、アトレイア様は娘を連れ一度神界に戻ります、娘は神族として迎え入れてもらえアルトリア様に娘を預けてアトレイア様はテンリ様を追い掛けました。そしていろいろな世界を渡りテンリ様が転生する度に出合いと別れを繰り返します、ですがここで問題が起こりました、アトレイア様はテンリ様を追い掛ける事に夢中になりすぎ本来しなければならない世界の維持をせず更には各世界に無理に介入してきたせいで秩序を乱してしまいます、さすがのアルトリア様もこのままではいけないとテンリ様の魂を隠してしまいました。アトレイア様はテンリ様を返して欲しいと懇願しそこでアルトリア様は2つの条件を出します、1つはこれまでに乱した各世界の秩序を元に戻す事、もう一つが自分の世界を創り維持する事です。そしてどうにか二つの条件をクリアしてテンリ様を取り戻すはずだったのですが、テンリ様の魂は行方不明になっておりなんとか探しだした時には転生した後でした、そこでテンリ様の転生先である神様に交渉し自分の創ったこの世界に招こうとしたところでお亡くなりになってしまったのです。ただ交渉は済んでいたためこの世界にテンリ様を連れてくる事ができました」


 凄い話だ、自分の事でもあるけどまったく実感がわかない。


「今の話を聞く限りリアナは俺が転生者である事を知ってるって事になるんだよね」

「はい」

「最初から全部知っていたって事か」

「いえ、私のこの記憶などは祝福の義を受けてからになります、テンリ様も経験したと思いますが祝福の義を受け神界に向かいました、私の場合はそこでアトレイア様と一部の記憶を共有してもらいそして、死ぬほど鍛えられました」


 リアナは最後の言葉を言った時とても遠い目をしていた。


「えっと、それでリアナとアトレイアってどんな繋がりがあるの?」

「私のこの姿は出会った後初めてテンリ様が転生した時に会ったアトレイア様の姿です」

「はい?」

「アトレイア様はテンリ様が転生する度にいろいろな種族になってテンリ様と出会っているのです、この私の姿はテンリ様と出会った2番目の姿なのです、私はリアナ=ジュマであると同時にこの世界の神であるアトレイア様と同一人物でもあります、同一人物と言っても私はアトレイア様の魂のほんの一欠片を切り離している存在でしかないのですけどね」


 俺の頭は思考が停止する、もうキャパオーバーだ。


「アトレイア様と同一人物であってもこの意思は私のものです、ただこの世界に産まれ過去の記憶がない状態でも私はテンリ様を好きになりました、これはきっと世界が定めた運命なのでしょう、私はこの運命を喜んで受け入れます、むしろ違う運命が待ち構えていれば叩き潰します!」


 力強く拳を握るリアナ、なんと逞しいことか。


「あれ、テンリ様?あの聞いてますか?大丈夫ですか?」

「あ、うん、聞いてるから大丈夫だよ」

「いきなりいろいろ言われて混乱していると思います」

「うん」

「ひょっとして私が嫌いになりましたか?」

「それはないから大丈夫、ちょっと情報が処理しきれていないだけだから」


 俺の言葉にリアナはほっとした顔をする。


 前世の事ははっきり覚えているがそれ以前の事は全く覚えていない、聞いていても全く実感がわかないのが現状だ、ただアトレイアやリアナにあった時に懐かしい感覚がしたのはきっと過去で共に生きてきたからなのかもしれない、記憶がなくても魂が、心が覚えていたのだろう。


 話してくれたリアナに感謝だ、この事を素直に受け止める。


 ただそれと同時に俺もリアナに言わなければならないことがある、神界での事だ、アトレイアとリアナが同一人物であるとは言えやはり後ろめたいと思うことをそのままにしておくのは気が引ける。


