第10話 似たような名前でした。
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婚約が決まった翌日、俺はリアナと共に大聖堂の一室に来ていた、そして目の前には慣れた手つきで優雅にお茶を淹れている少女がいる。
「どうぞ」
少女は俺とリアナの前に笑顔でお茶を出す。
「ありがとう」
「ありがとうございます」
俺達はその少女、聖女であるアルナに御礼を言い一口お茶を飲む。
「どうですか?」
「美味しいです」
「とても香りが良くて凄く美味しいです」
俺とリアナの感想に笑顔で頷く。
「では改めて自己紹介をさせて頂きます、私の名はアルナ=デイステン、デイステン王国第二王女であり今はアトレイア教団に所属し聖女をさせて頂いております」
アルナはスカートを軽くつまみ上げ軽く頭を下げる。
さて、なぜ俺とリアナが大聖堂に来ているかと言えば俺達の仲を深める為だ。婚約したは良いもののお互い知らない事が多いだろうとこの席を設ける運びとなり今に至る。
ちなみに親達は俺達の婚約で今後起こる問題や対策その他諸々をするために大聖堂の別の部屋で話し合いをしている最中だ。
「では俺も改めて自己紹介を」
「その必要はないわよ」
そう言いながらドカッとソファーに座り脚を組み気だるそうな顔を向けるアルナ、急に話し方や態度が変わった事に俺は困惑しどうしようかとリアナを見る。
「このお菓子も美味しいです」
リアナは何事もないかのように美味しそうにお茶とお菓子を堪能していた。
「ふふっ、困惑してる?」
「えっと、はい」
「素直でよろしい、本来こっちが素なのよ、普段は聖女として周りが求める振る舞いをしてるの、正直疲れるから聖女なんてさっさと辞めたいんだけどね」
「そ、そうなんですか」
なんだか凄い娘だな。
「もし今の態度が嫌なら聖女用にするけどどうする?」
どうするって言われても。
「そのままでいいですよ、無理するとストレス溜まりますし」
「そ、じゃあこのままで。貴方の事テンリって呼ぶから、貴方も私の事はアルナでいいからね」
「わかりました、えっと、それではアルナ、改めて聞きますが俺との婚約の話し良かったのですか?」
「私じゃ嫌?」
「いえ、そう言う訳じゃないです、ただもしアルナが無理してるなら」
「無理なんかしてないわよ、私はテンリの事が好きよ、テンリとの婚約は私が望んでいる事だし、今のこの話し方や態度が気に入らないなら直ぐに変えるわ、嫌われたくないからね」
ここまで言われれば俺からなにも言うことはない、ただなぜここまで好かれているのか不思議だ、なにせ会ってまだ2日目である。
「私の事気になる?」
アルナの言葉に俺は頷く。
「テンリ様、アルナ様のステータスを見ればわかりますよ」
「それもそうね、ステータスオープン、これが私のステータスよ」
リアナの言葉にアルナは頷きステータスをオープンにして俺に見せる。
名前:アルナ=デイステン〈アトレイア〉
年齢:10歳
性別:女
種族:人族 神族
称号:第二王女 聖女 神の一欠片
HP:9900/9900
MP:14000/14000
攻撃:550
防御:690
魔力:1050
敏捷:980
幸運:9999
技能:言語理解 アイテムボックス 神眼 魔道の叡智 武の境地 状態異常無効 リンク
俺はアルナのステータスを見て固まる。
「ステータスを見て解ると思うけど私もまたアトレイア様の魂と記憶を持って生まれた存在なの、リアナからいろいろ話を聞いてると思うけど、私のこの姿はテンリが転生して3番目に会った時の姿になるわ、とは言え私は私だからアトレイア様とは別と考えてもらって大丈夫よ」
どうやらアルナもリアナと同じくアトレイアと同一の存在だったようだ、そしてリアナが自分の意志があるようにアルナも個人としての意志がちゃんとある、それにしても立て続けにいろいろ情報が入って来るな、昨日の時点で既にキャパオーバーなのに。
ただアルナに初めて会った時懐かしさがあったのもアルナに好かれている理由も納得が出来た。
この流れで行くとリアナやアルナのような存在が他にもいそうだ。
「リアナとアルナのような人達って他にもいたりするんですか?」
「ふふっ、それは今後のお楽しみ」
アルナはとても良い笑顔でそう答えた。
これは確実にいるな、一体あと何人いるのだろうか?
