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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
52/156

no.52

 ブラのホックを外してタオルを外された。

「う~~~~~~っ」

「大丈夫だ。深く切れてるわけじゃないよ。かすった感じで」


 わかってる。

 本当にぐっさり切れてたらこんなもんじゃないって。


 痛みだって包丁で指を切ったときよりはマシ。

 でも痛みを我慢する方法がわからない。

 腕も回せないんだもん。


「薬つけるけど、じっとしていられるか?」

「痛いよ。わかんない……」


 力が入らないから暴れたりしないかな。

 でもわからなかった。


「ごめん、じゃ、乗るぞ」

 えっ?

 左腕をぴったり体につけるとその横に宮川が左膝を立てて、私の体をまたいだ。


 うっうっそー。

 腰のあたりに座られて、でも重くない。


「これ、握ってろ」

 そう言って右手にタオルを持たせてくれた。


「うっ、うっ、……」

「さっさとすませてやる。すぐ痛くなくなるから、な」


 先輩がやってくれるんだから大丈夫。

 指を切った時だって先輩がやってくれたんだから。


 ぴたっとなにかひんやりしたものが背中に落ちた。

 その一瞬で我慢していたものが歯止めも効かないほど押し寄せた。


「痛い、痛い、いた~い、いたいよ~~~~! いや~~~っ!! うわぁ~~~~~!!!」

「もう、終わるから、終わるから!」

「や~~~~~っ、いちゃ、いちゃ……いちゃ~~~~!!」


 ハァハァ……。

 うっ……うぐっ……。


 テープを切る音がした。

 うっ、うっ……。


「ほら、終わったよ。もう大丈夫だ。アリス?」

 ふぇ、ふぇ……。


「大丈夫か、おい、アリス!!」

「……叫んでもう力出ない……」


「おいおい……ったく、おまえって奴は」

 そう言いながら救急箱を片付けて、なにか探してる。


「タオル、もう1本ないか?」

「うん、底のほうに入ってると思うよ」


「あっ、これか、これでいいな」

 そう言ってバスタオルを背中に掛けてくれた。

「ねっ、先輩。ホントに傷たいしたことない?」


「うん。血がひどく出るほどじゃない。嘘はつかないよ。安心しろ。ただ痛みに弱いおまえにとっては大怪我なんだろうけどな」


 そう言って自分のリュックをガサガサやって、何かを出した。

 シュ、シュボッ。

 フーッ。


「あっ、そんなの持ってきたの」

 タバコを吸っていた。


「1本だけ……ダメか?」

「ううん、いいよ。ごめんなさい。また大騒ぎしちゃった」


「いいよ、いつものことだ。それに俺も悪い。あんなとこで……悪かったな」

 ボッ。


「ううん……」

 涙が出てきた。

 もう顔の下にあるタオルびしょびしょなのに。


 タバコを吸い終わって、宮川が顔を覗きこんできた。

「疲れたろ。寝ろ」

「うん」


「あっ、ちょっと待て」

 またガサガサやってる。


「ほら、俺のタオル。こっち濡れちまったもんな。頭上げるぞ」

 私の顔の下にあったタオルを替えてくれた。


「髪もまだ濡れてるな。これ取るぞ」

「うん」

 アップにしていた髪を解いて優しく拭いてくれた。


 すーっと体が深いところに落ちていく感じになった。

 いつのまにか眠っていたみたいで、気付くと目の前に宮川の寝顔があった。


 私をそっと抱きしめるようにして眠っている宮川。

 すうすうと静かな吐息も聞こえて心地いい。

 もう少し寝よう。



 ******



「大丈夫なの、アリス」

「ああ、ちょっと目が覚めたかどうか見てみるよ」

 山内と宮川の声が聞こえた。


「いきなり無理しすぎなんじゃないの。昨夜、絶叫してたもんね。こっちはお陰でしらけちゃったわよ」

「わりぃわりぃ、ははははっ」


「じゃ、目が覚めてて食事できそうだったら言ってね。アリスの分、とってあるんだから」

「ああ」

 そう返事をしながら宮川がテントに入ってきた。


「おっ、起きてたのか。大丈夫か?」

「うん。あんまり痛くない。でも体だるい……」


「疲れたんだろ。今日は休んでたほうがいいな。なにか食べるか?」

「ううん、いらない。お水、欲しい」


「わかった」

 そう言ってリュックの横にあったペットボトルをとってくれた。

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