「俺も一つリアナに言わなくてはならないことがあるんだ」

「な、何でしょうか?」


 俺の真剣な顔にリアナは不安そうなの顔をする。


「その、神界での事なんだけど、アトレイアと、その」


 ここにきて言葉に詰まる、自分の不甲斐なさが嫌になる。 


「キスを、ですね」

「え、あ、は、はい、その、とても、良かった、です、ごちそうさまでした」


 リアナは顔を赤くしてもじもじし始めた。


「え?」


 俺は理由がわからず首を傾げる。


「強引でしたよね、その、ごめんなさい!」


 急に謝りだしたリアナに俺は慌てる。


「え!なんでリアナが謝るの?」


 リアナの顔が真っ赤だ。


「えっと、私とアトレイア様は同一人物でもありますので、その、あの時はリンクが繋がっている状態でしたし」

「リンクが繋がる?」


 そういえばリアナのステータスの技能にリンクって書いてあった気がする。


「はい、こちらからリンクを繋ぐのはアトレイア様の許可がいりますがアトレイア様からは一方的にリンクを繋ぐことができます、あの時はアトレイア様がリンクを繋いだので、リンクが繋がっているときは思考や感覚が全部繋がっているので、私のしたこととアトレイア様のしたことは全て共有されます」

「じゃあ神界であった出来事は全部知ってる?」

「はい、神界とこちらの時間は違うのでこちらの時間にすれば一瞬の出来事ではありましたが、全てしっかりと、その、ごちそうさまでした」


 俺は顔が熱くなる、今自分の顔は真っ赤なのだろう、そういえば祝福の義が終わった直後リアナの様子が変だったが成る程こういうことか。


 リンクが繋がっている状態ならリアナにする事はアトレイアに筒抜けでアトレイアにする事もまたリアナに筒抜けな訳か。


 自分の顔を両手で塞ぐ。


「あー!恥ずかしい!」

「あの、私の事が嫌になりましたか?」

「それはないから大丈夫」


 ただアトレイアには負けた気分だ。


 アトレイアは自分の分身であるリアナを盾にして俺を思い通りに行動させた、俺はまんまとしてやられた訳だ、とは言えリアナを嫌いなることもアトレイアを嫌いになることもない、可愛いものだと笑って許せる。


 これで神界での事は解決だ、リアナに嫌われなくて良かった。


 後残るは大人達にリアナと婚約したいと話し了承して貰うことだな、スムーズに事が進めば良いけどリアナは王族で種族も違う、とても難しいだろうな、でも後ろ楯としてアトレイアの神託がある、無下には出来ないはずだ、仮に断られても諦めるつもりはないけどね。