「あ、そうそうテンリにしてもらいたい事があるんだけど」
「なんでしょうか?」
俺は返事をしお菓子を口に入れる。
「アトレイア様としていたあつーいキスを直接私にもして欲しいなって」
「ングッ!ゴホッゴホッ!」
アルナの言葉にお菓子を喉に詰まらせる。
「テンリ様お茶を!」
驚いたリアナは素早く俺にお茶差し出し俺はそれを飲み干す。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうリアナ、もう大丈夫」
アルナを見るとそれはもう良い笑顔である。
「それで、私にもしてくれるんでしょ?」
「あの、それは」
「いいじゃない減るものでもないし、それに昨日リアナともしたんでしょ?」
アルナはニヤニヤしながらリアナを見る。
「し、していません!」
「え!そうなの?テンリが躊躇してもリアナならアトレイア様みたいに無理矢理押し倒しているものとばかり」
「そんなことしませーん!」
楽しそうにからかうアルナとそれに必死で抵抗するリアナ、この2人がアトレイアの魂の一部を切り離して生まれた存在であると誰も思わないだろうな。
「あははッ、ふぅ、久しぶりに楽しかったわ」
さんざんからかってアルナはとても楽しそうだ、やりきったと言わんばかりの素敵な笑顔を見せている、それに引き換えからかわれたリアナはとても疲れた顔をしていた。
アルナがとても満足そうにしているとコンコンとノックする音がし扉越しに声が聞こえる。
「アルナ様そろそろお時間になります」
「わかりました、直ぐに参ります」
言葉使いと姿勢をただしアルナは席を立つ、一瞬にして雰囲気が変わり少驚いた。
「今日はここまでかな」
「大変そうだね」
「これでも聖女だからね、やらないといけない仕事が多いんだよ。それじゃまた明日にでも会いに来て、それとリアナはちゃんとテンリを見張っといてね」
「はい」
アルナが立ち上がりそれと同時に俺とリアナも立ち上がる。
アルナは俺に近付き唇に軽くキスをする。
「今日はこれで我慢してあげる、あつーいキスは次の機会だね、それじゃまたねテンリ」
笑顔でアルナは扉を開け部屋を出ていく。
「ず、ずるいです、アトレイア様ならまだしもアルナ様まで唇にキスだなんて、私なんてまだおでこにキスされただけなのに」
リアナは俺の両肩を掴み思い切り揺らす。
「ちょっリアナ!」
「テンリ様!」
「は、はい!」
「私もキスしたいです!いえしましょう!」
勢いよくソファーに押し倒される。
「リ、リアナ!?」
「私とじゃ、嫌ですか?」
「嫌じゃないです」
潤んだ瞳で見詰められたら拒否なんてできるはずもなく俺はリアナの頬に手を伸ばしそのまま唇を重ねた。
ゆっくりと唇が離れ数秒後冷静になったリアナは顔を真っ赤にさせ素早くソファーから立ち上がった。
「わ、私はなんて事を、は、恥ずかしぃー」
我に返ったリアナは自分の暴走を思いだし恥ずかしさのあまりそのまましゃがみこみ両手で顔を抑える。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫じゃないです、私はなんてはしたない事を、テンリ様、ごめんなさい」
「リアナが謝ることじゃないよ、それに、俺はリアナが好きだから」
俺は話しながら自分の顔が赤くなるのがわかった、それと同時にリアナの顔も真っ赤だ。
「そ、そろそろ部屋を出ようか」
「そ、そうですね」
部屋を出たのはいいが今からどうしようか、まだ昼間だしせっかくだからもっと街を見て回ろうかな、大人達から護衛を連れて街に行く許可はもらっているし、それに大人達の話し合いはいつ終わるかわからない。
「今から街を見て回りませんか、許可も出ていることですし」
「はい、今日はどこに行きますか?」
「うーん、適当に見て回ろうかなって思ってるけど、リアナはそれで良い?」
「はい」
俺達は護衛の人に街に行くと伝え外に出た。
「相変わらず人が多いです」
「そうですね、あの、はぐれないように手を繋いで良いでしょうか?」
「もちろん」
俺は手を差し出しリアナは嬉しそうにその手を握る。
いろいろな店を見て回りいつの間にか蚤の市がやっている辺りまで来ていた。
「そう言えば何か忘れている気がする」
「蚤の市でローブを深く被っている方と祝福の義を受けたらもう一度会う約束をされていましたからその事でわ」
「あぁ、そう言えば、ちょっと行ってみていい?」
「はい」
聖都でいろいろ衝撃的な事がありすぎてすっかり忘れてた。
以前もう一度会う約束をしたローブの人物がいた場所に向かう。
「やっぱりあそこだけ違和感があるな」
少し離れた位置からその場所を見ると前回同様そこは人の流れが不自然だった、そして黒く禍々しいローブを着てフードを深く被り座っている人物、その前には剣が一本だけ置いてある、あの時とまったく同じだ。
俺とリアナはローブの人物に近づく。
「ちゃんと祝福の義を受けてきたようだな」
ローブの人物は剣を手に取り俺にその剣をつき出す。
「もう一度抜いてみろ」
俺は剣を受け取りゆっくりと剣を鞘から抜き出す、それと同時に体から何か抜けていく感覚に陥る。
「これは!?」
「気にするな、今は剣を鞘から抜く事に集中しろ」
「は、はい」
俺はその言葉に従い剣を鞘から抜ききる。
「凄い」
それは強い力を感じさせる真っ黒で綺麗な刀身の剣だった。
「よし、ちゃんと抜けたな、ただまだこの子を目覚めさせるほどではないか」
「この子?目覚めさせる?」
「こちらの話だ、気にするな」
「あ、うん」
とても気になるんだが、俺は疑問を覚えながらも少し剣を眺めてから軽く振る、するとまるで長年使っていたかのような感覚でとても手に馴染んだ。きっとかなりの業物だろう、本来ならこんな所で売りに出されるような代物ではないないはずだ。
名残惜しいが剣を鞘に戻しローブの人物に渡す。
「返す必要はない」
「え!?」
「もちろん金はいらんぞ」
ローブの人物からの申し出にテンションが上がる。
「で、ですがただなのは」
「そもそも金で買えるような代物ではない」
お金で買えるような代物じゃないのにこのままもらってしまって本当にいいのだろうか?