 俺はリアナが知る範囲で過去にどのように過ごしていたかの話を聞きいた。


 どれだけの時間がたったのだろうか気付けば外が薄暗くなっていた、部屋に明かりをつけようとしたときコンコンとドアをノックする音がする。


「はい」


 返事をしてドアを開けるとセバスが立っていた。


「テンリ様、リアナ様、夕食の準備が出来ましたので呼びに参りました」

「ありがとうございます、すぐにいきます」


 俺とリアナは話しを切り上げ部屋を出てセバスについて食堂に向かった。


 食堂にはカロン、カレン、タリア、アガレス、エリンに加え当然の様にロレンスとミルもいる、そして教皇であるステーラと聖女であるアルナもその場にいた。


「では皆が揃ったので食事を始めようか」


 ロレンスの言葉で料理が運ばれてくる。立食形式で俺の両隣にはリアナとそしてアルナが立っている。


 軽く挨拶を済ませた後俺は料理を食べながらリアナとの婚約をどう切り出そうか悩んでいた。


「カロンそろそろ例の話を」

「そうですね、テンリ、リアナ、それにアルナ、我々から3人に大事な話がある」


 ロレンスの言葉に頷きカロンは真剣な顔をしながら話を切り出した。そう言えばホテルに戻る前に話があるって言ってたな。


「これはまだ話し合いの段階でありお前達の意見も聞いて進めようと思っていることなんだが、ロレンス兄さんとアガレス兄さんがお前達3人を婚約させてはどうかと」

「「はい、よろしくお願いします!」」


 リアナとアルナはカロンが話し終わる前に即答した。


「話しがあったのだが、即答だったな、だが2人共よく考えてから決断を」

「私は初めてテンリ様と出会ってからずっとこの方と一緒になれたらと思っていました!」

「私は今日初めてお会いしましたがこの方が生涯を共にする方だと確信しております」

「そ、そうか」


 リアナとアルナの勢いに圧倒されカロンは頷く。


 俺やアトレイアが何かをするまでもなく婚約の話しが既に出ていた、しかもリアナだけでなくアルナも関わっていることに驚きだ、まだ話し合いの段階ではあるらしいけど。ただリアナはジュマ獣王国の王女だ、そう易々と周りが納得はしてくれないだろう、それにアルナはデイステン王国の王家の出とはいえ今はアトレイア教団に聖女として所属している、俺との婚約は他の国が良しとはしないだろう、なにせ国としての力関係が大きく変わってきてしまうかもしれないのだ。


「そのお話しお待ちいただきたいのですが、婚約はすぐに公表するおつもりですか?」


 やはりというべきか教皇であるステーラが口を挟む、他国との衝突を避けるため許可ができないのだろう。


「先程も言いましたがまだ話し合いの段階ですので」

「そうですか」


 ステーラが考える素振りを見せどのような答えを出すのかカロン、ロレンス、アガレスは緊張しながら待っている。


「ではこの場で私アトレイア教団教皇の名においてテンリ=エレノール、リアナ=ジュマ、アルナ=デイステンの3人の婚約を宣言します、これはどんな理由があろうと破棄することは許しません、否定する者や邪魔する者、それが例え親族であれ当人であれ我等が女神アトレイア様の敵とみなしアトレイア教団の全勢力を持って排除もしくは罰をくだします、婚約の公表は時期を見て私からしますのでそれまでは信頼できる一部の者だけに伝えてください」


 ステーラの言葉に驚く。


「ステーラ、お姉ちゃん、テンリ達の婚約をアトレイア教団のトップが認めて良かったの?」


 カレンの言葉にステーラは笑顔をで頷く。


「その説明については、アルナ」

「はい、それでは私が説明をさせていただきます」


 一歩前に出たアルナに注目が集まる。


「本日私が神託の義を受ける為祈りを捧げようとしたときアトレイア様ご本人が現れ私とリアナ様をテンリ様の妻として嫁ぐようにと直接言葉を授かりました」


 アルナの説明で皆が驚く。それもそのはず、なぜなら神託の義はアトレイアの言葉を天使が代弁して伝えている、これはこの世界を維持するために忙しいアトレイアの代わりに天使が神託を代弁しているとされている、しかし今回アトレイアが自ら現れ直接言葉を授けた、記録されている中には過去に一度もない出来事だ。


「ちなみにですがもし認められなければこの世界が消滅するとのことです」


 アルナの言葉を聞き全員が俺に視線を向ける、その中でカロン、ロレンス、アガレスが声を揃える。


「「「テンリ!」」」

「は、はい!」

「「「わかっているな!」」」


 わかっているなとは婚約を了承しろとの事だ、俺の返事次第で世界が消滅するかもしれない、正直3人の鬼気迫る勢いにこの場から逃げ出したい気分である、ここまで威圧的にならないでほしい。


 当然断るつもりはない、俺としてはもともとリアナとの婚約をお願いしようと思っていたのでとてもありがたい事である、そこにアルナも加わるとは思わなかったけど。


 俺は2人の手を握る。


「先程リアナとアルナ様の気持ちを聞けましたので、その、これからよろしくお願いします」

「「テンリ様、こちらこそよろしくお願いします」」


 こうして俺はリアナとアルナの2人と婚約が決まったのだった。

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