「せっかくやるといってるのに納得いかん顔だな」
「やはりいくらかお支払いを」
「なら一つ頼みを聞いてもらおうか」
「頼みですか?」
「なに、たいしたことではない、次に我と会った時に我の願いを聞き入れてくれればいい」
つまりまたどこかで会う予定があるということか。
「お願いですか?」
「うむ、無理なことではないから安心しろ」
「どんなお願いか聞いても?」
「まだナイショだ、ただ不利益になるような事ではないから安心しろ」
「それなら、わかりました」
「言質は取ったぞ」
ローブの人物は立ち上がり深く被っていたフードを脱ぐ、そこには銀色の髪に赤い瞳を持つ小麦色の肌をした可愛らしい少女の姿があった。
その姿を見ているととても懐かしい感覚に襲われる、アトレイアやリアナ、アルナと出会った時と同じだ。
「それではまたな」
「あ、待って、名前」
「ん?あぁ、その子の名か、クロと覚えておけ」
少女は剣を指差しながらそう答える。
「クロ」
「そうだ」
この剣の名はクロと言うのか、確かに刀身は黒いが安直すぎる気が。
「ってそうじゃなくて、君の名前を教えて欲しいんだけど」
「ん?我か?」
「そう君の名前」
「我の名、か、うーん・・・今名乗って良いものか?まぁいいか、我が名はクロナだ」
「クロナ」
クロにクロナか、なんとも似たような名前だ。
クロナと名乗った人物は背を向ける。
「それではまたな」
「うん、また」
クロナは手を軽く振り去っていった。
「ねぇリアナ、今の娘って」
リアナに話しかけるが難しい顔をしながら考え込んでいて俺の声に気づいていない。
何かあればあの娘、クロナの方から接触してくるだろう。
「リアナ」
「あ!はい、なんでしょう?」
「そろそろ移動しませんか?」
「そうですね」
俺とリアナが移動しようとした時慌てた顔をした護衛達が近付いてきた、どうやら俺とリアナの姿がいきなり消えた為急いでこの周辺を探していたそうだ、護衛達と離れたことに全く気づかなかったな、多分クロナがこの場を去った為護衛達が俺達を認識出来るようになったのだろう。
「さて、もうちょっと見てからホテルに帰ろうか」
「はい」
こうして俺達もこの場を離れた、その様子をクロナは離れた位置から眺めている。
「名前、言ってもよかったの?」
いつの間にかクロナの後ろにローブを身に纏いフードで顔を隠した二人の人物が立っていた。
「構わんさ、また会うのだし」
「ふーん、そう、それにしても嬉しそうだね」
「顔がにやけてます」
「う、うるさい」
クロナは二人から顔を背ける。
「それにしてもリアナさんあんなにテンリさんの近くにいて、羨ましい、いっそ今から私も」
「まて、後もう数年の辛抱だろ」
「わたくしはもう充分我慢しました!」
「今までの年月に比べれば数年なんてすぐだろう」
「だって、うぅ~、リアナさんが羨ましぃ」
「「はぁ」」
「二人して何でため息を吐くのですか?」
「いや、気にするな」
「気になります、クロナさんはテンリさんとお話しできて羨ましい限りです、まったく良いご身分ですね」
「我にあたるな、それに我よりも身近になった者がおるだろうに、なぁアルナ」
名前を呼ばれローブの人物の一人がフードを外す。
「順番だから仕方がないことでしょ」
アルナはそう言いながら呆れた顔をする。
「アルナさんもクロナさんも言葉を交わせているのになぜわたくしは後回しなんですか、わたくしがどれ程首を長くして待っているか」
「わかったわかった、もう数年の辛抱だ」
「そんなことより私は戻るよ、聖女って凄く忙しいし」
「我もやる事が多いから帰る、お前も立場があるんだ、早く帰れよ」
「もう!ちゃんと帰ります!ただわたくし納得いきません!」
アルナとクロナは顔を見合せやれやれと首を振り最後のローブの人物を宥めて落ち着かせたあとその場から三人は姿を消した。
読んでくださりありがとうございます。
更新はゆっくりですが頑張って書いて行くのでよろしくお願いします。




